『けものフレンズ』は2話目も確認した。1話と相変わらず見ているだけで不安になるCGが、吊橋を渡るようなスリル感と、ささやかなワクワク感を提供してくれている。おはなしも至極チャイルドな趣きだが、スリル感あふれる絵柄とのアンバランスさが、徐々にクセになっていく。そしてEDの謎の実写。あまりに常軌を逸した姿に、しばらく脳が停止した次第だ。
間違いなく今期で最もヤバく、かつ憎めない、愛らしい立ち位置を確保している。だが、それ以上に奇怪な事象が起きている。「けものフレンズ考察班」という、正気の程を疑う求道者の集団が、にわかに発生したのである。
だが、メディアミックス企画として散りばめられた諸要素を検討してみると、アニメ版の異様な姿は戦略的なものではないかと疑うほど、信じられないが考察の余地がある。この広大な大自然は、その実想像以上の謎に満ちている……のかもしれない。
とにもかくにも、ジャパリパークに考察者がワラワラ湧く光景だけでもおもしろい。おそらくめったに見られないムーブメントなのはたしかだ。その動向を記録するための最初の一歩として、けものフレンズ考察に関わるを記録しておく。
このアニメの効能について
もはや今さらだが、まだ『けものフレンズ』を見たことがない人もいるだろう。そんな視聴時の効能は、にゃるら氏(id:nyalra)のエントリーが的確な病状カルテとなっているので、視聴前に恐れている人は一読してみるといいだろう。
そう、最終的に「たのしー!」となる。そんな気分になれれば、このジャパリパークで生きる素養は身についたと言えよう。
原著調査
考察するには原著にふれるべし。しかしながら、けものフレンズはゲームがサービス終了してしまっている。オリジナルのシナリオに触れようにも触れられない……そんなもどかしい状況である。
しかし、時はインターネット時代。チュートリアルプレイ動画が見つかった。
他にもいくつかプレイ動画が見つかったが、気になったのは、チュートリアル開始時のムービーの一節。
あなたは忘れてしまうでしょう
ともに過ごした日々と私のことを……
私は忘れない。
あなたの声、温もり、笑顔……その優しく純粋な心
どれほどの時が経っても……
あなたが全てを忘れてしまっても……
私は決して忘れない
本当にありがとう
いつかまた、きっと私たちは出会えるから……
今は、さよなら……
(プレイヤー名)
これが本編メインシナリオにどう絡んできたのか、今となってはプレイヤーにしかわからないが、かのアニメ本編を見ているとギョッとさせられる導入である。
まぁゲーム動画を探し続けるのもそれは酷ではあるので、やはり手軽な史料はコミック版だろう。
けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐(1)<けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐> (角川コミックス・エース)
- 作者: フライ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2016/12/26
- メディア: Kindle版
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一節によれば、このコミック版も、ゲーム版とのつながりが示唆されているらしい。「ゲーム→コミック→アニメ」という順番も提示されているみたいだし、なによりアニメ新参たちを根こそぎ頭からぶん殴る光景が広がっている。
(『けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐(1)』P5)
これがジャパリパークの外観。そして、
(『けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐(1)』P8)
この背景に見えるのが内側の様子である。
そこには人間が存在し、整備の行き届いた「動物園」のような空間が広がっている。決して無秩序な、バスが打ち捨てられた大自然ではない。
そして、挙句の果てに「ビルが林立する区画」まで登場する。
(『けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐(1)』P26)
これらの史料から導かれているのが、「アニメ版けものフレンズは遠い未来の話」という仮説である。そして、それを与太話と断じるには、アニメ版の「荒廃した未来」感はあまりにも強すぎる。
原典プレイヤー視点の知見
そういった差異にいち早く気づくのは、やはり原典ゲームのプレイヤーである。すでに興味深い意見を投函されており、こちらを見れば不明な設定やゲーム等との差異が大方理解できる。
個人的に気になったのはサンドスターの設定。もともとは「空から降ってきた」というものだったが、アニメでは「山から噴出している」という差異がある。これを考え込むと、長い時間をかけてサンドスターが大地に蓄積、人間が絶滅後、大地から噴出されたサンドスターからのみ生物(=フレンズ)が誕生するように……という状況になっているのでは、とは考えている。
他にも、上記ブロマガには、原作ゲームが終了するまでの過程がつづられている。今後もアニメ版考察に期待したい。
EDに関する知見他(集合知)
2話にて初公開となったEDもやはり常軌を逸している。 この観覧車の画像はチェルノブイリのプリピャチ遊園地(※追記参照)とのことである。そんなものをシラフでED映像に持ってくる人間がいたら紛れもなく狂人である。
これ以外のEDカットの出自は、以下にまとまっている。考察班たちのツイートも散らばっているので、一読すると知見が得られるかもしれない。
[2017.01.24追記]
識者からご指摘をいただいた。
「けものフレンズ考察班」概況 - うらがみらいぶらり
最新の研究によれば、EDの観覧車はチェルノブイリではなくペルボウラリスクのものなので注意
2017/01/24 06:16
動物学的・進化論的知見
骨しゃぶり氏(id:honeshabri)のブレないアカデミック的なけものフレンズ論考。各キャラクターの動作に関しての強大な納得が得られる。
なお、かばんちゃんの「持久力」「投擲能力」にフォーカスしたのが1話だが、2話では人類の代表的「特徴」である「知恵」が描かれる。この描写は2話の見どころであり、「ホモ・サピエンスってこうして発展したんだぁ」と納得できる。
時に、いま話題の『サピエンス全史』は、けものフレンズ考察に役立つだろうか。
とりあえず、1月24日時点での目立つけものフレンズ考察知見は以上である。この他にも順次、興味深い考察班の知見を発見できたら追加していきたい。
一つだけ言えるのは、けものフレンズ考察は、描写などに対する宗教スレスレな妄想としての考察とはちがい、まるでアトランティスを探す冒険者のような心地になることだ。おそらく、メディアミックス作品が「過去と未来」という時間軸を見出だせることにより、さながら「未来」たるアニメを考察する過程が、史跡研究のような心地を感じさせるのだろう。
この大自然で、研究者たちはどのような答えを出すのか。その動向を見守りつつ、自分も気づいたことから考察を試みたい。ジャパリパークを集合知のフレンズとともに歩む、2017年の冬が始まる。