「昭和の絵師」と呼ばれた男。
上村一夫(1940 - 1986)神奈川県横須賀市生まれ。武蔵野美術大学デザイン科卒業。
イラストレーター出身で、漫画の世界で大成功をおさめた恐らく唯一の人。
女性像の追求と劇画風タッチの絵は、一度見たら絶対に忘れられないと思う。
私が上村一夫という存在を知ったのは中学生のころで、男性向け雑誌の表紙を通してのことだった。本屋の雑誌コーナーに並ぶ『平凡パンチ』や『週刊プレイボーイ』『ビッグコミック』といった雑誌の顔として君臨しているふうだった。
それは大人のエロティシズムの世界であり、中学生として覗いてはいけない世界であった。
大人になっても、そしてもともとあまり漫画は読まないこともあって、相変わらず縁遠い人だった。45歳という若さで亡くなったのだが、闘病生活や死去のことは、フランスに住んでいたため全く知らなかった。
TVの「寺内貫太郎一家パート2」にレギュラー出演していたらしいが、「パート2」のほうは既に大学生になり時間もなくて、一度も見たことがなかった。(映画『津軽じょんがら節』1973年にも出ていたとか。みなさん、ご存じ?)
あれから20年余りを経て、この人の名前を再び耳にすることになる。それもフランスを通して。作品は数年前から次々とフランス語翻訳されて、コアなファンがついているようだ。
フランス人はとにかく絵がうまい人でないと評価しない。上村一夫は文句なしだったが、それにもまして上村だけが持つ独特の世界に、フランス人は惚れ込んだようだ。
昭和の女
特に出版元のKANA社(*1)のクリステルさん(下の写真*2)は大ファンであるらしい。
以前にも書いたことが、この出版社は「ナルト」と「デスノート」で華々しい成功をおさめ、そこからの儲けを他に回しているのではないかと思っている。つまり商業路線に乗らずとも自分たちが本当にいいと思うものを世に送り出しているのだ。
こうの史代の『この世界の片隅に』もそうだし、広島原爆後の市民を描いた、同作家の『夕凪の街 桜の国』も2年後にはもうフランス語に翻訳された。編集部のただならぬ熱意を感じる。
*1.KANA出版 http://cenecio.hatenablog.com/entry/2016/02/20/000000
*2.Christel Hoolans http://cenecio.hatenablog.com/entry/2016/10/19/152623
そして、このたびアングレーム国際漫画祭( Festival international de la bande dessinée d'Angoulême、詳しくはこちら↓)
文化侵略からオタク文化の受容まで -3- 日本アニメ育ちが吹き込む新風KI-oon(キューン) - ベルギーの密かな愉しみ België-fan
で 上村一夫はPRIX DU PATRIMOINE(遺産賞)に輝いた。これは長年の偉大なる功績を称え、遺産として後世に残しておくべき作家と作品に与えられる。
( 下の写真右から2冊目)
(左から3冊目も見ておいてね。あとで出ます)
44e Festival de la Bande Dessinée d'Angoulême – Du 26 au 29 janvier 2017 - Palmarès officiel 2017
作品として「離婚倶楽部」が選ばれている。
喜びの受賞!クリステルさんのツイート。写真中央の人です。
同時に、アングレーム国際漫画祭ではただ今「上村一夫原画展」を開催している。
下はフランスのTV局ARTEで、上村一夫原画展の紹介をしているところ。
ちなみにイタリアでは、2016年10月に回顧展が開催されている。
Une rétrospective de Kazuo Kamimura à Angoulême ! | Kana
このような原画です。(上記サイトから借りています)
上村一夫の受賞は、フランス・ベルギーなどでは大反響で、歓喜や賞賛やら感謝(立役者のクリステルさんに向けられたものも多かった)のツイートがあふれた。
ツイートの絵があまりに美しいので並べてみる。
うっとりしますね。
今日は時間がなくて作品には触れられない。報告だけです。
もうひとつ凄かったのがこちら「シリーズ賞」に輝いた
望月ミネタロウ氏の 『ちいさこべえ』
シリーズ賞といってもピンとこないかもしれないが、主要な賞の一つで、日本人がこの種の賞をもらったのは、2004年の『20世紀少年』(浦沢直樹)にまでさかのぼる。
写真のデュヴァル氏がやっている老舗出版社から出ている。
http://www.bodoi.info/chiisakobe-prix-asie-acbd-2016/
といっても私は未読どころか、今回初めて作家さんと作品を知り、調べてみると非常におもしろそうなのでぜひ読んでみたいと思っている。
山本周五郎の小説『ちいさこべ』を下敷きにしたマンガで、主人公は大工の棟梁だという。きっとみなさんのなかにはよくご存じのかたもいらっしゃると思う。マンガに詳しいさぴこさんに聞いてみよう。
ちょっと驚いたのはフランスのリベラシオン紙の表紙を飾ったことである。

わあ~、(@_@)びっくり。
はてなブログでは、こちらの素音異空さまが
漫画家の望月ミネタロウさんの魅力についてお書きになっている。
紹介させていただきます。
callmesnake1997.hatenablog.com
とりあえず駆け足で、世界最大の漫画祭における、日本人受賞者だけを取り上げました。今日は終わります。