大阪市阿倍野区にある日本一の超高層ビル「あべのハルカス」付近を通る道路「あべの筋」付近を歩いていると、阪堺電気軌道(阪堺電車)の旧軌道付近の工事がどんどん進められていることに気づいた。

寒空のもと阿倍野の阪堺・旧天王寺駅前駅と軌道跡

[写真]天王寺駅前駅付近。左側が2015年2月に撮影、右が2017年1月25日撮影

 昨年12月12日の当欄では、旧天王寺駅前駅の線路が撤去されていると記したが、同駅跡は一部コンクリート片が見られるが、ほぼ更地状態となり、新駅舎のハルカス側の壁もしっかり確認できるようになっていた。

 一方、南へ500メートルに位置する旧阿倍野停留場は、まだ形は残っているが、もちろん現在は使われていない。すぐ隣に真新しい屋根の付いた停留所が設置されており、比較するとなにか不思議な感じもする。

[写真]阿倍野停留所。手前の平らなものが旧停留所。ポールの駅名表示は味がある

 筆者がなにげに撮影していると、後方から「なに撮ってるのかな?あ、線路撤去してるんや」という通行人の声が多数聞かれた。つい1か月半ほど前までは電車が走っていて、すぐ隣の線路に移っただけなので、利用していない人にとってはすぐに気づかないかもしれない。

 阿倍野停留所前で写真を撮っていたら、近くに住むという70代の男性が「前に比べたら車と走るのも安全になったと思うよ。この平らな乗り場と別れるんは、なんか寂しい気もするけどな」と声をかけてきてくれた。そう、旧停留所は平らで、すぐ横を車が走るため、子供が勢いよく降りた時などは、親がヒヤヒヤする場面もよく見られたという。

[写真]新しい阿倍野停留所に車両が停車。手前はもうつかわれていない=25日午後、大阪市阿倍野区で

 そんな光景も今は昔、大阪で唯一のチン電は芝生が敷かれた新しい線路を走りながら、新たな歴史の一歩を日々刻んでいる。