猫は年をとるほど関節炎になる割合が増えるとされる=山田大輔撮影
日本大の杉谷博士教授らの研究チーム
猫の関節炎は、人間とは異なるメカニズムで発症することを日本大の杉谷博士(すぎや・ひろし)教授(獣医生化学)らの研究チームが解明し、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)に5日発表した。猫は高齢になるほど関節炎にかかる傾向が高く、治療薬の開発につながることが期待される。
人間の関節炎は、関節の細胞が刺激されると、細胞内の三つの酵素が別々に働き、それぞれが炎症を起こす原因を作る。猫も人と同じと考えられていたが、チームが猫の膝関節の細胞を培養し、分析した結果、三つのうち二つが連動する独特の仕組みであることを突き止めた。
一方、チームの日大院生、北中卓獣医師らは2015年、1~21歳の猫計75匹について、肘や膝、肩など6カ所の関節を調べたところ、関節炎の罹患(りかん)率は1~4歳は30%、5~10歳は56.5%、11歳以上は90.6%で、高齢になるほど関節炎のリスクが高い傾向がみられた。
猫の関節炎には現在、治療法はなく、一時的に鎮痛剤で痛みを和らげるといった対症療法しかない。年寄りの猫がじっとしていることが多いのは、関節炎の痛みが原因とも考えられる。
チームの中野令獣医師は「治療には人とは異なるアプローチが必要なことが分かった。猫にとって最も副作用がない方法を解明し、薬の実用化につなげたい」と話す。【藤野基文】