安倍内閣が、一億総活躍社会の実現に向けて進めている「働き方改革」。柔軟な働き方を実現する方法の1つとして「副業解禁」がいま、大きな注目を集めています。
今回、サイボウズ社長 青野慶久との副業対談に応えてくれたのは、世の中の大企業に先がけて社員の副業を解禁して大きな話題を呼んだロート製薬会長兼CEOの山田邦雄さん。
ロート製薬では社外での副業が可能になる「社外チャレンジワーク制度」と、社内で複数の部門・部署を担当できる「社内ダブルジョブ制度」を2016年よりスタートしています。従業員数が1500人を超える同社が、なぜ副業を解禁したのか? 副業が解禁されると、会社や世の中はどう変わるのか──。
「会社が社員をガチッと囲い込むこと」への違和感がずっとあった
早速ですが、ロート製薬さんが副業解禁、社外チャレンジワークを開始された背景をお聞かせください。
僕自身、会社が社員をガチっと囲い込むことへの違和感がずっとあって。「専業でないといかん、副業はダメだ」というのは、「何かおかしいな」という気持ちがあったんですね。
ええ。
1つのきっかけになったのが、東北の震災でした。ロート製薬でも復興支援室を立ち上げて、現地に入り込んでいたのですが、そこで働きながら東北の復興支援をしている人たちに出会って、これは素晴らしいなと。
山田邦雄(やまだ くにお)さん。ロート製薬株式会社代表取締役会長兼CEO。1956年、大阪府生まれ。東京大学理学部卒業。慶應ビジネススクールMBA取得。1980年にロート製薬に入社し、営業職、マーケティング職を経験。1991年に取締役に就任後、1992年に専務取締役、1996年に代表取締役副社長、1999年に代表取締役社長を歴任。2009年6月より現職に就任。役員室を撤廃する、肩書きではなく「邦雄さん」と呼んでもらう文化を作るなど、ロート製薬の社内風土改革を積極的に行い、2016年より社員の副業解禁を実現。
なるほど。
そんな中で、みんながどういう制度を望んでいるのか、人事制度改革について社員でディスカッションするプロジェクトが立ち上がり、もっと仕事の幅を広げたいという話が出てきました。 だったら、制限を取り払ってしまおうと。CI(コーポレートアイデンティティー)やロゴを新しくするタイミングで「社外チャレンジワーク制度」と「社内ダブルジョブ制度」をスタートさせたんです。
まずは「NEVER SAY NEVER」という新しいCIを作ったんですよね。
そう。本当はそっちがメインだったんだけれど、意外にも新CIとともに出した「副業解禁」の方に注目が集まってしまって(笑)。
ものすごい反響でしたね。
多様な働き方というのは、絶対これからの世の中に必要だと思うんです。サイボウズさんやリクルートさんみたいなIT系なら「副業OKは当たり前」という企業も結構ありますが、僕らみたいないわゆる「オールドエコノミー」の会社でもできるんです、と。注目を浴びたのは結果的に良かったと思っています。
副業で「新事業の芽」を見つけてほしい。社外にでても良いけど、タダでは出さない(笑)
実際に社内ではどれぐらい反響があったんですか?
「副業やっていいよ」と突然言われても、明日からいきなり「よっしゃ、やろう」とはならないと思っていたんですが、60人くらいは手を上げてくれました。みんな、元々考えていたんでしょうね(笑)。
すごい! 初めから60人は多いですね。副業解禁に社内で反対の声はなかったんですか? 情報漏えいとか人材流出のリスクとか。
ほとんどなかったですね。情報漏えいもよく言われますが、副業に限らず、それは転職でも起こりうるわけで。 さすがに会社を辞めたい人を辞めさせへんぞ、というわけにはいきませんからね。
社外の活動を認めると、社外の活動がおもしろくなってしまい、人材の流出が起きてしまうという懸念はありませんでしたか?
青野 慶久(あおの よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。2011年から事業のクラウド化を進める。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある。
今のところはまったくないですね。一応会社の戦略的な方針として、新規の部分をどんどん開拓していこうという方向だったので。 会社の中だけに閉じこもっていても、アイデアはわいてきません。それこそ社外に出て、いろんな人と出会って、いっしょに仕事をする中から新しい事業の芽みたいなものを見つけてほしいと思っています。
副業を通じて、新規事業の芽を見つけてほしいと。
そういう意味では、結構欲張りですよ。社外に出ても良いけど、タダでは出さないぞと(笑)。
やっぱり企業として副業を解禁する以上は、合理的な判断も大事ですよね。
今まで通り、同じ仲間と同じ環境で考えるだけとは全然違う、発想や出会いが出てくるんです。副業で収入を得ているだけでなく、本業にも何かしらの形で生きてくるとなれば、堂々と出ていけるじゃないですか。
コソコソやってるんじゃないぞ、こんな情報持ってきたんだぞと、堂々と言える。
こういうメリットもふまえると、うちにとって副業解禁は必要だったといえるかもしれませんね。
副業解禁は、仕事の納得感を高める。会社というハコの中で「やらされ仕事」をしないために
本当は全員、(本業以外の)2枚目の名刺を持ってるくらいになったらいいなと思いますけどね。
もっと増やしたいと。
もっと増やした方がいいんじゃないですかね。
すごいな〜! 60人じゃ足りないですか?
60人じゃ足りないというか、まあ、理想的には全員やったらいいと思いますけどね。
すごい。オープンですねえ。 わたしは、会社の管理職がこれからの時代に身につけなければならないのは、限られた時間の人のマネジメントだと思っているんです。それは副業かもしれないし、介護や育児かもしれない。 働く場所や特に時間に制限がある人をどうマネジメントするか。こうした制約がある人をマネジメントできない会社は、介護や育児をしている優秀な人材は採用できません、となってしまう。 副業を解禁することによって、時間が限られた人材をマネジメントする力がきたえられるんです。これこそが、次世代に必要とされるスキルですよね。
その通り。会社のマネジメントシステムは、よりフレキシブルで、オープンな形になっていくと思う。というより、そうならざるを得ないんじゃないかなと。いわゆる昭和型のシステムでもある程度はどうにかなるけど、オープン型のシステムに移行した方が、いろんなポテンシャルが引き出せると思う。
副業解禁によってマネジメントスキルが上がり、オープンイノベーションが起こると。
そう。あとは一人ひとりの仕事の納得感。結局、会社という箱の中に入れられて仕事をしていると、やっぱりなんだかんだでやらされ仕事になるわけで。
そうですね。
やっぱりね、主体的にやった方が仕事は絶対におもしろい。選んでやってるからこそ勉強もしますし、苦しいことがあっても頑張ってやるわけで。ただ、自分の希望と会社が求める仕事のバランスが合わないこともあるから、本業一本だと苦しくなる。一方、本業と副業でパラレルであれば、当然幅も広がるし、主体的に取り組めるようになって、結果的に人材育成のスピードアップになる。本業一本の単線型のキャリアではできないようなことも、副業も交えた複線型のキャリアであれば、いろんなことが経験できるし、実力がつくのも早い。
確かに、キャリアが単線だと、自ら選んでいる感覚がないから、今日も明日も惰性でずーっと同じ道走りますということになりかねない。 副業によってキャリアが複線を走るようになると、自ら選んで今の会社で働いている感というか、主体性が出てくる。やっぱりその方が、モチベーションが保てるんじゃないかと思うんですよね。
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