ついにドナルド・トランプが米大統領に就任した。
米国第一主義を掲げる彼の日本企業への介入も不安視されるなか、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、「日本の官僚たちはトランプのむちゃぶりをむしろ期待している」と分析する。その理由とは?
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トヨタを標的としたトランプ次期米大統領のツイートが猛威を振るっている。トランプ氏はトヨタがアメリカ向けカローラを生産する新工場の建設を、メキシコで進めていることを問題視。「(工場を)米国内に造らないのなら、巨額の国境税を払え」と批判したのだ。
これがトランプ氏の流儀なのだ。アメリカの国益を守るためと、今後もたびたび日本企業への介入をちらつかせ、時には実行することもあるだろう。
というのも、トヨタ以外にもメキシコを対米輸出の拠点とする日本企業はたくさんあるからだ。メキシコは賃金が格安な上に、NAFTA(北米自由貿易協定)によってアメリカに関税ゼロで輸出することができる。その利点を生かすべく、日本企業はメキシコに工場を造り、そこから対米輸出を行なってきた。
例えば、自動車メーカーだけを見ても、トヨタはメキシコで造った車の91%、ホンダは54%、日産は43%、マツダは29%をアメリカに輸出している。日本のメーカーにとって、メキシコは世界で6番目に大きい一大生産拠点となっているのだ。
トランプ氏はトヨタだけでなく、ホンダなどにもアメリカ国内での生産を迫るのではないかーーそんな不安感が日本の経済界に広がっている。本来ならば、日本政府はこうした恫喝(どうかつ)に毅然とした対応をするべきだ。しかし、ふたつの理由からできないと予想している。
ひとつは今の安倍政権が対米べったりの姿勢を隠さないためだ。特に安全保障では中国の脅威に対抗する必要もあって、ほぼアメリカの言いなり。とてもではないが、トランプ氏に盾突くようなことはできない。