元アイドルが弁護士に 平松まゆきさん故郷大分で 苦学結実「子供、女性応援」
1990年代にアイドル歌手として活躍した平松まゆきさん(40)が司法試験に合格し、1月に故郷大分で弁護士事務所を開いた。法科大学院時代は何度も自主退学が頭をよぎり、試験前は大声で泣いたという。自らを奮い立たせたのは、アイドル歌手に通じる「困っている人を勇気づけたい」という思いだった。
大分県別府市生まれ。アイドルを夢見ていた12歳の時、菓子メーカー「東ハト」のCMモデルコンテストでグランプリを受賞。憧れの芸能界に足を踏み入れた。15歳で単身上京。芸能事務所に入り、高校生で歌手活動も始めた。デビュー曲「たかが恋よされど恋ね」は人気テレビ番組「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に採用されたほか、ラジオ番組にレギュラー出演するなど活動の幅は広がっていった。
でも-。「これでいいのかな」。安定しているとはいえない芸能活動。勉強をおろそかにせず、立教大(東京)を卒業して会社勤めもしていたが、それでも「何か手に職を付けなきゃ」。30歳に手が届く頃、漠然と不安を抱いたという。
助言を求めて、資格試験の予備校に行った。ちょうど法曹人口の拡大を掲げた司法制度改革の時期で「今から資格を取るなら弁護士。法科大学院に行けば受かる可能性が高い」。職員の言葉を信じ、33歳で名古屋大法科大学院に入学。「名張毒ぶどう酒事件」のドキュメンタリー番組をテレビで見て、再審請求に取り組む弁護団への憧れもあった。
苦しみの日々が始まった。大学時代の専攻は日本文学。法律用語が分からず、授業に付いていけない。入学と同時にアイドル活動と勤務先も辞めた。「奨学金でたくさんの借金を抱えている。退路はない」。1日15時間、机に向かった。2015年9月。3度目の試験で合格を果たした。
司法修習を経て1月に弁護士登録。友人やつては関東に多かったが、古里に恩返しをしたいと大分市に事務所を構えた。歌手も弁護士も「人を勇気づけ、助ける」という点は同じ。「今度は弁護士として、より具体的に人助けをしたい」
取り組みたいのは女性、子ども、外国人、性的少数者、労働者などの権利保護。「できることは何でもするし、どこでも駆け付けたい」。スポットライトのまばゆい光に負けぬよう、弁護士バッジを輝かせる。
=2017/03/05付 西日本新聞朝刊=