世の中には、「結婚しても自分の趣味は大事にしたい」と考える男の人や、「結婚したってそれがその人の全てではないのだから、夫や父親としての役割以外の面も、大切にしてあげなきゃね」と言って、それを尊重する女の人がいる。まさに、うちの父と母がそうだった。
男の人がキャバクラなどへ行くことに関して「自分のお金で行かれるのは嫌だけれど、接待や仕事の付き合いで行くのなら仕方がない、セーフ」と考える女の人は多いし、「仕事なんだから、それはさすがに仕方ないよね?」と、そこに「仕事」という大義名分がある場合、引け目すら感じていない男の人がほとんどのように思う。
浮気はダメだけど、AVや、人によっては風俗あたりまでは「しょうがないと思う」と妥協の許容をしている女の人は多く、「AVは、いいでしょ」と、そこに関しては迷いすらない男の人が多いように感じる。
はっきり言って、私は、ぜんぶ無理だ。そんな男の人とは結婚したくないし、そんな風にあれもこれもアリにしていたら夫婦仲は守れないし、家庭崩壊してしまうだろうなと思うし、実際、私が育った家庭は崩壊していた。
世論に流されている場合ではない
立場が彼女だった時は、嫌だと思いながらもそうは言えなかったけれど、妻となった今は、はっきり口に出している。
「言っておくけど、子どもが欲しいのならば、あなたの人生は全部を子どもに注いでくれないと困るし、仕事でキャバクラもアウトだし、AVも禁止だし、風俗いくならそれは浮気と同じだから、そういう出来事として私の中に刻まれるからね」と。
婚約期間から、結婚と出産の希望があなたの中にあるのであればと「夫として、父親として」の条件は、明言してきた。
これらは夫婦仲の鍵をすごく握っていることだ、と私は思っている。
だから、世論に流されている場合ではないし、常識を基準に妥協している場合ではない。
私は旦那さんと、ずっと一緒にいたいと思う。せっかく結婚したのだから、できる限り、別れたくない。
だから、一生、二人の間に「別れたい」と思うような出来事は起きてほしくないし、私があなたのことをずっと好きでいられるように気をつけてほしいし、嫌いにならないですむような行動を心がけてほしい。
夫婦でい続けるためには、ずっと好きでいる必要があって、嫌いになるような事件が起こると困る。
私が旦那さんに嫌われないようにすることは、私次第だけれど、私が旦那さんを嫌わないようにすることは、私次第ではなく旦那さん次第なので「そこはあなたの管轄なんだから、しっかり頼むよ」という意味で、私は旦那さんに、多くのことを望む。「夫にこういうことされるとガッカリする」「子どもの父親がこういうことしたら引く」というポイントを常日頃から口にして、彼に把握させている。
ムダ遣いしたいなら、父親になることは諦めて
結婚前、彼はパチンコを趣味としていた。そのこと自体は問題ではないのだけど、今後、結婚をするのであれば、パチンコによってお金が失われることは問題になってくる。勝つ分にはいいけれど、負け戦をされるのは、家計に響くので困る。家計に響く趣味というのは、確実に、夫婦仲にも亀裂を入れるだろうから。
なので婚約した時、「それって勝ってるの?」と訊いた。「月トータルでは、必ず買ってる。先月は30万くらいプラスがあった」とのことなので、悪くないな、と思い「勝ってる分にはいいけど、負けるんだったらやめてね」と告げた。
「負けないよ、パチンコにはセオリーがあるから、運じゃないし」
「うん、それならいいのだけど、とにかく絶対に負けないでね。もしこの先、1回でも負けたら、もう一生やらないでね」
「月トータルなら勝てるけど、1回ごとで見られちゃうと負ける場合もあるかも……」
「負けたら禁止。なおくん(旦那さんのこと)が稼げる金額は決まってるんだから、パチンコでお金を失われたら、家計と共に家庭が崩壊する」
「わかった」
その後しばらくパチンコは続いていて、たびたび「美咲ちゃん、勝ったから、なんか高級なもの食べに行こう! 何食べたい?」という誘いがあって、なかなか調子が良さそうだったので私もただただ応援していたのだけど、ある日「ごめん、負けちゃった……もうやらない」と言ってきて、それっきり本当に、やらなくなった。
たまに、二人で歩いていてパチンコ店を通りかかった時に、お店に吸い寄せられる素振りをすることがあり、そんな時は「もうやる権利を持ってないからダメだよ。なおくんは負けるから、パチンコやる資格ない。ムダ遣いしたいなら、父親になることは諦めて。そんな人の子ども産みたくないから」と言うと「パチンコはやらなくていい」となる。
また、彼には漫画の収集癖があり、実家の彼の部屋は、床が抜けるのではないかと思うほど、漫画だらけだったのだけど、結婚を機に漫画を買うことも禁止した。
あなたが無限に広い部屋に住める選択肢のある男であれば漫画を溜め込んでもいいけれど、稼ぎ等の兼ね合いで住める部屋の広さに限りがあるのであれば、読みたいものはレンタルをして読むようにしてくれないと、あなた以上に在宅率が高い私はストレスになる。家の収納に見合わない量の漫画はストレスだ。
「漫画を買いたいのであれば、大きなおうちに住める男の人を目指してね、私はどっちでもいいよ!」と伝えている。
キャバクラ通いが出世に必要なのであれば…
旦那さんから「もしも仕事で俺がキャバクラへ行ったらどうする?」と訊かれたことがある。「出世のために必要なことだったら?」と。
そもそも、出世をするためにキャバクラ通いが必要なのであれば、そんな職場は選ばないでほしい。転職してほしい。
その他の業務がどれだけできていても、キャバクラに同行しないだけで認めてもらえないのだとすれば、そんな世界で働かないでほしいし、キャバクラに付き合うことくらいでしか出世ができそうにないのなら、その職業では大した伸びしろがなさそうに思えるから、どちらにせよ転職をすすめたい。
それに、あなたは、私を幸せにするために働いているのに、その働き方で私を不幸にするのでは本末転倒でしょ、とも思う。私に嫌な思いをさせてまで出世する価値がどこにあるのだろう。
そんな仕事人間と結婚をした覚えはないし、逆に仕事人間ならば、もっと数億円単位で稼いでくれないと、仕事人間のマイナス要素しかないのでは困る。
旦那さんがAV鑑賞することの最大のリスク
旦那さんからの「AVは? 萌え系のアニメは?」という質問に関しても、「ダメに決まっている」という答えになる。
他の女が頭によぎってほしくない。だって、それはすごくリスクのあることだから。
AVを観る習慣には、自分以外の「お気に入りの女」を持ってしまう可能性がある。AVを観ることは「この子の顔好きだな」「俺、こういう女、好みなんだよな」と気づく機会になる。その繰り返しで、特定のAV女優を好きになったり、お気に入りのAV女優ができてしまう場合がある。
「AV女優を好きになったところで、どうせその人に会えるわけないんだからいいじゃん」というのが世論だとは思うけれど、私の感覚だと、東京に暮らしていれば、本人に出会える可能性も十分にあるし、本人に出会えなくても、似ている人に出会う確率なら、けっこう高い。
お気に入りAV女優を持たれることの最大のリスクは、そのAV女優に似た雰囲気の子に出会った時に浮気に流れる可能性が高くなるところ、だと思う。
その子単体では、どうとでもなくても、すごく好きな人に似てることによって、いきなりその子が魅力的に見えてしまう、という危険な現象は確実に存在する。AV鑑賞は、彼の中に、この厄介なフィルターを育てかねないので、浮気の観点から見ても、やはりAVには、かなり現実的なリスクを感じる。
だからAVは観てほしくないし、観られてしまうと心配で困る(アイドルの応援や、テレビに出ている人にハマるのも、同じ理由でNG)。
萌え系のアニメだってそうだ。アニメキャラ自体が実在しなくても、それに似た雰囲気の子に出会う可能性があるし、そもそもアニメキャラの裏には実在する人間が複数人いる。声優なり、作者なり、結局のところ、観ている人をトキめかせているのは、実在する誰かの意図だ。
そのアニメにハマったことがキッカケで「お気に入りの声優」を持ってしまうかもしれないし、「この台詞を考えた人、神だ……」みたいな気持ちが芽生えるかもしれないし、「このアニメを作ってる人に会いたい」みたいな意欲が育ってしまうかもしれない。
アニメキャラは実在しなくても、実在する人間の意志が介在してるから、十分に浮気の種になるし、出会いのキッカケになり得る。怖い、心配。
これらのことは全て、結婚する前から、すべての元カレに対しても思っていたことだけれど、この気持ちを伝えられたのは旦那さんが初めてで、結婚というのは、やはりそれだけ別格だし、「ずっと一緒にいようね」という大前提がある契約なので「ずっと一緒にいられるように、こうしようね」という提案がしやすい。
私も彼のためだけに生きている
私自身も、結婚してからは、彼のためだけに生きている。
「これが私の仕事なんだからしょうがないじゃん」なんて絶対に言うべきではないと思っているので(思いやりがないし、そもそもそんなのって、実際は能力の低い人の言い訳でしかないと思う。どうにもならない現実があるわけではなくて、自分がどうにかできないだけ)、彼が嫌な気持ちになるような仕事は、結婚前から徐々にセーブをするようにして、結婚を機に完全にシフトチェンジをした。
結婚前の下田美咲業は、私が仕事に婚活を兼ねていたこともあり、カッコいい男の人に出会うような現場や、好みの男の人と仲良くすることで成り立つ企画が仕事の中心だったけれど、今はひとつもない。転職した、と言っても過言ではないレベルで、仕事内容を総入れ替えしたと思う。
その分、彼との生活を、とことん商品化する戦略に変えた。この連載もそうだけれど、彼との間に起きた出来事や、彼と過ごして芽生えた想いを、ネタにして原稿にすれば、「むしろこれが仕事だからね!」という気持ちで、堂々と彼といっぱい遊べるし、他の男の人と関わらずに働ける。
彼に嫌な想いをさせないこと、彼との時間を最優先することを考えた結果として私は、彼との生活を原稿にして売ることを仕事にした。
結婚したからといって、恋に落ちる機能を失うわけではないので、いい人に出会ってしまえば、結婚前と同じように、恋には落ちてしまうだろうと思う。不倫をするかどうかは、理性の管轄だけれども、恋に落ちる落ちないだけで言えば、意志でコントロールできることではない。美味しそうな物を見て「食べたい」と思うのは不可抗力であるように。
でも、食べてしまうことは不可抗力ではない。「絶対に太りたくないから」と考えることで、食べないでいることはできる。きっと不倫もそんな感じだ。
だけど、できれば「食べたい」と思う機会自体、旦那さんの未来のどこにも存在しないでほしい!と願うのが乙女心なので、私は、そこへのリスク対策を全力でする。
「ジュースを買いに行ってくる」と言って、深夜に出かけた彼
今のところ、旦那さんは、疑いようが全くない。
こんなに私しか登場しないスケジュールでいいんだろうかと、こちらが心配になるほど、人付き合い自体を全然しなくなったし、飲み会といえば、数ヶ月に1回の会社の経費で行われる社員飲みだけで、それもギリギリまで粘って家にいて遅刻して参加し、あきらかにハシゴ酒をしていない時間内で帰ってくる。
毎月シフト表を丸ごと渡してきて、休みの日はずっと一緒にいるし、家に携帯を置いて出かけてしまうことがあまりにも多い。
ある日の深夜、突然に「ジュースを買いに行ってくる」と言って家を出て行ったので、一般的にはこういうのって、外に出て誰かと電話だよな……聞かれたら困る相手との電話……と思っていたら、携帯は充電器にささっていた。3分後、彼はジュースを抱えて帰ってきて「ジュースないと無理」と言ってガブ飲みしていて、本当にただの買い出しだった。
さらには結婚前から彼の銀行のキャッシュカードは私が持っているため(彼が自主的に差し出してきた) 、彼は基本的に遊びに行ける現金の手持ちを持っていない(クレジットカードも持っていない)。一緒にいるときも「あ、お金おろさせなきゃ。絶対これ払えるほど持ってない」と思ってカードを渡して、その都度、今日私と遊ぶのに必要な分のお金をおろさせているような状態なので、私がいない時に、お金のかかる予定をこなせそうにもない。
私の疑心暗鬼を総動員しても、彼には疑う余地がないように思える。きっとこの状況は、彼の天然行動が半分で、もう半分は、誠意を持ってそうしてるのだろうから、この人を選んで良かったと思う。
こんなにも、26歳男性という個人の自分を捨てて、とにかく旦那として生きたり、何を差し置いても父親になりたがる人は、きっとかなり珍しい。大切にしようと思う。