こんにちは、Shin(@Speedque01)です。何かと話題のキンコン西野氏のビジネス書、「魔法のコンパス」を読んでみました。
キンコン西野氏が考えていること、行っていることがまとまっている良書でした。
こちらです。
アマゾンより、キンコン西野氏の紹介文を引用します。
西野亮廣(にしの・あきひろ)1980年兵庫県生まれ。
1999年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。活動はお笑いだけにとどまらず、3冊の絵本執筆、ソロトークライブや舞台の脚本執筆を手がけ、海外でも個展やライブ活動を行う。
また、2015年には“世界の恥"と言われた渋谷のハロウィン翌日のゴミ問題の娯楽化を提案。区長や一部企業、約500人の一般人を巻きこむ異例の課題解決法が評価され、広告賞を受賞した。
その他、クリエイター顔負けの「街づくり企画」、「世界一楽しい学校作り」など未来を見据えたエンタメを生み出し、注目を集めている。2016年、東証マザーズ上場企業『株式会社クラウドワークス』の“デタラメ顧問"に就任。
もともとはお笑い芸人であるキンコン西野氏ですが、今はもうその枠を完全に飛び越えていますね。
正直、テレビに良く出ていたころの印象はあまり良くありませんでした。「面白くないわりに、 しゃしゃってるな・・・」という感じ。そんな彼が、芸能界のみならず幅広く影響を及ぼしていることは知っていましたが、「一過性のものかな」と少々軽んじていました。
しかしながら、渋谷のハロウィンで出たゴミを集める「渋谷ゴーストバスターズ」や、無料でネット配布を始めた「えんとつ町のプペル」など、おそらくまぐれあたりではなく計算ずくでやっていることをだんだんと理解してきました。しかも、その当て方が非常にうまい。
いったいどのような考えのもと、これらの行動を起こしているのか。「魔法のコンパス」にはそのエッセンスが凝縮されていたので、一部紹介していきます。
真剣に作品を売る
「クリエイターはその名のとおり『創る』ことが仕事」・・・そういう価値観に、キンコン西野氏は真っ向から立ち向かいます。
僕の仕事は、自分の活動や作品を皆さんに見つけてもらわないことには始まらない。どれだけ腹を痛めて生んでも、観客がゼロなら、生んだ歴史ごと抹消されてしまう。とにもかくにも、見つけてもらわないと始まらない。なので、作品を生んだら、お客さんの手元に届くまでの導線をデザインする必要がある。
もともとは、「僕は作品を生む人間、それを届けるのは・・・・・・」と、届ける仕事を吉本興業や出版社に一任していたんだけど(だって、そのほうがカッチョイイから)、ある時、「生むだけ生んで、あとは任せる」というのは、どこか"育児放棄"な気がしてしまい、届けることまで責任を取ろうと決めた。
これはお笑い芸人やアーティストだけでなく、日本企業でも見られる問題です。
「とにかくいいものを作る」ということに注力するものの、それがどのように消費者のためになるか、そしてどうやって知ってもらう、買ってもらうのか考え切れていない。その結果、多額の投資をしても鳴かず飛ばずで、プロジェクトが中止されてしまう。そんな例は枚挙に暇がありません。
「これからのクリエイターは創るだけではダメ。届け、楽しんでもらうところまで自分の責任で考え抜き、実行しないといけない」というメッセージは強く頷けるところです。「いいもの創ったから後はよろしく」という態度は、無責任であるということですね。
チームの力を最大化する方法
キンコン西野氏は、ひとりで何か仕掛けることもありますが、最終的には多くの人を巻き込んでプロジェクトを実施します。現在話題になっている「えんとつ町のプペル」などはまさにその好例でしょう。
ぼくもコンサルタントとして多くのメンバと一緒に仕事をしますが、そのときに頭を悩ますのは「どうやってチームの力を最大化しようか」ということ。ここについて、キンコン西野氏は非常に明快なやり方を提案しています。
自分の世界を表現してくれるチームの力を最大化する時に必要なのは、"スタッフそれぞれの作品にしてあげる"ということ。
「俺がここまでやってるのに、あいつらは、なんでもっと頑張ってくれないんだ! 」みたいな時は、スタッフのケツをたたく前に、スタッフの作品になっているかどうかを疑うとイイ。
「指示を出さずに指示を出す方法」は、音楽以外にも、まだまだあるかも。日々、勉強でございます。
コンサルタントという仕事は基本的にチームで動きます。チームメンバーがいきいきと働いている場合と、まったく機能しない場合の双方を経験してきました。
その違いはどこにあるかというと、「そのプロジェクトを、各メンバーが自分ごととして捉えることができているかどうか」だとぼくは考えています。キンコン西野氏は、それを「スタッフそれぞれの作品にしてあげる」という表現をしています。
スタッフに自由度を与え、自分の力を存分に発揮させてあげる環境を作れば、チームとしてのパフォーマンスはどんどんあがっていきます。そうやって自由度を与えながらも、クライアントが求めるものを創っていくのがまた難しいのですが。
セカンドクリエイター時代
キンコン西野氏の造語で「セカンドクリエイター」というものがあります。今までは「作り手」「受け手」という二種類がさっくり分かれていましたが、現在は「客ではあるけれども、制作にも少しタッチしているよ」というふわっとした層がいます。
クラウドファンディングでクリエイターをサポートしつつ、一緒に制作活動を手伝ったりする人や、アイドルのライブで精一杯声を出したりヲタ芸をして盛り上げる熱狂的ファンは、セカンドクリエイターといえるかもしれません。
こういうセカンドクリエイターの数が爆発的に増加していて、その人たちをどうひきつけるかが今後の課題である、とキンコン西野氏は説きます。
セカンドクリエイターに刺さるコンテンツとは何か?
それは、こちらがハードだけを作って、「ソフトを作ってください」というものだと思う。
つまり「ファミリーコンピューターはコッチで作りますから、カセットはあなた方で作ってくださいね」というエンタメ。
身近なところでいうと、LEGOブロックであったり、紙粘土だったり。
「俺が作った作品を見ろ!」ではなく、こういったセカンドクリエイター心をそそらせる外枠作りこそが、これからの時代のクリエイターがやらなきゃいけないことなんじゃないかな?
この話は、いわゆるプラットフォーム戦略に近いと感じています。単純に「作り手」「受け手」と分けてしまうのではなく、プラットフォームを構築する人と、そのプラットフォーム上で作品を生み出していく人を発生させることで、そのサービスを活性化させていくということです。
これは簡単そうで実はとても難しいことです。「このプラットフォーム上ならおれも何か作れるかも!作ってみたい!」と思わせるような何かをぼくも作ってみたいものです。
仕事になるまで遊べ
「好きなことを仕事にすべきか問題」はこのブログでも何回か取り上げています。キンコン西野氏も「好きなことを仕事にすべきかどうか」という話を取り上げていて、非常に明快に意見を述べています。
そもそも「好きなことで食っていけるほど人生は甘くない!」なんて傲りだよね。
たとえば、ロックンロールが好きだけど、それでは生活ができないから、しぶしぶ引越し屋さんで働くことにしたとする。
ただ、その世界には"引越し業が好きで好きでたまらない奴"がいるわけで、じゃあ、しぶしぶ引越し業を選んだ人間が、そんな奴に勝てるの? という話。
こっちがロックンロールのことを考えているぐらい、相手は四六時中、引越しのことを考えているわけだ。あまりにも分が悪い。
シンプルですがわかりやすい話ですね。個人的にも賛成です。
付け加えるとすると、なかなかすぐに「これが好きだ!」というものが見つからなかったりする場合があるので、その場合に備えて「好きになる力」を磨くのもいいかと考えています。
特に大した経験もスキルもないぼくたちは、まずは「どうしようもなくつまらない仕事」から始めないといけません。誰でもできる、単純な労働です。
でも、みんなスタートはそこからなのです。そこを受け入れた上で、ぼくたちは「仕事を好きになる力」を徹底的につけなければいけません。
コンサルティングファームに入っても、最初から面白い仕事ができるわけではありません。既存のデータをエクセルにまとめなおしたり、議事録を取ったり、先輩が作ったパワーポイントの地道な修正をしたり、そんなところから始まります。そういう仕事をどう捉えるかで、その後の成長速度が決まります。
新しい時代の価値観をいち早く手にいれよう
キンコン西野氏は、フリー、クラウドファンディング、プラットフォーム戦略などの実験を体を張ってやってくれています。いろんな本でその概要は理解しても、なかなかリアルにはわからないもの。キンコン西野氏の活動を見ると、それが「あー、こういうことだったのか」と腹に落ちてきます。
「魔法のコンパス」は、そのようなキンコン西野氏が実行している活動や思想がまとまっている良書です。新時代の価値観を手に入れたい人は、ぜひぜひ読んでみてはいかがでしょうか。