嫁と数年ぶりに再会した日、その日の夜にはレロレロしていた。
嫁が自らパンツを脱いでいた時点でオカシイことに気付くべきだったが、ひざの上に娘を乗せてメロメロになりながら、この駄文を綴る今となっては、昔のことである。
大学の同級生だった嫁とは、たまにしか行かないゼミで顔を合わせる程度の間だった。ワタクシはノロノロして就活に出遅れ海外に逃亡し、嫁は普通に大学を卒業して大阪で就職した。以来、お互いに連絡を取ることもなかった。
ワタクシは二年ほど留学して帰国し、東京の一流企業に滑り込んだ。が、仕事と人生の厳しさに悶えて、夜な夜な酒でベロベロになり、五年ほど踏ん張るもボロボロになって大阪の実家に戻ってきた。
そこから毎晩、ピロピロとゲームをする日々。一年ほど引きこもって、親に心配をかけるのも申し訳なくなり、部屋から出てアルバイトをするようになった。最初はオロオロしながらであったが、家族の助けも借りて徐々に社会復帰していった。
アルバイトは介護施設でヨロヨロのジイちゃんのオムツを交換する仕事や、戦場と化したトイレを掃除する仕事だった。キツイだけの仕事だったが、自分の心がキレイになっていく気がしていた。
人はボケていても感情だけはハッキリしている。棺桶に片足を突っ込みながらも、幸せそうにしているジイちゃんは、毎日、同じ話をしながら感謝を口にしていた。逆に、ボケてなくても不幸そうにしているババアは、何かにつけて文句を言っていた。
人は心の持ち方ひとつで、幸せにも不幸にもなれることを知った。
なんとか生活も体調も安定し出した頃、なぜか幹事をしていた嫁からゼミ同窓会のお知らせが届く。なるほど、名字が変わっていない。
同窓会はなんの迷いもなく欠席することにしたが、嫁に連絡した時に流れで久しぶりにゴハンでもどう?ということになってしまった。
この時の決断が、ワタクシに幸せをもたらしたのか、不幸をもたらしたのか。今でもたまに考えることがあるが、答えなどあるワケもない。
始まりはいつも雨と誰かは歌った。その日は朝から雨だった。シトシト降り注ぐ雨の中、ミナミで嫁と十年ぶりくらいの再会を果たした。
お酒を飲みながら花咲く昔話。学生の頃、想像もしなかった現実が襲ったのはどうでもいいが、とにかく嫁はワタクシの脳ミソをトロトロにする香りを発する大人の女になっていた。
嫁の方はというと、お手軽な次男坊を探していたら三十過ぎていたらしい。ワタクシは次男坊だが知ったこっちゃない。夜も更けてそろそろ撤収しようと思っていると、夜空には雷鳴がゴロゴロと轟き始めていた。
引きこもっていた頃、リハビリがてらに通った近所の神社の神サマは、毎日のようにやって来るワタクシの前に降臨することはなかった。が、ミナミの居酒屋には嫌がらせにやって来ていた。
ワタクシの傘を店の傘立てからどこかに持っていってしまったらしい。やむを得ず相合傘になる男と女。急に近づく二人の距離。コロコロと運命の歯車は回り始めていた。
その日から毎晩のようにレロレロした。 あっちでレロレロこっちでレロレロ。三十路女の本気は恐ろしい。ドロドロの底なし沼に引きずり込まれる気はしていたが、お互い大人なんだからいいじゃない。
レロレロレロレロレロレロレロレロ......。
あ゛ーう゛ー
レロレロレロレロレロレロレロレロ……。
ふと気づくと娘が産まれ、今度は娘にベロベロばぁーをしていた。
いつの間にかワタクシを苦しめていた心は、あの日、誰かが持って行った傘と一緒にどこかに消えていた。今は一人でチョロチョロとWEB屋をしながら、なんとか食っている。
嫁はまったく家事をしないが、つまらないことで怒ったりしない。そんなことよりレロレロする方が楽しいじゃない。
なぁ、今夜あたりレロレロさせてくれないか?いいじゃないか、減るもんじゃなし。ワタクシはレロレロしながら暮らしていれば、それで幸せなんだから。
※元ネタは、ニャートサマの「姪とレロレロ」です。お許しをいただいて、タイトルをパクらせていただきました。元の美文を貶める意図はございません。申し訳ありませんです。はい。