常々言っていることだが、食べ物の見た目というのは確かに味わいの一部であるとは思うが、かといって見た目が原因で食べられないというのは大変勿体無いことだ。
それは見た目さえ誤魔化されていれば毒物や食品でないものでさえ騙されて口にして気付かないことにも繋がる。
まぁ、そこまではなくとも、普段食べているものの原材料をどれだけ正確に想像できるだろうか。その姿を知った途端に食べられなくなる人もいるが、それってどうなの?
それらの例とはまた違って、別の要素を理由に浸透しない印象があるものもある。
「中国や韓国ってマジなんでも食うよな」
なんてのもそのひとつじゃないかと思う。だいたいそういう声って口にする気もないものに対して発せられることが多い印象。
国による食文化の違いは食べもせず受け入れられない人も多いが、食品アレルギーや特殊な食材に対する消化酵素を持っていない等々の理由でもなければ、食べる気もなく貶めるというのは品性を疑う。スカトロとかはちょっと別だけど。
前置きが長くなったけど、そんな中のひとつなんじゃないかと感じるのが今回のヌタウナギ。
どうしても話題になりがちなところから定着しやすいものなので、この魚は韓国料理のイメージが強い人も多いのではないでしょうか。でも実は日本でも一部で食べられている。
深海性の生物ではあるけれど、わりと浅いところにもいることがあるようで場所によってはいくらでも釣れる。
というか、嫌われていることが多い。理由はわかるんだけれども、そんな訳で釣ってきた。
ヌタウナギはウナギという名を冠してはいるものの、細長い形状以外はウナギでもなんでもなく、それどころか厳密には魚類でもないという考え方もある生物。無顎類という分類で、その名の通り顎がない。それどころか骨もなく、骨っぽいものは背骨が生まれる原形といわれる脊索で、軟骨魚類のそれよりも更に原始的なもの。
外観だけはなんとなくウナギっぽく魚っぽいだけで、魚類にしてよいのか専門家の中でも意見が分かれる立場のようだが、大抵の魚類図鑑に掲載されている特殊な生物だ。
最近は鉄腕DASHで取り扱われたり、平坂さんが食べてたりして更に知名度が上がっている気がするが、TOKIOや平坂さんなら仕方がないねと言えてしまうのがなんかすごい。
「私ぬめらぎまとい」
9割方こんな状態で上がってくるのでメチャクチャ重い。
ぬめりといえばぬめりなのだが、どちらかといえば巨大な痰みたいな弾力感があり、引きちぎるように取り除く。
だいたい仕掛けもダメになるので、他の魚を狙っている釣人から嫌われるのはわからんでもない。
元気なうちは警戒すると次々にぬめりの素を分泌するので、バケツに入れてもすぐにぬめりの塊が出現してしまう。
ちなみにこのヌメリ、そのまま食べると生牡蠣を割った時の殻に溜まった海水の味がする。
この塊を密封して凍らせればアイス○ンとか作れそう。
かなりの強度があるので自分の発したぬめりで身動きがとれなくなるし、ぬめりを持ち上げるだけで全部ついてくるほどだ。
もはやぬめりという既存のものではない、他の何かだ。だからヌタと呼ぶことにする。
これのせいで英語ではSlime eel(スライムイール)とも呼ばれる。
しかもこのヌタ、なんとなくしつこくくっついてくる感じがする。
見た目はとても・・・アレである。
このヌタはムチンという物質が水分を取り込むことでできているらしい。
一口にムチンといってもそのコアタンパクには様々な種類があるらしく、人の粘膜や納豆の粘りなどそれぞれが違った特徴をもつと考えていい。
ヌタウナギのそれはヌタ腺から分泌されると急速に海水と反応、吸収して強烈なヌタとなり防御に一役買っている。
重さに耐えきれず2回ほど抜き上げで切れたのだが、ヌタウナギ自身もヌタから抜け出せなくなっていたので塊ごと掬って回収した。身に余るほどの制御しきれない能力というのも考え物だ。
とりあえず今回は21匹釣れました。サイズはバラバラで30~58cm。
いちいち仕掛けがダメになるのと効率化の為、予備の鈎を多く準備しておくのがコツですね。
ドジョウのような、両生類のような、ミミズのような、なんともいえない顔。
目は無いので昔はメクラウナギだったが名前狩りでヌタウナギになった経緯があるが、釣れておとなしくなったものに強い光を当てると暴れだすので光は感知できているっぽい。
口には顎がありません。
ちょっとナメクジとか巻貝の顔っぽくもありますが・・・
キシャーッ
顎は無いんだけど、内側から横に開くように歯が飛び出てきます。
2回ほど吸い付くようにギョリッと噛まれました。かわいいですね。
もうわかると思いますが、前にある穴は口ではなく鼻です。
バカボンの本官さんのように穴がひとつですね。
横から見ると鰓穴は随分と後ろからはじまっており、その前後にヌタ腺が側線のように並んでいるのがわかります。
そして指差しているところ、肛門がめちゃくちゃ後ろにある。触るとわかるけど、全体に骨っぽさは皆無。
絞るように糞を出すことができるんだけど、しごいてて物凄く違和感がある。
頭を落とし、皮を剥く。
ヌタ腺が皮に付いてスポポポポポンと抜けるのが気持ちいいが、人によってはニキビとか思い出してダメかもしれない。
スポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ
内臓のつくりも独特で面白い。
かなり後ろまで続く腸はブヨブヨで大きく1本の管。
肝臓らしきものは普通っぽいが、その直前に鰓が並び、食道が口へ繋がる。
ただ、その食道の下にある筋肉の塊みたいなの何なの?
普通の身のほうは見た目だけヘビっぽいけど骨感なし。
意味不明なのはやっぱり口から鰓あたりまでにあるよくわからない筋肉の器官。
美味しそうではあるが。
しかしこれ、5匹程度なら何も問題はないのだが、たくさんあると地味に大変。
とにかくヌメリが凄く、皮の一部を残して引っ張っても千切れるし、皮の剥きはじめを掴むのがちょっと苦労する。
手間取って頻繁に手を洗うとヌタの素が水道水を吸って巨大化し、いちいち配水管を詰まらせる。
どうしたらいいかなーといくつか試してみた結果、鉗子が最高!
箪笥の肥やしになっている解剖セットがある人は是非使おう。
釣りやってる人ならフォーセップも基本は同じものなので使える。
2本使って皮と脊索を摘んで引っ張ると見事にズビャーッと剥けて一瞬で終わる。
楽すぎて3本干した以外はうっかり全部一気に剥いてしまった。
ビャーッと剥いたら脊索を掴んだほうの鉗子はそのままに腹に刃を入れれば一気に開け、内臓も一瞬で取り出せる。
結構な割合で飲み込んだ鈎が肝臓の近辺まできていたので注意して取り除きたい。
サイズの揃ったところを野食会食材の保険に少し冷凍しておきましょうか。
喉にあった筋肉だけでも結構ある。
いくつかの調理で食べてみてからどうするべきか考えよう。
とりあえず、韓国料理での消費量が世界一っぽいのでそれっぽい味付けで食べてみようか。
せっかくなのでコチュジャンをベースに緩く炒めて丼にしてみた。
うまい。
ホルモンやミノのような弾力を感じるが、もっちりしつつも軽い歯切れ。
しかも脊索が絶妙に食べ頃サイズの軟骨のように心地よくコリッとくる。
食べ応えはあるのに御飯と合わせても勝ちすぎない食感は面白く良いものだ。
タウナギだとよほどしっかり煮ないと強すぎてしまうのだが、ヌタウナギは簡単に熱を通しただけで優しい。
というかこれは食味からも魚じゃない。
しかし味が強すぎて、ヌタウナギの食感だけしか生かせていないような気がしてしまう。
もっとシンプルに食べていこう。
左から
・唐揚げ(片栗粉のみ)
・唐揚げ(醤油・片栗粉)
・天麩羅(天麩羅粉のみ)
唐揚げというとなんでもかんでも唐揚げ粉を使う人がいるが、私は最小限の調味料と片栗粉派。
魚はそれぞれの風味が揚げることで化けることが多くあり、繊細な食材に対する唐揚げ粉なんてのは味を均一に塗り潰すものだからだ。
特にこのヌタウナギについては驚くべき結果になる。
味つけしていないのに塩味がする。
それも単純な塩化ナトリウムの味じゃない。塩化カリウムだろうか。それとも何か他にいろいろ含んでいるんだろうか。モチモチぷりぷりコリコリとした食感に加えて、とても複雑なしょっぱさと旨味のバランスが良い。
片栗粉だけでちょうど良い味になるので、下味に何か使うならば香辛料だけにしておくのが良いだろう。
言うなれば、生きながらにして調味済みの生物だ。ちょっと普通の魚類にはない素材の特徴といえる。
醤油だけで軽く下味をつけたものもまた深い味になったが、これちょっとでも漬け込みすぎると味が濃すぎになるだろう。
唐揚げ粉は不要だね。

天麩羅に関しては衣がジューシーさを閉じ込めるが、なんとも不思議食感になってこれは人それぞれ感想が分かれそう。
味自体は同様にそのまま何もつけずに楽しめる。
ただ、試しに揚げてみたこの食道近辺にあった肥大した筋肉なのだが
そうきますか・・・
そっち向きの筋肉だとは思わなかったよ。
想像していた歯切れと全く違って困惑。もっとジョキッとかザクッとかくるもんだと思っていたが歯切れの方向に繊維が走っているので見た目ほど強くない。マジで何にどう使っているのか謎器官だな。位置的にあれか?鰓穴に水流を送る為に伸縮させる感じか?それとも飲み込んだエサを後ろに送る・・・にしては食道と分離している意味がわからんな。
ともかく、これはどうしたらいちばんいいんだろうか。とりあえず干すか?
次々いってみよー
ヌタウナギのヌタを使わないぬた。
なんかモチモチコリコリ感がイカの頭近辺で作ったような感じもしないでもない。
左が洗いで、右が刺身。
噛 み 切 れ ね ぇ www
氷水で締めてもパリッとすることもなく、どちらもクタクタなのに噛み切れない強靭な弾力。
噛んでいると旨味が滲み出てくるのだが、飲み込み時がわからない。
子宮刺しを思い出す。
平坂さんが寿司で失敗っぽいこと言ってたけど、あれは確かに無理だわ。
シャリと喧嘩どころの話じゃない。シャリを蹴散らすわ。
だからDP-Zで失敗の寿司に対する成功例としてあった軍艦を試してみる。
のどごし生。
わさび醤油ジュレと紅葉おろしポン酢の2つ試してみた。これは確かにアリだ。
見た目はネギトロみたいだがあんなふうに口で溶ける感じはなく、噛むとコリコリと響きつつも穏やかな旨味を纏って滑らかに喉を過ぎていく。
これは一品としてあってもいいと思う。
「棒あなご」も作ってみた。
実際どうやって作るのかは知らないが、塩分を感じるのでそのまま干せばいいだろう。
内臓を切り出したものと、手で糞を絞っただけのものと2通り作ってみたがどっちでも良い感じだ。
鈎を飲んでいるか否かで処理を決めてしまっていいような気がする。
2日干したものを切って焼く。
ただそれだけ。
焼いたら半分近く縮んでしまった。
味濃ーーーっ!!!
「棒あなご」は秋田や山形で食べられてきたもので主にクロヌタウナギを使うものらしいが、韓国のヌタウナギはアメリカから輸入された別種のヌタウナギも一緒くたに扱われているらしいのでみんな似たような味なんじゃないだろうか。
いやはや、皮も剥かずそのまま干して焼くだけでこんなに味が濃くて旨いのなら、手間がかからず酒のアテに最高だろう。
気をつけないといけないのは、皮がめちゃくちゃ焦げ易いことくらいか。
軍艦の時にミンチ化したが、加熱用にミンチ化してもかなりよかった。
チタタプチタタプ言いながらひたすら刻む。
これ自体に塩っぽい味があるので、つなぎには片栗粉を少しだけ加えて団子に。
湯を沸かし、ほんの少しだけ湯に塩を入れてネギを煮る。
春に採って乾燥しておいたプクサキナことニリンソウを適当なサイズに刻んで加える。
水分を吸って戻ってきたら、ヌタウナギ団子を入れて煮立たせる。
ヌタウナギの素焼きと共にいただきます。
上のは皮付きの頭です。
コンロぶっこわれて直バーナーで焼いたので見た目酷いですが。
やっぱ頭も全部コリコリ食べられる。
この魚、捨てるところめっちゃ少ないよ。
剥いた皮だってイールスキンの原材料だし。
あれ、イールといってもウナギの皮でなくてヌタウナギの皮ですからね。
見た目ヘビっぽいのに、食感や満足感が雲泥の差。
ただ焼くだけだと強めのササミみたいな感じだけど、やはり旨味は強いし明確な塩味と脊索の歯応えがササミとは別格の食べ応えを生み出している。
何度も言うが、何も味付けしてなくてこの味の濃さはなんなんだ。
お待ちかね、ヌタウナギのオハウ。
これ完全に肉だわ。
何の肉かって聞かれても難しいけど、魚類感全くなし。知らずに食べたら魚だとわからないんじゃないか。魚でもないけど。
例によって団子に塩を加えなかったのに独特の塩分を感じるし、適度に刻まれた脊索がコリコリ、ミンチ状の筋肉は粒毎にプリップリと口の中で弾む。
スープは味付けに使った塩とヌタウナギから出る旨味と不思議な塩味にニリンソウの独特の風味があいまって、これは旨い。
ピリカ。ケラピリカ。
かなり出汁が出るので、シンプルに味噌汁にもしてみた。
うっかり干したもの以外全部の皮を剥いてしまったので、皮も別に刻んで入れてみたが、皮もトロトロになっていて臭味もない。
左端にあるのは頭なんだが、頭も丸ごと食べられる。
身はモッチモチ、脊索はやっぱり心地よくコリコリギョリギョリ。
そして、味噌以外に出汁を使わなかったのにネギとヌタウナギだけでこんなに旨い出汁がまとまるなんて。
マジでこれ、釣ってきてブツ切りにして入れるだけでいいじゃないか。
食卓でヌタウナギを嫌う意味がわからない。
他にも干したり煮たりといろいろ試してみて、いちばん意外性があったのが焼きソバ。
正直、どうでもいい結果になるんじゃないかと思って期待してなかったので、あえてのソース焼きソバ。
皮を剥いて1日干した半渇きのものを脊索ごとスライスして肉の代わりに使っただけなので見た目は本当にタダの焼きソバなんだが・・・
ヌタウナギが豚コマになった。
いや、正確には脊索の食感があるから豚コマと鶏軟骨を合わせたような感じか。
豚の脂の甘さこそないものの、何故かしょっぱかったはずのヌタウナギの味がソースの強さのおかげで逆に甘味に感じ、風味も食感も不思議にめちゃくちゃ豚っぽい。しかも豚臭さがないだけ安物の豚よりずっと美味いんじゃないかコレ。
よく見ると麺じゃなくて脊索の中の神経がニョロッと出てきているので普通の肉でないことはわかると思う。麺と共に食べている時の噛み応えといい、ふわりと口に広がる肉っぽい香りといい、まさに肉。6mm前後の厚さで斜めに広くスライスするとよりソレっぽくなる。
これだけ肉っぽくなるとなれば、やはり肉の代用としていろいろ調理法を模索してもよさそうだ。河口湖で使えるローカルなポークルアーにぶたうなぎってのがあるが、ヌタウナギは正真正銘の豚ウナギだな。
あとはヌタだよなぁ。
この側線みたいに並んでいる穴にヌタ腺があるんだけど、
元気なうちは警戒すると乳液のようなものを出す。
これがヌタの素なんだけど、実は海水でなくても激しく吸水する。だから紙オムツや砂漠緑化に使えるなどという研究が進むのも頷ける。
ただこれ、元気な状態でないと効果の高いものが分泌されないのが面倒なところ。
ヌタ自体は乾燥させると白い繊維状のペラペラの物体になるのだが、死んでしばらくするとヌタ腺が機能しないのでそういう形状にももっていけない。つまり合成するでなく大量に入手しようと思ったら、ヌタウナギが元気なうちにいじめて水に漬けずに搾り取るという鬼の所業が必要になるのだ。
なにそれひどい。
そんな訳で今回は軽く触りだけ。
カップに入れた一滴程度のヌタの素とミルクティー。
ミルクティーを注いで混ぜて出来上がり pic.twitter.com/g5Kcgt4lKq
— ざざむし。の人 (@nekton27) 2017年1月22日
新食感ウボァ pic.twitter.com/tA6VXRj1iz
— ざざむし。の人 (@nekton27) 2017年1月22日
タピオカとかバジルシードみたいに、満腹感を誘発しつつ面白い歯触りのものになる兆はないものかと思ったんですが
もうね。バッカじゃねーの。
味はただのミルクティーなんだけど、新食感すぎて時代が永久についてこないよ。
柔らかくて噛み切れるんだけど、変なゆるい弾力があって気持ち悪い噛み切れ方をする・・・要するにスーパー鼻水だ。
だがミルクティー。
クソ重いミルクティー。
これはひどい。
ミズウオから出てくる水分を吸わせたら完璧な強化鼻水を量産できそうだ。
ちょっと液体のまま使うには向いてなさそうなので、今後のヌタは凍らせてみる方向と、乾燥させたものをいかに使うかで道を探ってみたい。
ヌタの食材用途についてはまだまだ研究の余地があるとしても、加熱調理に関しては本当に簡単で美味しいので、見た目や文化の先入観で食べないなどというのは勿体無い。
どうしても鈎を飲んでしまうことが多いので、釣れたら外そうとして弱らせてしまうことがあるだろう。
そんな時は無下に捨てず食べてみてほしい。
とりあえず味付けいらないから。









































とろっとろのコーラとか味噌汁とかやって欲しい
炭酸は気泡が邪魔するのかなんかうまくいかない。
味噌汁は多分固まると思うがナメコのヌメリの超強化Ver.になりそうな