青野九段、中川八段、片上六段らの3人の理事が解任された2月27日の臨時総会
2月27日に午後1時から東西の将棋会館において、東西の会場を映像と音声でつないだ「テレビ電話」システムを使って将棋連盟の臨時総会が開かれました。三浦弘行九段の問題に基づいて、専務理事の青野照市九段、常務理事の東和男八段、中川大輔八段、佐藤秀司七段、片上大輔六段らの5人の理事解任を決議することが主要議案です。約90年の連盟の歴史で、前代未聞の事態となりました。
総会の冒頭で、2月6日の臨時総会で連盟会長に就任した佐藤康光九段が「どのような結果になっても、わだかまりが残らないようにしていただきたい」と挨拶した後、議長に佐藤義則九段、副議長に小林健二九段を指名しました。
まず最初に、5人の理事解任を請求した棋士の中で、発起人を務めた3人の1人である西尾明六段が趣旨説明しました。その要件は2月7日のこのブログで紹介したように、「常務会は、①連盟の正会員である棋士の立場を守らず、棋戦運営に支障をきたした②連盟の信用を大きく損ね、将棋ファンを失望させた③連盟に多大な金銭的損失を与えた④棋士に対して説明責任を果たさず、誤った説明をした」という内容です。そして「棋士は将棋の普及と発展に寄与する公益法人の会員で、公益の目的に著しく反した責任の所在を明らかにしたい」と結びました。じつに理路整然とした説明ぶりでした。
そして5人の理事解任の議案についての投票が行われました。234人の正会員(現役棋士・引退棋士・女流棋士)のうち、総会への出席者は216人(64人の委任状を含む)でした。過半数の109票によって決議されます。
開票は午後3時から東西で別々に始まりました。5人の理事の名札がかかったホワイトボードに、理事解任の賛成票が個別に読み上げられるごとに、1票ずつ「正」の字を一画ずつ書き足しました。やがて「正」の字が増えていくと、棋士たちは固唾をのんで見守っていました。
開票が終わって東西の賛成票を集計した結果、青野九段、中川八段、片上六段の解任、東八段、佐藤七段の留任が決定しました。過半数の109票との票差は、大半の理事が2票~8票と僅差でした。理事解任を巡って、棋士たちの見方はほぼ等しく分かれました。
5人の理事解任を請求した28人の棋士の1人である私は、数人の「同志」と情報を交換し合って投票分析をしてきました。当初は「4―6」の比率で賛成票を得れば、たとえ負けても常務会に対して影響力を及ぼせると、私たちは思っていました。やがて「5―5」でいい勝負になっていると変わり、総会の直前には「100票を超える」というある棋士の票読みに驚いたものです。そして、それが本当に実現したのです。
旧常務会が行ってきた三浦九段への一連の措置と行動について、私の想像以上に多くの棋士が批判的だったのです。5人の理事解任に賛同した若手棋士と引退棋士(多くは委任状)が多かったのも、賛成票を伸ばしました。
臨時総会が終了すると、佐藤会長、留任した東八段、佐藤七段らは「報告会」を開きました。その席上でA棋士は「虚偽の告発をした棋士に、ペナルティと損害金の補償を求める」と発言し、出席している渡辺明竜王を名指しで批判しました。それを受けて渡辺竜王は「常務会と話し合いを続けているところです。何らかの形で補償に協力したい」と語りました。「三浦九段は不正をしたと、今でも思っているのか」というB棋士の厳しい質問には、渡辺竜王は何も答えませんでした。
いずれにしても、三浦九段の問題はまだ何も解決されていません。今後も、真相究明と連盟運営の正常化が望まれます。
谷川浩司前会長を含めて5人の理事が辞めた非常事態において、理事の補充選挙は6月の任期満了まで行われないようです。そこで私は、常勤理事の人数が少なくなったこともあり、理事以外の棋士が何らかの形で連盟運営に協力できる体制を作ってほしいと、佐藤会長に要望しました。その一例が、タイトル経験者、理事経験者、有志棋士による「連盟再建委員会」の設立です。佐藤会長を中心にして、多くの棋士が一致団結して連盟を立て直すことが大事だと思っています。
| 固定リンク
「裏話」カテゴリの記事
- 青野九段、中川八段、片上六段らの3人の理事が解任された2月27日の臨時総会(2017.02.28)
- 5人の理事への解任動議が議決される2月27日の臨時総会(2017.02.21)
- 佐藤康光九段が将棋連盟の会長に就任した2月6日の臨時総会の模様(2017.02.07)
- 将棋をとても愛好したタレントの大橋巨泉さんが82歳で死去(2016.07.26)
- 荒川区・三ノ輪の将棋クラブ、稲葉聡アマが加古川青流戦で初優勝、『週刊将棋』が休刊(2015.11.18)
コメント
田丸先生、昨日はお疲れ様でした。
棋士の皆さんの良心が結果に表れ、救われた気持ちになりました。
佐藤会長を支えるための「連盟再建委員会」ぜひ進めていただきたいと思います。
あと、西尾六段、かっこいい!
投稿: itoito | 2017年2月28日 (火) 11時52分
おめでとうございます。また今回も報道にない部分の情報を提供していただき、ありがとう存じます。わたくしも昨日はひさびさに晴れやかな気持ちで、A級順位戦の解説会の配信を見ることができました。お礼申し上げます。
日曜に公開されていた三浦九段の名誉を毀損する虞のある文書と、その作成に渡辺明氏が関わっていることを本人も認めていることなど、病巣は依然深いと存じます。前向きにと佐藤会長はいっておられましたが、既往を咎めずということでは、かえって将来に禍根を残すようにも思います。前途多難とは存じますが、信頼回復のため先生方の一層の奮起を期待します。
投稿: Britty | 2017年2月28日 (火) 11時57分
「委任状は理事会への賛成票に投じられる」という噂を聞いていましたが、そうでもないんですね。
引退棋士にとっても、現状の将棋連盟に対して歯がゆい思いをしている人々も多いのでしょうね。
田丸先生の言われるように理事3人が欠員のままではかなり苦しいと思うので何らからの対策が必要だと思います。佐藤康光会長が疲れきっているように見えたので体調が心配です。
投稿: 憂う者 | 2017年2月28日 (火) 12時06分