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激震! 「ワセダクロニクル」スクープの舞台裏

東洋経済オンライン 2/8(水) 5:00配信

ついに日本にも新しい形の調査報道メディアが誕生した――。2月1日に公開された「電通グループからの『成功報酬』~買われた記事(1)」(ワセダクロニクル)を読んでそう感じた人は多かったのではないか。ワセダクロニクルは、早稲田大学ジャーナリズム研究所(所長:花田達朗)のもとに作られた非営利の調査報道メディア。同研究所の招聘研究員でもある渡辺周編集長が手掛けた創刊第1弾は、人の命にかかわる医薬品の記事に金銭が支払われていた、という衝撃的なもの。問題となっているのは電通グループと共同通信社である。さっそく渡辺編集長に会い、今回の調査報道に懸けた思い、そしてワセダクロニクルが目指すものを聞いた。

【写真】渡辺周編集長の横顔

 ――記事掲載後の反応は? 

 読者の方からも同業者からも、いい反応がありました。既存のメディアにとっては、よほど腹をくくらないとやれないと思うので、そういう意味からも「よくやってくれた」と感じたのだと思います。しかし、こちらとしては無謀に戦っているわけではない。準備期間としても10カ月くらいかけ、慎重に取材を進めました。

■丁寧に「地上戦」を進めた

 ――10カ月というと、昨年3月から。長い時間をかけましたね。

 調査報道である以上、「当局によると」といった書き方はできない。自分たちで一つひとつ確認していかなければならない。必要なのは、まず証拠になる紙です。紙だけでも十分に強いのですが、それに加えて当事者にぶつけて証言をとっていく“地上戦”もやっていく。当事者たちがどこにいるのかを探し出し、どのようにアプローチするのかを考えて、直撃取材をする。こうした一つひとつの地上戦には時間がかかるわけです。

 ――編集部は何人いるのでしょうか。

 かかわり方はいろいろですが、10人くらいです。プロのジャーナリストが大半ですが、さまざまなバックグラウンドの方が加わっています。

 ――皆さんボランタリーベースでの参加でしょうか。

 隠すことではないのでハッキリ言いますが、みんな無給です。おカネを準備してから始める、ということも考えられるかもしれませんが、まず作品を見せて、私たちはこういう成果を上げられるんですよ、と示し、そこを評価していただいてから寄付金を集めることにしました。青臭い言い方になりますが、ここまでは志だけでやってきました。おカネが集まってきたら給料についても考えていきますが、残念ながら今はまったくおカネはないんです。

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最終更新:2/8(水) 12:45

東洋経済オンライン