米入国禁止の大統領令 国民の間で賛否わかれる

米入国禁止の大統領令 国民の間で賛否わかれる
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アメリカのトランプ大統領が中東やアフリカの7か国の人の入国を一時的に禁止したことなどについて、ロイター通信は最新の世論調査で49%の人が賛成、41%の人が反対と答え、国民の間で賛否がわかれていると伝えました。
アメリカのトランプ大統領は、先月27日、大統領令に署名して、中東やアフリカの7か国の人の入国を一時的に禁止し、すべての国からの難民の受け入れを一時的に停止するよう命じました。

これについて、ロイター通信は、30日と31日、全米でおよそ1200人を対象にインターネットでの世論調査を行いました。

それによりますと、「強く賛成」、「どちらかというと賛成」と答えた人は49%で、「強く反対」、「どちらかというと反対」と答えた人は41%でした。

ロイター通信は「大統領令の内容は、大統領が選挙戦の時から約束していたものだが、国民の支持は鋭く割れている」と伝えています。

また、与党・共和党の支持者は51%が大統領令を「強く支持する」と答えたのに対し、野党・民主党の支持者は53%が「強く反対する」と答えていて、支持する政党によって意見が明確にわかれています。

一方、今回の大統領令によって、31%の人が「より安全になる」と答えたのに対し、26%の人が「より危険を感じる」と答え、効果についての見方もわかれています。

慶應大学の渡辺靖教授は「アメリカで起きている抗議デモなどを考えると49%が賛成というのは意外だが、調査のやり方に問題がないとすれば、自国の安全に対するアメリカ国民の憂慮の現れではないか」と話しました。

意見の対立 激しさ増す

アメリカのトランプ大統領が大統領令で中東やアフリカの7か国の人の入国を一時的に禁止したことなどをめぐっては、全米各地で抗議活動が起きていますが、アメリカのメディアは31日、国務省の外交官ら職員およそ1000人が大統領令を批判する意見書を国務省に提出したと伝えました。

これは政権に異議を申し立てる内部制度を利用したもので、有力紙のニューヨーク・タイムズは31日の電子版で、「過去最大級の政府職員の抗議行動の1つだ」と伝えています。

一方、大統領令を支持する動きも出ていて、世界各地で1万人の難民を雇用すると発表したアメリカの大手コーヒーチェーン、スターバックスに対してツイッター上で、「アメリカの安全を第一に考えるべきだ」とか、「代わりにアメリカ人を雇うべきだ」などと批判する書き込みが相次ぎ不買運動が呼びかけられるなど、大統領令をめぐりアメリカ国内では意見の対立が激しさを増しています。

入国禁止を支持する声も

トランプ大統領が中東やアフリカの7か国の人の入国を一時的に禁止する大統領令を出したことについて各地で抗議の声が広がっていますが、アメリカ国内では支持する声も聞かれます。

フロリダ州に住む男性は「トランプ大統領はやらなければいけないことをやる必要がある」と話し、大統領令に賛成する考えを示しました。
別の男性は、「悪いイスラム教徒とよいイスラム教徒を区別する入国審査が機能していないので、すべてのイスラム教徒を入国させるべきではない」と話していました。
さらに、別の男性も「なぜ中東と同じ状況を生み出すようなことをしなければならないのか。イスラム教徒はもうたくさんだ」と話していました。

ルビオ上院議員「準備、入念に行われず」

アメリカのトランプ大統領が中東やアフリカの7か国の人の入国を一時的に禁止し混乱が広がっていることについて、去年の大統領選挙でトランプ氏と争った共和党の候補者の1人、マルコ・ルビオ上院議員は、31日、NHKの取材に対し「準備が念入りに行われていなかった」と述べ、トランプ政権の準備不足を指摘しました。

一方で、ルビオ氏は「大統領令自体は正当な側面もある。理由は、世界の中にはしっかりした政府がないために、危険な人たちを審査できない国もあるからだ」と述べ、大統領の方針自体には理解を示しました。

そして、「混乱をもたらさず同盟国との関係を壊さないでもアメリカの安全を保つ方法はあるはずだ」としたうえで、「大統領令がきちんとした方法で実施されていくことを望む」と述べ、トランプ政権に対してアメリカ国民と世界の人たちが疑問に感じる点について明確な方針を示すよう求めていく考えを強調しました。

専門家「国難に対処するとき大統領の力が強くなる傾向」

アメリカのトランプ大統領が中東やアフリカの7か国の人の入国を一時的に禁止したのは「憲法違反だ」としてアメリカ国内で提訴する動きが相次いでいることについて、アメリカの憲法の歴史に詳しい同志社大学の阿川尚之特別客員教授は「アメリカの憲法には、国家に対して国民への人権侵害や圧政を防ぐという立憲主義の考え方がある一方で、州を統合するために大統領に強大な権限を与えているという二面性がある。安全や秩序を守りながらどこまで自由を認めるのかはアメリカの建国以来の悩みだ」と指摘しています。

そのうえで、阿川氏は「南北戦争や第二次世界大戦、大恐慌など国難に対処するときは大統領の力が強くなる傾向にあり、強大な権限の行使が問題になったのはトランプ大統領だけではない。今回のケースでトランプ大統領が主張しているのは『テロと戦う』ための必要性だが、アメリカが憲法の下で個人の人権を守ろうと長年、築き上げてきたものと『テロとの戦い』が今、どの程度の危機にあるかということのバランスの中で今回の施策が正しいのかどうかが問題になると思う」と話しています。