講演テーマはWebメディアにおけるSEOと著作権、その利活用例
政策研究大学院大学で行われている知的資産マネジメント研究会(Smips)では、ほぼ月に一回の頻度で知財を中心としたエンタメ界隈の動きを追う「エンタメと知財分科会」を開催しています。
2016年12月は、サイト運用や集客などを専門とするコンサルタントである永江一石さんにWebメディアのSEOと著作権、その利活用例についてご講演いただきました。

キュレーションメディアの目的は何だろう
まずは、みなさんに聞いてみましょう。そもそもなぜキュレーションメディアが急増したのだと考えますか?
-アフィリエイト収入のため?
違いますね、たとえば5000万PVの大手ニュース記事サイトで、Google Adsenseが1PVにつき0.25円くらいですので、せいぜい売り上げが1000万~2000万円程度、スタッフが100人200人いる企業だとすると、1人当たり5万円の売り上げにしかなりません。アフィリエイトだけでは儲からないですよ。
-売却するため?
スタートアップの人たちがキュレーションメディアを作ったのは、売却するため。大手企業が多額の金額で買収したことをきっかけに、あらゆるスタートアップがキュレーションメディアが一斉に始めました。
もし5000万PVのメディアを作り、月に1000万円売り上げが立つとして、サーバー代を考えたらそんなに利益が残らない。ただ、3人で小さなまとめサイトを運営するなら収入として満足する人がいるかもしれない。
-記事を独占することで広告収入を得る
大手企業でも、広告収入ではさほど儲かっていない。
-社内で出世する
そうです、それもあります。ただ一番は「何をKPIにするか決まっていない」ということだと思います。
何億人のユーザーがいるというだけで、お金が集まるのが今の市場。なんとなくお金が集まってしまい、ネット検索が破壊されるに至った。
Googleの仕組みはどうなっている?
ではGoogleの仕組みがどうなっているかというと、みんなが便利だと思っているものを上にあげるようになっています。
昔であれば、あちこちのサイトにリンクされているものが便利だとされていました。リンクページとかあったじゃないですか。
今は有料のバックリンクを貼ると、ペナルティをつけられ、圏外にはじかれています。また関連性・必然性がないリンクもペナルティをつけることになったため、バックリンクを20万個もつけているために、作り直さなければならない大企業がいくつもありました。
今のホワイトハットSEOは、チューニングして検索してもらいやすいように作る。そのためにオリジナル記事を作っています。
たとえば中の構造として検索エンジンが巡回しやすいようにする、スマホで見やすいように作る、そのためにはある程度文字数が必要です。文字数の少ない芸能人ブログは検索には上がってこないでしょ。
では検索上位になるために今回パクっていったブラックハット(SEOスパム)は、どんな記事を書いていたのか。
Googleは記事をコンピュータが読んでオリジナルかどうか判断しているので、ただコピペしてオリジナルではないという判断を回避するために、キュレーションサイトでは接続詞を変えたり、文章を入れ替えたりしていた。
みなさんの中に、いろいろなところから記事を持ってきて順番を変えたりしたら、著作権侵害にならないと思う人いますか?(何名かいました)
もしならないと思うなら、村上春樹さんの小説を主人公の名前を変え、てにをはを変え、接続詞を変えて出してみてください。炎上じゃすまないですよ。一発NGです。
薬機法は東京都なりが介入できる。しかし著作権侵害の場合、警察に介入してもらうのは厳しい。そのため運営者は、ばれたら消せばいいと思っている。
権利者はキャプチャーをとって請求書を無断使用しているサイト運営者へ送れば、ブログサービス会社ですら大体払ってくれる、だから軒並み閉鎖したのではないかと考えています。
一番の被害者は誰か?
ではちょっと話を変えましょう。著作権侵害された人も被害者なのですが、一番の被害者は間違った情報を信じてしまう人です。こういうのに引っかかってしまう層(ペルソナ)はどこだと思いますか?
-50代主婦
他には?
-教育水準が低く、情報収集をしない地方に住んでいる人
そこまでいくと検索しないです。そもそもYahoo!で検索トップになったとしても200万人にしか見られてない。日本国民1億2000万人の中でこれだけしか見ていない。
App StoreのMERYアプリのコメントに“記事が見れない”と嘆いている層がいる。この層は全くニュースを見ていない。スマホを使っていてもニュースに触れていない。
実際に検索を使いこなしてキチンとニュースを見ている層は、せいぜい30万人くらいと読んでいます。ここにいる方(講義を聞きにいらした方)を含めて、自分の周りができているからといって、世間が全てできているとは限らないんですよ。
田舎に行くとまだガラケーの人がたくさんいます。そういう人がスマホを使ったとしてもLINEや楽天市場のアプリであって、ネット検索はしていない。バカにしているわけではなく、格差ができてしまっている。ここまで使わない人は、検索しないので被害者にならない。
ではどの層かというと、スマホゲームで課金している層と同じ。どの層だと思いますか?
-パチンコ層?
パチンコ好きは賭け事が好き、だから、スマホゲームの課金をさほどやらないですね。
今は統計上のデータが出ていて、一番スマホゲームに時間をかけているのは主婦。
テレビを見ているのは主婦層で、学歴が低くなるほど見る時間が増えるというデータがあり、大卒と高卒で3倍くらいの差がある。
かつては、家の中の一番のインフルエンサーは新聞を読む父親だった。しかし新聞読まなくなり、せいぜいLINEニュース、しかも芸能ばかり。これを見てニュースと思ってしまっている。
ネットで検索するのは、おじいちゃんおばあちゃんではなく主婦層。オークション・ソシャゲ層と一致します。
ところで、この中でパクられたことがある人っていますか?(何人も手が上がりました)
その中で請求書送った方はいますか?(数人いらっしゃいました)
-請求書送ったら、お金をもらえました。
内容証明送ったり、少額訴訟起こした人はいますか?
-刑事事件として立件したい
立件するのは難しいですよ。1件だけだと金額が少ないので示談になってしまう。弁護士さんが被害者500人くらい揃えるのは難儀なんですよ。そもそも画像をあちこちで使いまわして著作権ロンダリングしているので、誰が著作権者か探すのが大変なんです。
-不買運動するのは?
あると思うんですよ。あのね、そこに出しているスポンサーに盗んでいるのに、お金出していいの?と問い合わせるのがいいです。
メディアのSEO対策はどうすべきか
ネット広告はテレビと違って安く、バサッと予算を渡して任せてしまっているので、大手企業自体はどこに広告が出されているのかよくわかっていない現状です。
とはいえ自社のブランドに影響するので、大企業はパクリサイトには広告を出さない、メディアを買わない。これが徹底してきたら、大手のパクリサイトは潰れていきます。
では小さなメディアをどうするか?
テレビの広告費はずっと横ばい、しかしネット広告は新聞雑誌と入れ替わりました。ネット広告は成果報酬型で出稿側にリスクがないんです。バナー広告ってもうないんですよ。テキストで書いたほうが見てくれます。
GoogleもAmazonもクリック課金なので、誰も見なければ課金されない。広告主にとって悪用する人がいなければとてもいい仕組み。
この悪用している人たちは大手が閉鎖したことで検索順位が上がるので今とても喜んでいる。こういうところをつぶしていかなければならない。
ではこれからどうするかということなんですが、政府機関、例えば厚生労働省も消費者庁も正しい情報を載せているけどもまったくSEOを考えていない。なので本当に大事な情報が回ってこない。
これを回ってくるようにすることが我々の仕事かなと思っています。
なにか質問ありますか?
-SEO対策を民間ができて、役所ができない理由とは?
役所は3年計画などで、あらかじめその時の技術で、提案型ではなく仕様を決めて大手の企業に仕事を振る。役所の人がSEOで検索をあげたいとは考えていない。
しかし、ふるさと納税で税収が増えている地方自治体などは、検索されやすいサイト・見やすいサイトを作っているので、役所も考え始めてはいる。
とはいえ、国民が最新技術で情報サイトを作ってほしいと声を上げることも大事です。
省庁のサイトは半分以上スマホ化されていないため検索順位が下がってしまう。ただページ数がハンパなく多いので対策が難しいという側面もある。
-ロボット検索エンジンが進みすぎてこういう問題が起きたのではないか。ディレクトリ検索に戻ればいいのでは?
SEOの神様と言われている辻さんがおっしゃってたんですが、Googleのすごいところはこれだけニュースに出て恥でもあるのに消さなかった点にある。ブラックハットの人たちは常に弱い部分をついて裏をかいてくる。
最近、大学機関は数千万円くらいするコピー判別ソフトを入れ、論文の検証を行っています。ここまで制度の高いものではなくとも5万円くらいでも“コピペルナー”などの判定ソフトがたくさんある。
論文の判定ソフトのように高額になってしまうのは負荷がかかるからなので、戻らずとも負荷分担できるようになってきたら変わるはずです。
-永江さんもブログで書かれていましたが、たとえば熊本の復興支援のために熊本県庁から画像などを引用やリライトしてブログを書く。結果的に熊本の利益になる場合の著作権について、いかがお考えですか?
今回の最大の問題はパクられた方に何のメリットもなく、さらに検索で下に来てしまうことです。相手にとって顕著なメリットがあれば、使わせてくれるかもしれないので許諾をとりましょう。パクリサイトが許諾をとらなかったのは、相手にとってメリットがないとわかっていたからです。
次回の知的財産マネジメント研究会(Smips)は1月14日開催
エンタメと知財分科会では、IT系企業の知財部の方々による座談会を行います。
参加無料・予約不要のオープンな研究会です。活発な議論も歓迎していますのでお気軽にご参加ください。
アクセスなど詳しくは下記サイトへ。




新井 秀美
行政書士をしながら、クリエーターのためのポートフォリオ作成サイトCOLET(コレット)開発中。StartupWeekendにてフェチ東京を作った優勝経験からハッカソン参加経験もあり。ちょっと変わった事業相談が大好き。
六本木の政策研究大学院大学にて行っている知的財産マネジメント研究会(Smips)の「エンタメと知財分科会」共同オーガナイザー。
Twitter:@parrotJPN
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