軽井沢のバス事故 同型車両など805台の床下に腐食

軽井沢のバス事故 同型車両など805台の床下に腐食
大学生など15人が死亡した長野県軽井沢町のバス事故のあと、メーカーが事故を起こしたバスと同型の車両など、およそ1万3000台を点検したところ、全体の6%にあたる805台で、車体の床下に腐食による穴が見つかり、ハンドル操作ができなくなるおそれがあるとして、国土交通省が運行停止を指示していたことがわかりました。
去年1月、軽井沢町でスキーツアーのバスが道路脇に転落し、大学生など15人が死亡した事故では、バスの車体の床下が腐食し、複数の穴が開いていて、メーカーから使用が危険な状態だと警告を受けていたことがわかっています。

事故のあと、メーカーが同型の車両や似た構造のバス5車種のうち、10年以上運行されている合わせて1万3637台を点検したところ、全体の5.9%にあたる805台で、車体床下の腐食が進んで穴が開いているのが見つかり、国土交通省が運行停止を指示していたことがわかりました。

国土交通省によりますと、そのまま走行すれば最悪の場合、部品が外れ、ハンドル操作ができなくなるおそれがあるということで、おととしまでの3年間に、腐食が原因の事故が3件起き、13人がけがをしているということです。

国土交通省によりますと、3か月ごとの法定点検や年に1度の車検では、これまで床下を主に目視で確認していましたが、去年のバス事故のあとメーカーが無料点検を始め、ハンマーで車体をたたいて調べる打音点検を行ったところ、深刻な腐食が明らかになったということです。

国土交通省自動車局の堀江暢俊対策官は「腐食は常に進行していくので、定期的に点検をして損傷がないか確認していくことが大事だ。バス会社は運行の実態にあわせて適切な点検をしてもらいたい」と話しています。

三菱ふそうトラック・バス「メンテナンスを周知する」

バスメーカーの「三菱ふそうトラック・バス」は、去年4月にバス会社に配る点検整備のマニュアルに、車体をハンマーでたたいて腐食していないかを確認する打音点検の項目を新たに加えました。

さらに7月からは、軽井沢町で事故を起こしたバスと同型や似た構造のバス5車種を対象に無料の点検を始めました。

これまでに点検した車両は1万3637台に上り、このうちおよそ6%の805台で腐食が進んで穴が開いているのが見つかり、運行停止の指示を受けました。

三菱ふそうトラック・バスの市村雅人広報部長代理は「腐食で運行停止となった台数が多いことは、事実として受け止めなければならない。バス会社に対し、今後もメンテナンスの重要性を周知していくほか、さびの詳しい原因も調査していきたい」と話していました。

車体の腐食で事故も

国土交通省によりますと、「三菱ふそうトラック・バス」のバスでは、車体の腐食が進んでハンドル操作ができなくなったことが原因で、おととしまでの3年間に3件の事故が起き、合わせて13人がけがをしました。

このうち平成25年11月には、山梨県の中央自動車道で高速バスがガードレールに衝突し、5人がけがをしています。
また、おととし11月には、宮城県の東北自動車道で貸切バスが中央分離帯に衝突し、7人がけがをしています。

また、「いすゞ自動車」でも、平成4年から平成17年までに製造されたバス2車種で、車体の腐食が進むと部品が破損し、最悪の場合、ハンドル操作ができなくなるおそれがあるということで、これまでに3件の物損事故が報告されています。

いすゞ自動車も去年から無料の点検を行っていて、これまでに2253台のうちおよそ30台が、国土交通省から運行停止の指示を受けています。

軽井沢町で事故を起こしたバスも車体床下が腐食し穴が開いていましたが、国土交通省が調べたところ、ハンドル操作に関わる部品の損傷は確認されていないということで、事故原因とは直接、結びつかないとしています。

国土交通省によりますと、車体床下の骨組みは鉄製のため、雪道に散布された融雪剤や海水が付着して腐食が進むことがあるということです。このため、国土交通省はバス会社に対し、雪道や海沿いを走行したあとは、車体の床下を洗浄することや定期的にさび止めの塗料を塗ること、それに運行状況にあわせた打音点検の実施を呼びかけています。

また、整備会社に対しても、車検や法定点検の際の打音点検の徹底を呼びかけています。

運行停止を受けたバス会社は

関東地方でバス会社を経営する男性は、去年10月に所有するバス2台が国土交通省から運行停止の指示を受けました。

これまで整備会社に依頼していた3か月ごとの法定点検や、年に1度の車検では問題は見つからなかったということで、去年受けたメーカーの無料点検で初めて、腐食が進んで車体に穴が開いていることがわかったということです。

バスの修理には300万円以上の費用がかかったうえ、修理の間も仕事を続けるために、ほかの会社から代わりのバスを借りてしのいだということです。

経営者の男性は「ふだんは車体の下回りを水洗いする際も奥まで見ないので腐食には気付かず、点検結果を聞いて驚いた。乗務員には雪道を走ったあと、必ず洗車するように指導してきたが、完全にできている訳ではないので、今後はしっかりやっていきたい」と話していました。

一方、関東地方で自動車の整備会社を営む男性は、およそ20年にわたって複数のバス会社からバスの車検や点検を請け負ってきました。これまで車体の床下は主に目視で確認し、ハンマーではボルトやナットの緩みを確認する程度で、骨組み自体をたたく打音点検は行っていなかったということです。

経営者の男性は「バスは高価なもので、お客様の車両をたたくことは、やりにくい部分もあったし、さびはあって当たり前という感覚だった。しかし、ハンマーでたたいたら実際に骨組みが崩れていくのを見て、今は安全のために打音点検をしなければならないと感じている」と話していました。