1月20日、ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に就任した。その就任式で行われた恒例の演説をめぐって賛否が分かれている。
「白人の素直な気持ちを代弁している」という声もあれば、「これまでの演説と同じで新味がない」という意見もある。果たして、この演説をどう評価するのが正しいのか。
筆者は、トランプ氏の演説は「アメリカ第一主義」をコンセプトにした、非常にわかりやすい演説だったと評価している。使っている英語も小学生でも理解可能な平易さで、「泡沫候補」と言われながらも「プロ」の政治家を破ってきたトランプ大統領らしい。
以前オバマ氏のスピーチが英語教材として発売され人気を博したが、トランプ大統領の就任演説も日本の学生の英語教材に使ってもいいのではないか。
では彼の演説にケチをつけているのは誰かというと、マスコミを含めたインテリ層の人間だ。その理由は、トランプ大統領が彼らの地位を脅かしかねない存在だからだ。
これまでマスコミは、三権(行政・立法・司法)に次ぐ「第四の権力」と言われてきた。三権と国民をつなぐ役割を果たすため、国民に対して大きな影響を持つからだ。
ところが、トランプ大統領はツイッターなどのSNSを駆使して、直接国民と接する「新しい大統領」である。いまではマスコミ報道を見る前に、トランプ大統領のSNSを見て情報を得る人も少なくない。
これはマスコミにとってはまずい状況で、だからトランプ氏に対する批判を強めていると見ることもできる。
具体例を挙げよう。
トランプ大統領は、就任初日にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉を明言した。これに対して、マスコミ・インテリ層は、彼が経済学の「比較優位の原則(貿易というのは双方の国にメリットをもたらすとする貿易理論)」も知らずに言っていると、上から目線の批判をしている。
これはいくらなんでもトランプ大統領に失礼だ。彼のスタッフには、マスコミ・インテリ層以上に博識な人もいる。そもそも比較優位は確かに伝統的な貿易理論ではあるが、貿易理論はその後に発展を遂げており、'80年代の「新貿易理論」、現在ではそれを発展させた「新・新貿易理論」が主流なことをエリート・マスコミは知らないのではないか。
その「新・新貿易理論」の内容は、「貿易が双方の国にメリットをもたらす」という点では伝統的貿易理論と同じだが、「貿易依存が高まると、各国内で貿易関連企業と貿易非関連企業の間で格差が生じる」という点まで踏み込んでいるのが特徴だ。
そうした格差については政治的に解決せざるを得なくなるという意味では、「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領の経済政策もこの「新・新貿易理論」を踏まえており、意外とまともであるとわかってくる。
そもそも、トランプ大統領の言うことは、彼が得意の「ディール(取引)」に持ち込もうとしているだけ。トランプ大統領就任演説をよく聞けば、「とにかくオレに任せてアメリカ第一主義で交渉させよ」と言っているだけに過ぎない。
不満なら、アメリカ国民は4年後の選挙で落とせばいいだけだ。
『週刊現代』2017年2月11日号より