私にとって生涯を変える出会いになった人は、新卒で入社した会社にいました。
入社二年目で私の上司になった人です。
上司は、いま、テレビにたまに出たりしている
名物編集者の中瀬ゆかりさんという女性でした。
彼女は『新潮45』という雑誌の編集長に就任したばかりで
当時37歳。そう考えるといまのわたし(今年40歳)より若くてビビりますが
8年間、公私にわたって本当に世話になりました。
中瀬さんは、吉村昭さん、野坂昭如さんや福田和也さん柳美里さん
辻仁成さんなどの超すごい作家さんを担当し、
編集長になってからは、主に女性の作家さんやノンフィクションライターを
発掘して世に出したりとか、すごい人です。
私自身は、家族の縁が薄いっていう生い立ちがあり、
他人に対する人間不信がすごくあったのですが、
割と何をしてもじっと見守ってくれる人で、
今、自分が割と更生できたのは彼女のおかげだと思っています。
で、中瀬さんって一緒に取材とかに行くと、
最初は中瀬さんを警戒して不信感を持っているような人でも、
2時間ぐらい話すと、みんな中瀬さんのことを好きになっちゃうんですよ。
それは23歳の私にとっては魔法を見ているような感じでした。
なんで中瀬さんはこんなにすぐに人の心をつかめるのか、
私はそれがずっと不思議だったんですが、
インタビュー録音の文字起こしとかで、何度も中瀬さんの
インタビューを聞いてて、わかったことがあり、
それを自分も真似してみたらすごく良かったので、
今日はそれを書こうと思います。
中瀬さんがやっていたことは「うなずく」っていうことです。
「ええ、ええ」
「はぁ~そうなんですか」
「うん、はい」
「おおー」
とか、とにかく良くうなづいていました。
一方で、その場にいたはずの私は全く声を出さずに
じっと聞いているだけなので、
インタビュー録音を聞いていると私はその場にいないかのようです。
たとえば、インタビュー取材で、とある女流作家さんに取材した際、その人がこういう発言をしたとします。
「それからもう1つ、私はやっぱり、ある意味でヨーロッパにいたことが幸いしたかもしれない。なぜなら、日本の男たちは、できる女となると敬遠するんですよね。ちょっとね。ところがね、あちらの男たちはね、仕事上で張り合うとまたも負けそうになる、そうするとリターンマッチはベッドでやろうと思うわけです。というわけでね、できる女がもてちゃうんです。日本では敬遠されちゃう。あっちではもてるんです。」
この時、中瀬さんがインタビュアーだとしたらこのぐらいの頻度で相槌を入れます。
「それからもう1つ、」
はい
「私はやっぱり、ある意味でヨーロッパにいたことが幸いしたかもしれない。」
うん
「なぜなら、日本の男たちは、できる女となると敬遠するんですよね。」
ああー、はい
「ちょっとね。」
うんうん
「ところがね、」
ええ
「あちらの男たちはね、仕事上で張り合うとまたも負けそうになる、」
ええ
「そうするとリターンマッチはベッドでやろうと思うわけです。」
おおー!
「というわけでね、できる女がもてちゃうんです。」
すごい! ナルホド! 私も日本にいるからもてないのか!
「日本では敬遠されちゃう。あっちではもてるんです。」
いやぁ! いい話! 私もやる気出てきました!
こんな感じです。
中瀬さんのすごいところはほかにも、長期的に人間関係を見ているのでその場で人を判断しないとか、手紙がマメとか、感想がうまいとか、いろいろあって、それで信頼を獲得して今の地位にいるんだと思いますが、それはまねするのは8年一緒にいた私でも難しいんですけど、相槌は多分その場でまねできます。
なので私はまねしました。
知らない人に会うとか、初対面の人ばかりの飲み会に出るとか、そういう時も、相槌を過剰に入れていくっていうのはすごく効くんです。
だれだって話をしている人は自分の話を聞いてほしい、ウケたいって思っていると思います。
でも、「じー」っと黙って聞いていると、
「ほんとに聞いてくれているのかな」
と不安になるものです。
聞いている側からしたら
「ヘンな相槌をして嫌われたくない」
とか
「初対面で緊張している」
とか、あると思います。
でも、話し手からしたら反応が分からない人に話をすることの方が怖いんです。
なので、ぜひ、相槌を打ってみてください。
無言でうなづくのではなく、
「はい」
「ええ」
「うん」
「ふーむ」
「へぇ」
こういったことばを口から出すことが重要です。
すぐにできないかもしれないので、
そういう時はテレビで誰かが話している場面があったら、
相槌を打ってみて、練習してみるといいですよ。
相槌は即効性あります。
あなたの目を見て話してくれる率が上がると思います。
日本一の幸せなお金持ち斎藤一人さんも全く同じ話をしていました。