西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は今月、西アフリカのガンビアを包囲するために軍隊を派遣した。不当に居座っていたジャメ大統領を権力の座から追うことを目指す派兵で、最終的に成功を収めた。だが、そもそも経済的な組織が兵士を派遣して、いったい何をしていたのか。これはまるで国際通貨基金(IMF)が北朝鮮に砲艦を派遣することを決めたようなものだ。
ECOWASはかねて、元来の使命である地域統合よりも平和と安全の確保を得意としてきた。1975年に創設された同組織が掲げる目標は、加盟国による単一貿易圏の創設によって「集団的な自給自足」を達成することだ。
この目標については、ECOWASは失敗した。創設から40年以上たった今、市民は加盟国の間を自由に行き来できるにもかかわらず、加盟15カ国の相互貿易はごくわずかだ。開発機関の米国際開発局(USAID)によると、ECOWAS諸国からほかのECOWAS諸国に向かう輸出は全体の12%に満たない(非公式な越境貿易を除く)。これに対し、欧州連合(EU)の場合は60%を超えている。
ECOWASの巨人ナイジェリアの経済的な弱点を考えると、越境貿易の低さは決して意外ではない。ナイジェリア経済は、2番目に大きい加盟国ガーナの規模の約10倍だ。そのナイジェリアは、石油を輸出し、石油以外のほぼすべてを輸入するという誤った政策を追求してきた。自給自足どころか、ほぼ完全に原油の産出に依存し、原油輸出が外貨収入の90%以上を占めている。
ナイジェリアのような莫大な石油埋蔵量には恵まれていないものの、大半のECOWAS加盟国――コカ葉からヤシ油、金、鉄鉱石まであらゆるものを輸出している国々――は程度の差こそあれ、大ざっぱに同じやり方をなぞっている。世界最大のゴム生産国の一つに数えられるリベリアは、タイヤを1本も作ったことがない。
■民主主義のプロセスに一助
貿易にほとんど見込みがないことから、ECOWASは安全保障に目を向けた。1999年に紛争予防に関する規約に署名し、2001年にはグッドガバナンス(良い統治)と民主主義に関する規約に調印した。最初にリベリア、次にシエラレオネが内戦に陥ったことに後押しされ、これらの規約はただの大風呂敷以上の効果を発揮した。
実績は完璧とはほど遠いものの、ECOWASはクーデターがかつてまん延していた地域において、独裁者が入り込む余地をゆっくりとせばめていった。ほとんど気づかれない間に、任期の制限と民主的な政権移行が多かれ少なかれ標準になった。ECOWASが推し進めたプロセスは、2015年、ナイジェリアが独立以来初めて文民的な政権移譲をなし遂げたときに集大成を見た。