日本の宗教が消滅の危機か「マイルドヤンキー現象」と「スマホ」が原因と指摘も
2017年03月02日 12時15分 NEWSポストセブン
2017年03月02日 12時15分 NEWSポストセブン
2017年03月01日 16時00分 NEWSポストセブン
宗教学者の島田裕巳氏
宗教界にかつてない異変が起きている。宗教に救いを求める人々が激減しているのだ。人々はなぜ、「神」と距離を置くようになったのか。宗教学者の島田裕巳氏が解説する。
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日本の宗教が消滅の危機を迎えている。文化庁の『宗教年鑑』によれば、新宗教の信者数は軒並み激減しているのだ。
その象徴が、大阪に本部を置くパーフェクト リバティー(PL)教団だ。平成2年版の『宗教年鑑』で約181万人だった信者数は平成27年版で約90万人に半減。毎年8月に大阪で開催される「教祖祭PL花火芸術」では、目玉の花火イベントが規模を縮小し、かつて甲子園の強豪校として名を馳せたPL学園の野球部は休部となった。
天理教、立正佼成会などの信者数も大幅に減った。最も信者の多い創価学会が公表する会員数は827万世帯で近年は変化がなく、実態はよくわからないが、20年前に300万人ほどだった実際の信者数は現在250万人ほどと推測される。
既成宗教も例外ではなく、仏教にしろ神道にしろ、檀家や参拝者数は確実に減っている。なぜ、日本の宗教は力を失ったのだろうか。
そもそも新宗教は、高度成長時代に地方から都市に出てきた労働者をターゲットに急成長した。都会に身寄りのない人たちに人間関係のネットワークを与えることで、信者を大幅に増やしたのだ。
だが現在、高度成長期に入会した信者の高齢化が進み、宗教的な活動を行うことが難しくなった。
その一方で、新たな信者は増えていない。昔は「病気のなおし」を求めて入信する人も多くいたが、現在は医療や社会保障制度が進歩し、宗教に入信する前に病院に行く時代となった。
昔ほど人間が移動しなくなり、地域に定着した影響も大きい。若者が地元愛でつながる「マイルドヤンキー現象」など、今は各地でゆるい地域共同体が形成され、宗教に人間関係を求める必要がなくなった。
現在、何か悩みを抱える若者が真っ先に頼るのは神ではなくスマホだ。米国の研究では、無宗教者とネット利用者の増加に相関関係があるとし、「グーグルは神の最大の敵」「神殺しの犯人」と言われる。
総じて、これまで宗教が果たしてきた役割が別の手段で代替される時代となり、“宗教でないとできない”ものが消滅しつつある。
これは世界的な潮流だ。経済が発展途上の国では格差などの歪みが広がり、救いを求める人が増加するが、いったん経済成長が止まると信者の増加もストップする。実際、ヨーロッパを中心とした先進国が低成長となる中、キリスト教は衰退の一途をたどり、「最後の牙城」とされる米国でも無宗教者が増えている。
世界の宗教は歴史上最大の危機に直面しているのだ。
宗教消滅の時代においては、日本の社会から「神聖な存在」が失われていく。その最たるものが天皇だ。近代における天皇は、大日本帝国憲法を通してキリスト教の神に匹敵する存在となった。戦後も巡幸などで国民の崇敬の念が高まり、より聖なる存在になった。
その天皇が譲位の意向を示し、平成が終わろうとしているが、次の天皇を含め、皇位継承者はわずか4人しかいない。何らかのアクシデントがあれば、皇室が存続できなくなる。日本人は天皇制の極めて脆弱な基盤を直視して、「ポスト天皇制」を真剣に考えるべきだろう。
●しまだ・ひろみ/1953年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術センター特任研究員、同客員研究員を歴任。著書多数。近著に『スマホが神になる』(角川新書)、『天皇と憲法』(朝日新書)、『人は死んだらどこに行くのか』(青春新書インテリジェンス)などがある。
※SAPIO2017年3月号