■「大いなる、鉄のような、絶対的な…」力説
【北京=矢板明夫】5日に開幕する中国の全国人民代表大会(全人代=国会)を控え、共産党の主要幹部が相次いで習近平総書記(国家主席)に対し忠誠を誓う発言をしていることが注目を集めている。最近、習氏と距離を置くとされる政治家が相次いで失脚。党内で“粛清される恐怖”が蔓延(まんえん)していることが背景にあるようだ。「忠誠を誓うことは一種の“踏み絵”」と指摘する声もある。
最も注目されたのは、天津市の李鴻忠・党委書記の発言である。李氏は2月19日に開かれた市幹部会議で約2時間にわたり、習氏の政治理念と実績をたたえる演説を行った。習氏に対し「大いなる忠誠」「鉄のような忠誠」「絶対的な忠誠」が必要だと力説した。この演説で毛沢東への個人崇拝全盛期だった文化大革命(1966~76年)当時の表現を習氏に対し使っており、インターネット上などでも話題となった。
その後、新疆ウイグル自治区や海南省のトップをはじめ、ポスト習近平に最も近いといわれる胡春華・広東省党委書記も同じように会議を開き、習氏に対する忠誠を誓った。
こうした“忠誠発言”をしたのは習氏の側近といわれる人々ではなく、江沢民元主席や胡錦濤前主席に近いとされる政治家がほとんどだ。党関係者によれば、今回の全人代は、秋の党大会の前哨戦と位置づけられている。権力集中を狙う習近平派にとって、全国の党幹部が北京に一堂に会する、この機に思想統一を図りたい思惑がある。一連の発言は習氏側に要求された可能性もある。
全人代開幕約2週間前の2月20日、「習氏への執政方針に不満を漏らした」として、「妄議中央」(党中央に異議を唱える)や汚職などを理由に2015年に失脚した北京市の女性元副書記、呂錫文氏が吉林省の裁判所で懲役13年の判決を受けた。この判決は党幹部への“見せしめ効果”を狙ったものという見方も出ている。
党幹部が相次いで忠誠を誓うことについて、北京の改革派知識人は「恐怖政治を実施して忠誠を誓わせても、自らの支持基盤強化にならない。むしろ逆効果だ」と批判した。
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