1. トランプ大統領は2月2日夜(現地時間)、Facebookにこんなニュース記事を投稿した。「クウェート、トランプと同様にビザ禁止令 イスラム教徒の多い5カ国に」
6万8000以上シェアされた。
2. 偽ニュースだった。
この偽ニュースはヨルダンのメディア「アル・バワバ」が伝えたもの。「シリア人、イラク人、イラン人、パキスタン人、アフガニスタン人には、クウェートの訪問、観光、商用いずれのビザも発行されなくなる。アメリカがイスラム教徒が多い7カ国に制限をかけた翌日に分かったニュースだ」と書いている。
3. クウェート外務省はこれを否定
だが、クウェート外務省は禁止を明白に否定した。
国営メディアのクウェート・ニュース・エージェンシー(KUNA)は「きっぱりと否定する。こうした報道されている国籍の人たちはクウェートに大きなコミュニティを作っており、完全な権利が保障される」という外務大臣補佐官の声明を伝えた。
ビザが発給停止されるとされたパキスタン側もこれ否定した。在クウェートのパキスタン大使は、同国のテレビ局Geo Newsに対して、この報道は「根拠がない」と話している。
だが、アル・バワバは6日現在、記事を訂正していない。トランプ大統領も投稿は取り下げていない。
4. スプートニクは訂正記事
ロシア系メディアのスプートニクも2日、アル・バワバと同様の内容を伝えた。だが翌日に「事実ではないと判明した」として、訂正している。
6. ブライトバートも引用
トランプ大統領が投稿した「アル・バワバ」の記事を引用し、アメリカ国内で拡散させたメディアがあった。ブライトバート・ニュースで、訂正は出していない。
ブライトバート・ニュースは、大統領選でトランプ氏を支持した右翼メディア。同社の元会長スティーブ・バノン氏はトランプ大統領の首席戦略官・上級顧問を務める。安全保障戦略を練る国家安全保障会議(NSC)のメンバーでもある。
7. サイトを駆け巡る偽ニュース
ブライトバートの記事は、複数の偽ニュースを引用している。「アル・バワバ」のほか、後に訂正された「スプートニク」の記事も孫引用していた。こんな経路だ。
ブライトバート←インドメディア「インド・アジアン・ニュース・サービス(IANS)」←スプートニク
ブライトバート・ニュースは「クウェートは『イスラム過激派テロリストの移住の可能性』を懸念している」と伝えた。これは、IANSの報道を引用したものだ。
だが、IANSはこれを「スプートニクの報道に拠った記事だった。事実ではなかったことが判明した」として訂正している。
8. そもそもトランプ大統領が偽ニュースを引用したことは、カナダ紙トロント・スターのダニエル・デール記者がTwitterで指摘して、話題になった。
Obscure websites published a fake story that Kuwait was copying Trump's ban. The president Facebooked it, got 67,00… https://t.co/JXXgrVQAOL
— Daniel Dale (@ddale8)
BuzzFeed Newsは在米と在日のクウェート大使館、クウェート国連代表部に照会し、返答を待っている。ホワイトハウスにもコメントを求めており、返答があり次第更新する。