2号機格納容器調査とは
福島第一原発の事故では、1号機から3号機で原子炉の核燃料が冷やせなくなり、高温となった核燃料が溶け落ちる炉心溶融、いわゆるメルトダウンが起きました。核燃料は内部の構造物と混じり合って「燃料デブリ」と呼ばれる塊になり、一部は原子炉の底を突き破って格納容器に達していると見られていますが、どこに、どのような状態であるのか、6年近くたった今も詳しくわかっていません。
この燃料デブリの取り出しは廃炉最大の難関とされています。具体的な取り出し工法を決めるため、その状態を早く把握することが求められていますが、極めて高い放射線量のため人が立ち入れず、内部の調査は模索が続いています。
このうち2号機では去年、宇宙から飛んでくるミューオンという素粒子を使い、内部をレントゲン写真のように透視する調査が行われ、核燃料の大部分が原子炉の中に残っている可能性が高いことがわかりました。実際はどうなのか、その後、2号機では、格納容器周辺の除染が進んだことから、東京電力はさらに詳しく燃料デブリの状態を把握するため格納容器の内部にカメラを直接入れる調査を行いました。
デブリか?堆積物を発見
この調査には、定期検査のときに部品の出し入れを行っていた細い配管が使われました。カメラは全長10メートルほどの棒状の装置の先端に取り付けられ、遠隔操作で、原子炉の真下、「ペデスタル」と呼ばれる原子炉を支える設備の内側まで進められました。
そこでとらえられた映像が先週、公開されました。原子炉の真下にある作業員が歩く金属製の格子状の足場。表面がでこぼことして黒や褐色がかった堆積物がこびりつくように広がっていました。上から流れ落ちてきて、固まったように見えます。本来あった足場がなくなり、大きな穴があいたようになっている場所もありました。原子炉を冷やすために注入されている冷却水が、雨のように落ちてきている様子もとらえられました。
デブリかどうか慎重に判断
東京電力の担当者は記者会見で、足場の脱落について、燃料デブリの熱の影響を受けた可能性があるという見方を示しました。また撮影された堆積物については「原子炉の下部には保温材や制御棒を動かす装置のケーブルなどがある。燃料デブリかどうかは情報が足りず、なんとも言えない」。燃料デブリの可能性を含め、さまざまな可能性が考えられると説明しました。今後は格納容器の内部に投入する計画のロボットで放射線量や温度を計測し、総合的に、燃料デブリかどうか評価するとしています。
ロボット調査見直しの事態
一方で、ロボットによる調査の計画見直しを迫られる状況も明らかになりました。線量計やカメラを搭載したロボットは作業用の足場の上を動き回って調査する計画でした。しかし、この足場が脱落していることで調査できる範囲が限られるおそれが出てきたため、東京電力はロボットを投入するかどうかも含めて慎重に検討するとしています。
530Sv/hの衝撃
また格納容器の中の一部では極めて高い放射線量が推定されました。東京電力が、放射線の影響による映像の乱れの大きさから放射線量を評価したところ、ペデスタルの外側で最大で1時間あたり530シーベルトと推定されることを明らかにしました。これは人が死に至るレベルに短時間で達する極めて高い値で、最大で30%程度の誤差がある可能性はあるものの、2号機の格納容器内で事故の翌年に計測された1時間あたり73シーベルトに比べてもはるかに高い値です。
日本原子力学会の廃炉検討委員会の委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は、「この値が正しければ、溶け落ちた核燃料の一部が近くにあって、水に漬かっていない可能性がある。まずはこの値が正しいか詳しく調査する必要があるが、これほど放射線量が高いと調査用のカメラが長くもたない可能性があり、調査方法も工夫する必要がある」と指摘しています。
東京電力は、なぜペデスタルの外側で大きな値が計測されたのかわからないとしていますが、原子炉から溶け落ちた核燃料が格納容器の内部で強い放射線を出している可能性があると見ています。
廃炉の困難さ浮き彫りに
今回は、燃料デブリがあるかもしれない格納容器内部の一端が映像にとらえられましたが、それによって計画見直しの可能性も浮上するなど、廃炉を進める道のりの険しさを改めて示す形となりました。
燃料デブリの取り出しは1号機と3号機の3基で計画されていますが、溶け落ちた核燃料のほとんどが原子炉を突き破って格納容器の底に広がっている可能性がある1号機をはじめ、作業は容易ではないと考えられています。
国と東京電力が示している現在の工程表では、福島第一原発で建屋を解体し撤去するまで、すべての廃炉作業が完了するには最長で40年かかるとされています。今後は、ことし夏ごろをめどに大筋の取り出し方針を示し、平成30年度前半に具体的な方法を決め、5年後の平成33年までに1号機から3号機のいずれかでデブリの取り出しを始めるとしていますが、いずれの号機も当初の計画より全体的に作業は遅れています。
今回の調査で関係者は一様に、最大の難題である燃料デブリへのアプローチがようやくスタートラインに立ったという見方を示しています。これから調査が進むごとにどのような課題が見つかるのか、また、実際にとらえられた映像はどのような事故像を示すのか、調査の行方から目が離せない状況が続きます。
- 科学文化部
- 国枝拓 記者