柵の向こうで我が子に何が――?「軍国教育」塚本幼稚園の退園者たちが明かす衝撃の内部実態!「韓国人と中国人は嫌いです」副園長からの手紙に絶句 ~「極右学校法人の闇」第8弾! 2017.2.22
(取材・文:城石エマ)
特集 極右学校法人の闇
国有地の破格値での払い下げに焦点があたる「学校法人森友(もりとも)学園」(籠池泰典理事長)は、ただの「学校法人への利益供与疑惑」で終わらせてはいけない――。
2017年2月、IWJは「森友学園」が経営する大阪府大阪市の「塚本幼稚園」に子どもを通わせ、自主退園に追い込まれたという保護者の方々に取材を行った。その一人ひとりの口から出てくる「証言」の数々に、思わず言葉を失わずにはいられなかった。
すでに、複数のメディアでこの幼稚園が「ヘイト文書」を配布していた事実を報じている。しかし、それはこの幼稚園が行っている「常軌を逸した教育」のほんの一例にすぎないのではないか――? 保護者たちの口から語られる事実の数々は、そう疑わせるに充分な説得力を持っていた。
この保護者たちにヒアリングを行ったある国会議員は、「人権問題が含まれるのではないか」と口にした。
いったい、園の中で何が行われているのか。さまざまな角度から見えてきた、この幼稚園の「実態」に迫る。
IWJはこれまでに、「森友学園」の問題を、「極右学校法人の闇」シリーズとして、連続報道している。ぜひ、これまでの記事もお読みいただきたい。
記事目次
- 「臭いからバッグは捨ててやった」――副園長・籠池諄子氏の異常な行動に限界を覚え自主退園を迫られる母親たち
- 「『トイレ』って言ったら怒られんねん」――トイレも水を飲むのも決まった時間だけ!? 園の「軍隊的」教育で園児が萎縮
- 「幼稚園の頃の話は絶対にしたくない」――4年間通い卒園した子どもの心に残された傷
- 「心中、韓国人と中国人は嫌いです」――副園長から直筆で渡された手紙に在日韓国人のお母さんが絶句…
- あまりにひどい差別実態を訴えるものの、行政はほとんど積極的な対応をせず
- 幼稚園を直撃訪問するも取材拒否! 保護者でさえなかなか中に入れてもらえない!? 園内で何を隠す必要があるのか…!?
- 「お母さんの手作りご飯で、子どもは元気に、ご主人もお仕事がんばれます」――性別役割分担を強調する園の教えは「親学」に学んでいる!?
- 「この問題を園の『校風にあわなかった』などという話で終わらせるわけにはいかない」――退園者のお母さんの決意
「臭いからバッグは捨ててやった」――副園長・籠池諄子氏の異常な行動に限界を覚え自主退園を迫られる母親たち
「行かせたことを後悔している」――。
自主退園に追い込まれたというAさんは、はっきりと断言した。集まったのは、ここ数年で塚本幼稚園を退園した子どものお母さんたちだ。一番下の2才児コースから年長まで、通わせていた学年はバラバラである。
「うちの息子のことを、『臭い、臭い』って。『あんまり臭いから、バッグ捨てたった』って、本当に捨てられたんですよ」
2歳の息子を園の最年少コースに入園させたAさんは、在園中、副園長の籠池諄子氏の常軌を逸した行動に限界を覚え、自主退園に追い込まれた。損害賠償を求め、現在、園と訴訟中である。
「だってね、おもらししたウンチを、先生が下着にくるんで、そのまま幼稚園バッグにじかに入れるんですよ」
Aさんの言葉に、その場にいたお母さんたちは「そうそう、ウチもあった」と口を揃えた。
「『トイレ』って言ったら怒られんねん」――トイレも水を飲むのも決まった時間だけ!? 園の「軍隊的」教育で園児が萎縮
塚本幼稚園のホームページによれば、園は「21世紀の立派な人づくり」をコンセプトに教育を行っているという。「立派な人」とは、「けじめ・しつけができている」「善悪の区別がつく」「親孝行である」「初志貫徹する実行力がある」「社会のために役立つことをしたいと願う気持ちがある」ことを指すそうだ。
一見して、おかしな方針ではないようだが、その教育内容は、あまりにも「特異」だ。教育方針には、「先人から伝承された日本人としての礼節を尊び、それに裏打ちされた愛国心と誇りを育てる」とある。ホームページには、かわいらしい園児たちが、「教育勅語」や「五箇条の御誓文」を暗唱する動画が掲載されている。
こうした園の教育について、お母さんたちは「軍隊的だった」と明かす。
たとえば、「けじめ・しつけ」のために、おもらししてしまった子どもを職員室まで新しいパンツを借りに行かせて、「自分が赤ちゃんで、おもらししてすみません」と謝らせるという。
「しつけ」のために厳しくしているのかもしれないが、実際のところ、あるお母さんは、「この幼稚園に入ってから、おもらしが増えた」と語る。
「水筒のお茶が全然減ってないんです。後から聞いたら、お茶を飲むとトイレに行きたくなるから、ご飯の時間にもお茶を飲んだらダメって言われていたみたいで。今でも、あんまり水分を取ろうとしないんですよね。トイレに行く時間も決まっていて、幼稚園バスから降りて帰る1~2分の道中、おもらししてしまうことが多々ありました」
後に、子どもは「『トイレ』って言ったら怒られんねん」と、当時のことを明かしたという。
小さな子どもを育てた経験のある複数のIWJスタッフが、塚本幼稚園のやり方に違和感を示した。多くの幼稚園の場合、先生は基本的に失敗した子どもを叱りつけるようなことはせず、応援し、ケアしながら子どもにトイレを覚えさせるものだという。叱りつけることで、子どもが萎縮して、さらにトイレと言い出せなくなってしまうからだ。
「幼稚園の頃の話は絶対にしたくない」――4年間通い卒園した子どもの心に残された傷
園の方針に不信感を抱き、多くの人が自主退園を余儀なくされた中、お一人、お子さんを2才児の最年少コースから卒園までの4年間通わせた、Bさんという方がいた。
毎朝の「教育勅語」の朗唱や「君が代」の斉唱は「死ぬほどやった」という。年長のときには、伊勢神宮参拝の修学旅行へ行き、皇學館大学で研修をした。
今では普通の公立小学校に通っているというその子は、塚本幼稚園に通った4年間で、「愛国者教育」をたっぷりと受けてきた。
「軍隊のように言われたことだけをする教育を受けてきたため、
「今でも、旅行で韓国に行こうと言うと、『
「怒っているわけじゃないのに、何か失敗すると縮こまってしまって、手をこう、まっすぐに突き上げながら、『すみません!すみません!すみません!』って言うんです」
IWJは、その子にぜひ、会わせていただきたいとお願いをした。Bさんは快諾してくださり、数時間後に会いに行く約束をしたものの、電話があり、「子どもが幼稚園時代の話は『絶対にしたくない』と言ってまして…」と申し訳なさそうにお話してくださった。
思い出したくも、語りたくもない――。結局、取材はかなわなかったが、Bさんの子どもの心に残された傷の大きさを想像させられた。
「心中、韓国人と中国人は嫌いです」――副園長から直筆で渡された手紙に在日韓国人のお母さんが絶句…
集まったお母さんたちから、保護者宛てに配られたという一枚の園からのお便りを見せてもらった。「副園長 籠池諄子」と署名されたそのお便りには、塚本幼稚園の悪評を広め、入園希望者を他の幼稚園に引っ張っている「不良元保護者」がいるとあり、そうした保護者を指して、こう書かれていた。
「邪(IWJ注:よこしま)な考えをもった(名前は日本人なのですが)在日韓国人である・支那人である」
これは、決定的なヘイトスピーチだ。自らにとって不都合な相手を指すために「韓国人・支那人」と呼んだことも、「支那人」という言葉もそもそも、差別的だ。このプリントは、多数の保護者に配られたという。
「もう、本当にショックで…」
悲痛な声をあげるのは、3人の子どもを通わせていたCさんだ。Cさんはさらに、副園長から直筆で、差別的な「お手紙」を手渡されたという。
子どもにコーラを飲ませた現場を先生に見つかり、後日、副園長から「お叱り」の直筆手紙が手渡された。そこには、このようにあった。
「韓国人とかは、整形したり、そんなもの(コーラやファンタ)をのんだりしますが、日本人はさせません。根っこが腐ることを幼稚園では教えてません。副園長」
実はCさんは、今は帰化しているが、もともとは在日韓国人である。園に宛てたお返事の中には、こう、切実な思いが綴られていた。
「私自身、韓国人です。両親ともに韓国人の元、育ってまいりました。この手紙を読んで、私は言葉をうしないました。数分かたまってしまいました。私が中学生のとき、韓国人だといじめにあった事を思い出しました。副園長先生、どういうつもりでこのようなことを書いたのか分かりませんが、私もショックをかくしきれず、数名の身内の方、そして主人に、手紙の内容を伝えました。みなさんそろって、『差別だ』と言っています」
だが、副園長の差別発言は、止まらなかった。お母さんからの手紙に、再び直筆でよこした手紙には、次のようにあった。
「私は差別をしていません。公平に子供さんを預かっています。しかしながら心中、韓国人と中国人は嫌いです。お母さんも日本に嫁がれたのなら、日本精神を継承なさるべきです」
この手紙を受け取ったCさんは、絶句し、退園を決意した。
あまりにひどい差別実態を訴えるものの、行政はほとんど積極的な対応をせず
あまりにもひどい差別扇動が幼稚園で行われている事実を前に、初めてこの話を聞いた人は誰もが言葉を失うだろう。だが、聞いているお母さんたちはこう述べる。
「いつの間にか、それが当たり前になってしまうんですよね。『まあ、うちはこのくらいするよね』という。先に入園していた他のお母さんたちは、『1年もすれば慣れるから、がまんした方がいいですよ』といいます。たしかに、まともに聞いていたらもたなくなってしまう。でも、辞めて今、こうして思い出してみると、胸がムカムカしてきます」
塚本幼稚園があるのは大阪市淀川区。大阪市では、2016年7月1日に「大阪市ヘイトスピーチ条例」が施行されたばかりである。しかし、お母さんたちは、「大阪府の私学課に直接訴えてみたものの、あまり積極的に動いてくれているとは言い難い」という。
国はおろか、府も市も、明らかな差別行為を繰り返すこの幼稚園を前に、ほとんど何もできず、被害者の声は実質的に無視されてきた。さらにその経営元の学校法人が新たな小学校を設立するなどということが、許されていいのだろうか?
幼稚園を直撃訪問するも取材拒否! 保護者でさえなかなか中に入れてもらえない!? 園内で何を隠す必要があるのか…!?
泣いて園に行くのを嫌がる子ども、ヘイト文書の配布、教育勅語の暗唱に国歌斉唱――。
園の実態をもっと詳しく知るべく、IWJは2017年2月16日、大阪市淀川区の塚本幼稚園を直撃訪問した。
塚本幼稚園は、JR京都線/神戸線で大阪駅から約10分のところにある「塚本駅」で降り、10分ほど歩いた住宅街の中にある。敷地はさほど広くはないが、目の前には公園が広がる、静かな良い環境のようだ。園の中からは、園児の黄色い声が漏れ聞こえてくる。
正面に回り、インターホンを押すと、女性スタッフの声が聞こえてきた。「東京からやってきたIWJというインターネットメディアのものです。ここの幼稚園で、園児が教育勅語を朗唱したり、君が代を斉唱したりしていると聞きました。ちょっとそうした中の様子を見せていただきたいのですが」。しかし、「プライバシーがありますので、ご遠慮ください」として、スタッフは取り合おうとしない。「園児は写しません。籠池理事長にお話を聞くだけでも…」。しかし、結局、「取材はお電話でお問い合わせください」とだけ言われ、応じてもらえなかった。
園内に入れてもらえないというのは、実は驚くべきことではない。退園者のお母さんたちによると、なんと現役の保護者でさえ、授業参観や特別なとき以外には園の中に入れてもらうことはできないのだという。Bさんは、フェンス越しに子どもの様子をのぞこうとして、制止されたこともあった。いったい、何を隠す必要があるというのか。
しかし、翌日、改めて電話をかけ、「籠池園長や副園長にお話をうかがいたい」と問い合わせたものの、「少し前までマスコミ向けに対応していましたが、もう終わりました」と、不可思議な理由で取材を拒否された。
「お母さんの手作りご飯で、子どもは元気に、ご主人もお仕事がんばれます」――性別役割分担を強調する園の教えは「親学」に学んでいる!?
直撃取材を断念した後、園の目の前にある公園で、子どもをお迎えにきていた在園の保護者の方たちに直接、話をうかがってみることにした。
――塚本幼稚園はどんな幼稚園ですか?
「とっても良い幼稚園です。それ以上はあんまり聞かないでください…」
「森友学園」の国有地の破格値での払い下げ問題で、園から取材にあまり答えないよう口止めをされているのかもしれない。
――良いところで構いません。どんなところが良いなと思っているのでしょうか?
「子どもたちが自然と礼儀正しくなるのが一番。親も頑張らなければいけないんですけど、それ以上に子どもが伸びてくれるので、親も伸びることができる。生活の規律とか、今時あんまり教えてもらえないことを教えてもらえます。昔やったら当たり前のことなんです。お母さんが手作りのもの、味噌汁やご飯やお鮭を食べさせたら、子どもも一日元気になるし、ご主人もお仕事がんばれますよ、っていう」
このお母さんがお話してくださった話は短かったが、示唆に富んでいた。「昔やったら当たり前のこと」として、園が保護者に性別役割分担を指導しているという事実は、「親学」の教えを彷彿とさせる。
親学とは、日本会議の政策委員を務める、明星大学特別教授の高橋史朗氏が提唱する教育方針のこと。家庭教育を重視し、「母性的な慈愛と父性的な慈愛によって、子どもの発達を支援し、保証しようとする」「利他的遺伝子の中核ともいえる母性本能の遺伝子がスイッチ・オンになっていない大人が増えてしまっている」(※)として、父性と母性を明確にわける。
※高橋史朗氏『家庭教育の再生 今なぜ「親学」「親守詩」か』(2012)
この親学を推進する、超党派の「親学推進議員連盟」には、2012年4月、野党時代の自民党の安倍晋三氏が会長に就いたという。
- 日本会議、改憲の先に目指す社会 「親学」にじむ憲法観(朝日新聞、2016年6月17日)
実際、この幼稚園では、「親学・教育講演会」が開かれ、作家の曽野綾子氏や、安倍昭恵総理夫人が招かれ講演をしていることが、園の「おかあさん新聞」に掲載されている。
安倍政権は今国会で、「家庭教育支援法」を提出しようとしている。そしてこの法案の制定を求めてきたのが、親学を推進する高橋氏だ。高橋氏は、「親を啓発する国民運動を起こしていかなければなりません…国は、『家庭教育支援法』を、地方は『家庭教育支援条例』を作ってこれを推進することです」(※)と、はっきり主張している。
※高橋史朗氏『家庭教育の再生 今なぜ「親学」「親守詩」か』(2012)
「この問題を園の『校風にあわなかった』などという話で終わらせるわけにはいかない」――退園者のお母さんの決意
なぜ、こんな幼稚園を選んで入ってしまったのか――。
ここまでひどい実態を聞いてきて、思わずそう疑問が口をついて出てしまった。お母さんたちは、肩を落として、「こんな幼稚園だとは、知らなかった」と口を揃えた。
「何よりも、自宅から近い。それに、『責任持ってお子さん預かります』って聞いていましたから」
退園者に対する執拗な攻撃で、園はこれまで悪評を封じ込めてきたのだろう。
また、あるお母さんは、「子どもは嫌なことがあっても、あんまり親には話さない」という。保護者もめったに園の中に入れないのだから、この幼稚園の中で起こっている「異常なこと」は、いわば「ブラックボックス化」してしまっているのだ。現役の保護者にも、園のこうした実態がどこまで伝わっているのか、わからない。
退園したお母さんたちは、「この問題を、決して園の『校風にあわなかった』などという話で終わらせるわけにはいかない」と、決意を語った。
これらはすべて、IWJが実際に取材をする中で明らかになったことだ。園に対するお母さんたちの憤る姿は、迫力さえあった。
このような幼稚園が、ほとんど行政も手つかずのまま、運営を続け、さらにその経営元の「森友学園」が、新たに小学校を設置するなど、本当に許されることなのだろうか? 疑問ばかりが残る。
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