職場で、家庭で、学校で。
上司と、社会と、ライバルと。もしかしたら自分自身と常に戦っている漢(おとこ)たちに一服の休息を与えてくれるスイーツを紹介するユニット「甘党無宿」メンバーの住倉カオスと申す。いつもなら極上の甘き逸品をご紹介するのだが、今回はちと趣向を変えてみようと思う。
さて、漢を戦いから休息へとスイッチしてくれるものが「甘味」なら、休息から戦いへとスイッチしてくれるものは何であろう?
そう! 「肉」である。
血の滴るような、命そのものを食らうかのようなステーキ。
滋養たっぷり、白米とのコンビネーションが魔力の焼き肉。
どれも戦う漢にふさわしいが、難点が……。外で食べるとちとお高い。
ならば「肉」を買ってきて家で食えばいいのだが、なかなかお店のような焼き加減に持っていくのが難しい。
しかし、そんな「肉」を極上に仕上げてくれる道具があることをご存知だろうか?
そう、それが「鉄スキレット」である!
「鉄スキレット」とは何か?
鋳鉄(ちゅうてつ)製の厚手のフライパンのことだ。大体厚さ5mm程度のものが多い。大きさはいろいろあるが、レストランでハンバーグなんかがそのまま乗った小さいフライパンといえば「ああ、あの小じゃれたアレね……」と思い当たる諸氏もいるだろう。
確かにカフェなどでは、パンケーキなんぞを乗っけて小じゃれた感じで出てくる小憎らしいアイツだが、ああ見えて奴はけっこう「やる」のだ。
なぜ「鉄スキレット」が“つかえる”のか
- とにかく丈夫。正しく使えば100年くらいは持つ!
- 熱伝導が抜群のうえ、分厚くて蓄熱性もあるので熱々が長持ち。そのまま食卓へも出せる。
- 無骨なルックスで愛着がわく!
- 同じ料理が抜群にうまくなる!
のである。これは使わない手はないのではないだろうか?
「鉄スキレット」と一口に言っても、さまざまだ。大きさも1人用の目玉焼きにちょうどいいサイズから、4~5人分のピザまで焼けそうな大きなものまで。価格も200~300円から6,000円以上と多種多様である。
しかし今回は、理由は後述するが直径15~18センチくらいの大きさの物をおすすめしたい。メーカーもいろいろあるが、入手しやすいのは以下のようなところだろう。
ダイソー イモノシリーズ
こちらは100円ショップで有名なダイソーが、15~22センチくらいのものを200~300円で扱っている。買っても実際に使い続けるか不安な人や、アウトドアなどにガンガン持って行き、多少手荒く使うかもしれない場合におすすめだ。
ニトリ
こちらはニトリから出たいわゆる「ニトスキ」と呼ばれるもので、最近の鉄スキレットブームを牽引したと言っても良い大ヒット商品。15センチのものが500円以下。19センチでも800円以下とかなりお手ごろ。売り切れが続出したのもうなずける。
LODGE(ロッジ)
創業1869年というアメリカのメーカー。いわゆるダッチオーブンで有名なメーカーだ。カウボーイが焚き火で豆料理などをしているのを映画などで見た御仁も多いのではないだろうか? サイズは6 1/2インチ(16.5センチ)か8インチ(20.3センチ)が使いやすいだろう。それぞれメーカー希望価格で2,376円、3,564円と他のメーカーに比べてちとするが、100年使えることを考えたら安すぎるくらいだ。
その他ホームセンターなどでも、最近はオリジナルブランドでお手頃価格のものが各種出ている。
大きさを選ぶイメージとしては、1人分のハンバーグやパンケーキを焼いて、そのまま食卓に出すなら15~16センチのもの。ステーキを焼くなら18~20センチの物が使いやすいだろう。なんとなくイメージいただけるだろうか。
拙の場合は、パンケーキやお菓子作りに活躍させたかったのでLODGEの6 1/2インチを選んだ。こう見えてアメリカかぶれなのである。
いつかは愛犬と焚き火を囲みながら、マシュマロを焼きつつ、「鉄スキレット」でコンビーフを温めてみたいと思っている。
新品の「鉄スキレット」にはシーズニング(油ならし)が必要
製品によっては、あらかじめシーズニングしてあるので、最初のシーズニングは必要ないと説明書に書いてある場合があるが、洗剤などで油を落としてしまったらまた必要になる作業なので、覚えておいて損はないだろう。
手順を以下に記すと。
①先ずはしっかり汚れを落とそう
「鉄スキレット」をはじめ、鉄のフライパンなどは工場から出荷される段階で、さび防止のためさび止め剤や油、ろうなどで処理されている。
たわしや、食器洗い洗剤などを使って、まずはしっかり汚れを落とそう。
洗っているうちに泡が真っ黒になると思うが、とにかくしっかり洗う。
焦げや、うっかりさびなどが付いた「鉄スキレット」も、クレンザーや焦げ落とし、さび落としでガシガシ洗って大丈夫だ。ここが鉄製の道具のメリット。テフロンなどの鍋だったら一発でコーティングがはげてしまうだろう。
「鉄スキレット」は油ならしで、新品同様になるので安心して欲しい。
②次に「鉄スキレット」を火にかける。
実は「鉄スキレット」の表面には微小な穴が空いている。その穴に詰まった水分がさびの原因になるので、しっかり加熱して水分を飛ばす。
※その際、取手部も熱くなるので、厚手の鍋つかみは必須である。くれぐれもやけどには気をつけよう
「鉄スキレット」の表面などに焦げが残っていた場合、それを焼き切るためにバーナーを使ったりする場合がある。 またシーズニングに慣れている人の場合、ガスコンロには安全装置が付いているため、熱が上がりにくいのでカセットコンロを使う場合がある。
効果的に空焼きはできるのだが、「鉄スキレット」の場合、熱がこもりやすいため、燃料のカセットが熱くならないように気をつけて作業を行って欲しい。
水分を完全に飛ばしたら、次は油を火にかける。
この油の量、鍋の深さの3分の1まで油を入れる、という人もいれば薄くでいいと言う人もいる。要は「鉄スキレット」の全面に油がすり込まれればそれでいい。
今回は5ミリほど油をたっぷり入れて、キッチンペーパーで全体に油を塗り、5分ほど弱火にかける。しつこいようだが、やけどにはくれぐれも気をつけて欲しい。
油をオイルポッドや古い雑巾などに染み込ませて捨てたら、裏や側面にも油を刷り込んで終了。
これで油ならしは終了。最初は面倒くさいように感じるが、油がしっかりなじんだ「鉄スキレット」は、素材もこびりつきにくく、洗うのも簡単なので、最初だけきちっとやって欲しい。
使えば使うほど、育っていくのが「鉄スキレット」の魅力だ。
絶品ハンバーガー作りに挑戦!
さて、「鉄スキレット」の準備が整ったところで、ハンバーガー作りに挑戦!
まず材料は以下(4人分として)
- 牛ひき肉 …… 400グラム(1人当たり100グラム換算)
- 玉ねぎ …… 1個
- トマト …… 1つ
- レッドチェダーチーズ …… 好みで(とろけるチーズなどでも良い)
- トマトケチャップ
- 塩
- 黒胡椒
- ピクルス ……好みで
- バンズ …… 4つ(ここではイングリッシュマフィンを使用)
まずは玉ねぎのスライスを用意しよう。
普通は水にさらして辛味を抜くが、今回はワイルドテキサスなバーガーなので、スライスしたままの辛い玉ねぎを味わおう!
どうしても辛味が苦手な御仁は、切る前にレンジで30秒~1分チンしてからスライスしたり、流水にさらしたりすると辛味は抜ける。そのへんは好みなので各々調整してみてほしい。
メインのパテ作り!
ハンバーガーだと合い挽き肉を使って、つなぎにパン粉などを入れるのだけども、これは和風の優しい味のハンバーガーの場合。
今回目指すは西部の味がする「ワイルドハンバーガー」ゆえ、使うは牛肉のみ!
まず冷蔵庫から出した、冷たいままのひき肉をボウルにあける。
上から塩と黒胡椒をかけていく。その時少し離して上からかけた方が満遍なくかかる。
塩はかけすぎに注意。でも黒胡椒はバカみたいにたくさんかけて良し!
そして木べらでひき肉を混ぜていく。
ハンバーガーだと手ごねが好まれるが、今回はウェスタン風。
欧米ではひき肉を混ぜる時、体温がうつるため木べらでこねるのが一般的だという。これはハンバーグの起源がタルタルステーキだったせいかもしれぬ、と拙は思う。
とりあえずひき肉は混ぜ過ぎに注意。食べる時に「肉」の食感が残っていた方がいいので、形を整えられる程度になったらもうOKだ。
次にパテの形に整えるのだが、体温が「肉」にうつらないように、手を氷水につけて冷やしてみた。
のだが……。これはちょっと冷たすぎる。
いいかもしれないが、まぁやらなくてもいいかも……。
パテの形を整える時に、手にオリーブオイルを少し付けると「肉」が手にくっつかなくて良い。
ひとつのパテは、80~100グラムくらいが適当。
まず丸くして、中の空気を抜くようにパンパンたたきながら平らにしていく。
このパテ、焼くとびっくりするくらい膨らんでいく。
なので相当薄くしても大丈夫。真ん中にくぼみをつけても良いだろう。
パテができたら「鉄スキレット」の準備
「鉄スキレット」を火にかけるのだが、まずは中火くらいで温めていこう。丈夫な「鉄スキレット」なのだが、鋳物(いもの)なので急激な強火は寿命を縮めてしまう。
じっくり育てていくのも鉄の調理器具の楽しみの一つだ。
火にかけて2~3分。水滴を落としてみてコロコロ転がるようだったらもう大丈夫(やけどに注意)。
油を引こう。
ここで一つ注意点。「鉄スキレット」を始め、鉄のフライパンは先に熱してから油を入れる。これは油が高温になりすぎないため。
油の量は小さじ半分~小さじ一杯分くらい。「鉄スキレット」は育てば育つほど、材料がくっつきにくくなるが、最初はこれくらい必要だ。
油を引いたら優しくパテを置く。
火加減は弱火~中火で3分。香ばしい焼き色をつけるイメージで。
パテをひっくり返してさらに3分。この時、火は弱火に。
「鉄スキレット」にふたをして蒸し焼きで中まで火を通すイメージで。
そしてさらにふたを取って、今度は強火に。余計な水分を飛ばしてこんがり仕上げるイメージで。
竹串を真ん中にさしてみて、肉汁が透明だったらOK。
まだ赤かったらさらに中火で加熱。
パテを焼いている間に、バンズの用意もしておこう。今回はイングリッシュマフィンだが、半分に割って、バターを塗りトースターでチン。
そうこうしているうちにパテが焼けた!
想像以上にプリッと膨らんで焼けて、めちゃくちゃうまそうな匂いが漂っている!
まずはシンプル過ぎる感があるが、玉ねぎスライスとケチャップだけのシンプルバーガーで試食してみよう。
コショウを振って……
男らしくガブリと食らいつくと……。
口の中で肉汁があふれだし、玉ねぎの辛味と相まって絶妙のハーモニー。
これは……西部開拓時代の味がする!!
行ったことないけど。
でもこれはマジでうまい。しばし無言で肉を味わう。さすがに牛肉100パーセント。ハンバーガーを食っているというより「肉」を食っている感がこれだけするとは。しかしパテをこれだけプリプリに仕上げるとは……。「鉄スキレット」おそるべし!
お次はバリエーションで、チーズバーガーにチャンレンジ。
と言っても、「肉」が焼けたら火を止めて、パテの上にレッドチェダーチーズを乗せ、ふたをして余熱で1分温めるだけ。
余熱と言っても蓄熱性バツグンの「鉄スキレット」はまだジュージューいう音が止まらない。1分経ってふたを取ると、このとおりトロトロにチーズが溶けてやばいルックスに!
今度はスライスしたピクルスも乗せてみよう。
熱々のチーズバーガーをガブリ!
なんじゃこりゃ! めちゃくちゃうまい。
ちょっとこれ、悪いけどお店とか行けなくなっちゃうよ……。
さらにバリエーションで、アボカドディップ。
アボカドのリッチなとろみが肉汁と絡み合っててうま~!
トマトの酸味でサッパリしているから、いくらでも食えそう!
いやぁ~「鉄スキレット」で作るハンバーガー。
絶品だとは思ってたんだけど想像以上の絶品さ。
ありがとう「鉄スキレット」よ。お前以上に「肉」をうまく出来る奴は他にいるのか……。
そう感謝しながらキッチンを見ると、そこには油とチーズが絡んだ「鉄スキレット」が佇んでいた。
(なんかもったいないな……。そういえばトマトと玉ねぎもちょっと余っちゃたな……)
そう考えていたら……カオス良いことを思いついちゃった!
ニンニクを切ってスライス。
オリーブオイルを入れた「鉄スキレット」を再加熱し、ニンニクを入れる。
ニンニクがこんがりしてきたら、そこに余ったトマトと玉ねぎを投入。
<p">そんでもって鯖(サバ)の水煮缶を開け、鷹の爪を散らす。さらにオリーブオイルを入れて加熱。
すると、鯖のアヒージョの完成だ!!
見た目はなんだか怪しいが、塩で味を整えるとこれまた絶品。簡単に酒のつまみができた!
鯖の代わりにエビを使うとさらに本格的になるぞ。
もちろん「鉄スキレット」はステーキを焼くのだって得意中の得意。
こんな、いかにも焼くのが難しそうな塊肉だってお手のもの。
見てよ。このうまそうなレア加減!
素晴らしいこの「>鉄スキレット」。使い終わったらきちんと手入れしよう。
と言っても実はとっても簡単。
気をつけなくてはいけないのは、鉄製なのでさびに弱いこと。
水につけたままシンクに放置していたりするとあっという間にさびだらけになってしまう。
理想なのは、料理が出来上がったらそのまま熱いうちに、熱いお湯でブラシで洗うこと。
洗剤などなくとも、驚くほど簡単にこびりついた料理カスなども落ちてしまう。
もちろんこの時もやけどなどに気をつけよう。
洗い終わった「鉄スキレット」はよく水気を切る。
前述したように「鉄スキレット」の表面には微細な穴が無数に空いている。
そこに入った水分を飛ばすため、火にかけるのがおすすめだ。
そして水気を完全に飛ばしたら、表面に薄く油を塗ってしまっておこう。
使い込むうちに、油もなじんでいき、だんだん塗らなくても大丈夫になっていく。
いかがだっただろうか。
この「鉄スキレット」、「肉」以外にもパンケーキや、炒め物。おこげのおいしいご飯を炊いたり、石焼ビビンパなど、可能性は無限大だ。
焼き物の達人目指して、貴兄のアイデアで楽しんで欲しい!
それではまたお目にかかろう。甘党無宿、局長・住倉カオスでござった。
※この記事は2017年1月の情報です。
※金額はすべて税込みです。