50年前の職業ガイド本を読んで、既になくなっている職業を探した
2017/1/20 19:01 ネタりかコンテンツ部
将棋や囲碁といった分野で、プロ棋士にコンピューターが勝つなど、AI(人工知能)の研究が進んでいます。いずれはAIが人の職業を奪うのではないかとも言われるようになりました。
AIに限らず、「機械化によって職がなくなる」という話は、いつの時代にもあるものです。そこで今回は、50年前の職業ガイド本を読んで、すでになくなった職業を探してみました。見つかったのは次の5つの職業です。
1.バス車掌
現在でもバスツアーにバスガイドさんが同乗することがありますが、以前は市営などのバスにも「バス車掌」が乗っていました。『就職便覧』(1957年)によると、バスに運転手と同乗して、乗車券の販売や停車・出発の合図をしていたそうです。『交通機関ではたらく人びと』(1958年)によれば、「バスガール」とも呼ばれていたようです。
現在では乗車券の販売は半自動化され、停車・出発の合図は録音した音声が流れていますね。乗客への対応は運転手が1人で行うようになっています。自動化が進んだことで、運転手は仕事が増えたとも言えるかもしれません。
2.電話交換手
かつて電話は「交換手」を介してかけるものでした。電話をかけるとまず交換手につながり、そこでかけたい先を指名するのです。
『郵便局と電話局』(1958年)には、当時の電話交換手の姿が紹介されています。一日中、耳に受話器をあて、電話の応対をしていたそうです。電話をかける人は常にいるので、お正月は着物姿で勤務していたのだとか。
1958年時点で既に都内電話は自動化されており、市外への電話だけ交換手が対応していました。現在ではすべて自動化されています。オペレーターを介して通話先につなげる「100番電話」も2015年にサービス終了となりました。
3.エスカレーターガール
エレベーターガールは今でもある職業ですが、以前は「エスカレーターガール」もいました。『商店で働く人びと』(1961年)によると、百貨店のエスカレーターの乗り口・降り口に立って、乗客を見守り、「ありがとうございました」と挨拶していたそうです。
今ではエスカレーターの注意点などは、テープ音声で流していますね。
4.タイピスト
何か書類を作成するとき、自分でパソコンに文字を入力して作成することがほとんどだと思います。しかし、かつては分業制でした。
『職業ハンドブック』(1956年)には、「和文タイピスト」という項目があります。ワープロやパソコンが普及する前は、文字を打ち込むことを専門とする職業があったのです。タイプライターを使用し、領収書や請求書などを、書式に合わせて打ち込んで作っていました。
日本語と英語でタイプライターが違うため、タイピストも和文と英文で分かれていました。和文タイピスト技能検定試験、英文タイピスト技能検定試験がそれぞれありましたが、現在はどちらも廃止されています。
5.街頭アナウンサー
アナウンサーが活躍する場といえば、ラジオやテレビが思い浮かびますが、以前は「街頭アナウンサー」という人もいたようです。
『これからの女性の職業案内』(1958年)によれば、街頭のスピーカーや宣伝カーのスピーカーを通して、商品の宣伝を読み上げていました。アナウンサーは街頭宣伝を請け負う会社に雇われており、通行人の耳に残るように宣伝をアナウンスしたそうです。ただ読み上げるだけではなく、声の表情豊かに読むことが求められたとのこと。「街頭アナウンサー」の求人は新聞に載っていたとのことですから、それなりの人数がいたことがわかります。
現在は騒音に関して厳しくなったこともあって、街頭宣伝はあまり行われなくなりました。たまにスピーカーから聞こえてくる声は、録音されたテープ音声です。
まとめ
こうやって並べてみると、テクノロジーの進化によって、新しく職業が生まれたり、なくなったりしていることがわかります。「電話交換手」という職業は電話局の自動化が進んでなくなりましたが、そもそも電話が発明されていなければ、存在しなかった職業です。
AIが人間の職を奪うと言われていますが、今までになかった職業も生み出すのだと思います。今後もいろんな職業がなくなり、新しく生まれてくるのでしょうね。
参考文献
大和出版編集部編(1957)『就職便覧』大和出版社
中村雅人(1961)『商店で働く人びと』三十書房
中村豊(1958)『郵便局と電話局』三十書房
初村顕太郎編(1958)『これからの女性の職業案内』北辰堂
藤野順(1958)『交通機関ではたらく人びと』三十書房
労働省大臣官房労働統計調査部編(1956)『職業ハンドブック』中山書店
(文:菊池良、写真:アフロ)
投稿ありがとうございます。
ログインしてコメントを書くよかったらログインしてコメントも書きませんか?閉じる