難民らの入国を制限する米大統領令に抗議する人々=米東部ボストンで29日、AP
【ワシントン西田進一郎】イスラム教徒が多い中東・アフリカの7カ国からの入国一時停止などを決めた米大統領令に抗議するデモ集会は29日も首都ワシントンなど全米30都市以上であり、米メディアによると少なくとも数万人が参加した。トランプ大統領は同日の声明で大統領令の正当性を改めて主張したが、ニューヨークなど全米15州とコロンビア特別区(首都ワシントン)の司法長官らが、信仰の自由を侵害し「憲法違反」と非難する共同声明を発表。大統領令の合憲性を問う動きも活発化した。
27日に署名された大統領令を受け、米国内の空港では入国を拒否されたり、拘束されたりした人が109人に達した。プリーバス大統領首席補佐官は29日朝のテレビ番組で、「109人のほとんどは解放され、まだ拘束中なのは数十人だ」と語り、問題がなければ半日程度で審査が終わると説明した。
一方、米メディアは国土安全保障当局者の話として、米国へ向かう飛行機に乗ろうとした乗客計173人が世界各地の空港で搭乗を拒否されたと報道。大統領令で、計280人以上がいったん拘束されたり、飛行機への搭乗を拒否されたりしたことになる。
トランプ氏は29日の声明で「テロ(防止)と国を安全に保つためのものだ」と主張。対象の7カ国はオバマ前政権がテロの源泉と特定した国々で、他に40カ国以上のイスラム教徒が多数を占める国々は大統領令の影響を受けないことを根拠に、「メディアが間違って伝えているような『イスラム教徒の入国禁止』ではない」と反論した。一時停止期間(90日間)中に入国審査を見直し、最も高い安全性が確立されたと確認できれば、再び査証を発給することも説明した。
また、コンウェー大統領顧問はテレビ番組で、28日の海外から米国への入国者は約32万5000人で、入国・搭乗を拒否された人は約300人だったことに触れ、「1%にすぎない。米国の国境と国民をより強く守る観点からすれば、小さい犠牲だ」と語った。
一方で、司法長官らの共同声明は「信仰の自由は米国の根本的原則であり、どの大統領も変えることができない」と指摘。訴訟を念頭に「安全保障と価値を守るために闘う」と宣言した。
野党・民主党は大統領令を覆すための立法措置を検討し、与党・共和党からも懸念の声が出ている。マケイン上院軍事委員長とグラム上院議員は共同声明で、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで、7カ国に含まれるイラクなどと協力する重要性を強調。大統領令はこれらの国々に間違ったメッセージを送り、「米国の安全を高めるよりも、テロリストの勧誘活動を助けることになることを恐れる」と警告した。