1. 学校法人「森友学園」が購入した大阪の国有地をめぐる疑惑。10億円級の土地だが、学園側が支払っていたのは実質200万円だった。どういう経緯なのか。取材や証言で改めて整理する。
この土地には4月、森友学園が運営する「瑞穂の國記念小學院」が開校する。「日本初で唯一の神道小学校」だという。
名誉校長は安倍晋三首相の妻、昭恵さん。校長の籠池泰典氏(森友学園理事長)は、政権に近く、改憲を目指す保守団体「日本会議」の大阪支部役員だ。
2. そんな森友学園は、なぜ、本来なら10億円近い土地を実質「200万円」で買えたのか。
舞台は大阪府豊中市野田町の国有地約8770平方メートル。ここをめぐる取引には、4つの転換点がある。
- 2015年5月 森友学園が土地を借りる
- 2016年3月 森友学園が土地の購入を決める
- 2016年4月 国が森友学園に1億円超を支払う
- 2016年6月 森友学園が土地を購入する
ひとつずつ、見ていこう。
3. 1. 2015年5月、森友学園が国から土地を借りた。料金は月額227万円だった。
森友学園はこの土地を国から借り、学校建設を始めた。土地を購入するお金がなかったからだ。
土地の所有者だった大阪航空局補償課の課長補佐は、BuzzFeed Newsの取材に言う。
「通常であれば売り払いとなるのですが、先方の資金的な事情で『すぐに買えない』ということで、貸し付けで対応しました」
国有財産の売買についての諮問機関「国有財産近畿地方審議会」の資料(2015年2月)によると、土地を「10年間まず借地として貸して、その後に時価で売る」こと、森友学園は「契約後8年を目途に本地を購入する予定」でいることが明かされている。
2月20日、TBSのラジオ番組に電話出演した森友学園の籠池理事長によると、契約金額は月227万円だったという。
4. 2. 2016年3月、土地から大量のごみが見つかる。森友学園が土地の購入を決める。
小学校の工事が始まったのち、土地の深層部から「大量のごみ」が見つかる。
2010年の大阪航空局の調査では、土地の表層部分(3メートル)にごみがあることがわかっていた。新たなごみは、森友学園が建設工事で基礎杭(9.9メートル)を打っている際に発見したという。
BuzzFeed Newsが財務省国有財産審理室に確認したところ、土地に埋まっていたのは生活ごみ(ビニール片、陶片、ガラス)や木材片だったという。
「ごみ発見」から2週間ほど経ち、森友学園は突如として土地の購入を決意する。8年間賃貸するはずが、まだ1年経っていなかった。しかも、お金がなかったはずなのに、なぜか。
財務省の佐川宣寿・理財局長は2月15日の衆議院財務金融委員会で、この森友学園の不可解な意思決定について、「開校が1年後に迫っているなか、早期に学校を整備し開校するため」と説明した。
籠池理事長自身は、前出のラジオ番組でこう述べている。
「綺麗な土地だったら、例えば1000円で買ったものだったらは1000円ですけど、ちょっとなんか変なもの、生活なんぼのものが出てきたらというたら800円になりますよとか、700円になりますよ、というようなことになるんだろうと僕思うんですよね」
こうも言っている。
「第六感が働きまして、これはちょっと賃借料にしたらかなり安くなると。そうすると購入させてもらえる金額に近づいてくるのではないかと」
5. 3. 2016年4月、航空局は土地価格をゴミを理由に「8億円引き」にした。しかも、処理費用として国が1億3200万円を支払うことに。
大阪航空局が森友学園が2016年3月に発見したという「深層部のごみ」の撤去費用を「8億1900万円」と算定した。
こうして、10億円近い土地代からその分が控除された「1億3400万円」の見積もりが提示された。購入決定から1ヶ月後のできごとだ。
これだけではない。土地の貸し付け前から見つかっていた「表層部のごみ」の処理費や、土壌の鉛やヒ素の除去費として、森友学園に「1億3200万円」を支払った。
後者は、土地の貸し付け時の契約で決められていたことだ。
6. 4. 2016年6月、森友学園が土地を購入する。10億円級の土地に払った実質負担は200万円だった。
こうして森友学園は、本来8年後に購入する予定だった土地を、借り始めた翌年に、割り引かれた価格「1億3400万円」で購入することに決まった。
国から「表層部のごみ処理費用など」として、「1億3200万円」をもらった2ヶ月後だ。差し引き、200万円の負担ということになる。
しかも、その購入方法は「10年間分割払い」だ。
頭金は2787万円。残りの1億円あまりは、「毎年1100万円、延納利息1%」で支払う契約だという(2月15日、衆議院財務金融委員会)。
7. この「200万円」について、民進党の玉木雄一郎衆院議員は2月20日、衆院予算委員会で質問をした。「ただ同然で売り払われている」のではないかとの指摘だ。
森友学園への国有地の売却について国会で質問。なんと国にはたった200万円しか入らない契約だと政府も認めました。同じ面積の隣地の価格は14億円もするのに。しかも4月1日開校なのに現時点で設置認可がおりていないことも明らかになりました。
— 玉木雄一郎 (@tamakiyuichiro)
国会で、土地の所有者だった国交省航空局は、この一連の売買の流れについて事実関係を認めている。国有地の売買を管轄する財務省は、この取引について、問題はないとの見解だ。
8. そもそも、本当にごみの処理に8億円もかかるのだろうか。
「8億1900万円」を決めた大阪航空局補償課の課長補佐は、2月15日、BuzzFeed Newsの取材に「国交省の『工事積算基準』に伴って計算した」と説明している。
ごみの量はどれくらいで、どういう基準で計算をしたのか。詳細については、担当者が2月20日まで帰らないとの説明を受けた。
そこで2月20日、改めて取材を申し込んだ。課長補佐はこう語った。
「担当者の予定が変わってしまった。色々調整ごとがあって、いつ戻ってくるかはわからない。今週は戻ってこれないかもしれない」
2月21日には、当の課長補佐も出張に出てしまった。
TBSによると、この日の午前、現地を視察した民進党の議員たちは、「(8億円分の)ごみを撤去するにはダンプカー4千台が必要で、現地を見る限りその形跡は乏しい」と指摘している。
9. 森友学園の籠池理事長は以前、ゴミの撤去費用について「1億円ぐらい」と説明していた。
朝日新聞の2月14日の報道では、籠池理事長自身が費用は「1億円ぐらい」と語っている。ただ、この点について、学園側はのちに朝日新聞側の「事実誤認」として訂正を求めている。
20日に電話出演した前出のラジオでは、この金額について改めて問われ、言葉を濁した。
「ちょっと今、言えないですね。あの、何ともメディアのところで言えないですけれども、かなりかかるだろうと思いますよ」
4月に開校予定の学校はまだ、大阪府に認可されていない。朝日新聞によると、松井一郎府知事は2月21日、記者団にこう説明した。
「ごみ撤去費用を誰がどう見積もったのかを明らかにするべきだ。ここが一番問題だ」
BuzzFeed Newsは大阪航空局補償課に引き続き説明を求めている。回答を得られ次第、報じます。