ミナミのど真ん中で、大阪が世界に誇るたこ焼きを五感で体験!

2017.01.02

大阪のソウルフード・たこ焼きを五感で楽しめるとあって、2011年のオープン以来、観光客に人気という「道頓堀コナモンミュージアム」に子連れで行って来ました。手ほどきを受けながら銅板でたこ焼きを焼ける道場や、たこ焼きのロウサンプルが作れる工房、そしてたこ焼きや道頓堀の歴史を学ぶパネル展示……と、まさにたこ焼きづくし。関西人にはたこ焼き作りはお手のもの、と思いきや、意外な発見の連続に大騒ぎでした。

▲道頓堀のトゥーマッチな看板の中でも、負けてません

関西人にとって、たこ焼きはごく身近な食べ物。時に主食、おやつ、お酒の肴、パーティーのメインディッシュ、おもてなし料理……驚くほどさまざまなシーンで登場します。とはいえ、その歴史や文化を詳しく教わることもなく、家で焼く際のスタイルはまったくの自己流。

関東から遊びに来た親戚が「テレビなどで聞いていたものの、本当に自宅にたこ焼き器があり、夕飯に焼くことがあるのね」と驚き、得意げになった私ですが、その先のうんちくを披露できなかったことが残念でした。
そこで小学生の双子(息子と娘)と姪っ子を連れ、課外学習に出かけることにしました。
▲入る前に、思わずもう一度見上げてしまった巨大オブジェ

フグの横、大ダコを目指して

道頓堀通を、御堂筋から堺筋に向かって行くとちょうど真ん中あたり、大きなフグの隣、「道頓堀コナモンミュージアム」は巨大なタコが目印です。その足、じっと見ているとじわじわ動いています。

店先では「たこ家道頓堀くくる」のスタッフが一度に72個焼ける大きな焼き台で、見事な目打ちさばきを披露し、たこ焼きを販売しています。たかだか24個の我が家のホットプレートですら焦がすことがあるので、見とれてしまいます。

いい香りとその熱気に歓迎され、心躍らせながら、中へ。
▲手際よいスタッフの所作にカメラを向ける観光客も

大阪「たこ焼き史」のお勉強

鰻の寝床状態で、間口は狭いものの奥行きのある建物内。「知る」「作る」「食べる」をキーワードに、フロアごとに楽しめる内容が違います。

まずは「知る」がテーマの2階「コナモン歴史ミュージアム」へ。パネル展示を読み進んでいくと、たこ焼きのルーツだけでなく、広くコナモン文化の歴史もわかります。

出典は、いまや日本コナモン協会会長であり、かれこれ30年ほど前からたこ焼き研究家として活躍する熊谷真菜(くまがいまな)さんの著書。彼女とは同じ西宮出身であることもあり、「宇宙でひとりのタコヤキスト」と自称しているあたりも気になって、昔から一目置いていた方だけに、思わず真剣に展示を観賞。
▲見落としがちな「道頓堀の歴史」の展示。ここもぜひ

すべてに訳文が付いているわけではないけれど、歴代のメニュー名は英・中・韓の3カ国語でも書かれていて、居合わせた外国人客も物珍しそうに眺めていました。

懐かしいと思ったのは、昭和13(1938)年生まれの父親がたこ焼きを食べるたびに話題にする「ラヂオ焼」。古くから大阪に伝わるコンニャクや紅しょうが入りのコナモンで、昭和初期にそこにタコが入ったのが、たこ焼きのはじまりだとか。明石の玉子焼から派生した説、ちょぼ焼きの影響という説など、諸説あるようだけど、庶民の味をひとひねりし、ちょっと贅沢にタコが加わって誕生したということは間違いない。

また、全国コナモン分布図や、コナモンと切っても切れない間柄のソースの解説もあり、「ここに来たら、楽しい自由研究ができそう」と娘。なるほど、次は私の父も連れてきて、孫に熱く語ってもらうもよし、と思ったり。
▲これぞ、関西が自慢できる文化の一つだと再認識

2階の南側の窓は、看板の大ダコの目玉の部分。そこからのぞくと、外でタコを見上げて驚いてる人が観察できて、なかなか面白い。北側の窓からは、道頓堀川が眺められます。
▲覗いたところに仕掛けが。彼らには大ウケでした

なぜか燃える! フェイクたこ焼き作り

さて、続いては「作る」体験を。3階「コナモンサンプル工房 まねき多幸」では、ロウサンプルづくり体験が楽しめます。所要時間約45分で1人1,600円。家でたこ焼きは作り慣れている子どもたちですが、作ったことのないフェイクのたこ焼きに、大興奮。
▲体験キット(右は完成見本)を見れば童心に帰り、大人も挑戦モードに

とても緻密に再現されたたこ焼き。タコはもちろん、紅しょうがや鰹節、青のりまで本物そっくりです。喫茶店やレストランのショーケースに並べられたメニューの見本など、食品サンプルは日本の伝統文化のひとつ。最近では合成樹脂で作られるのが主流ですが、ここでは昔ながらの蠟細工で。
▲衣から作り、中に紅しょうがやタコを入れ……工程は本物と似ています

やわらかい関西弁でおもしろおかしく接してくれるスタッフ。最大、スタッフふたりで25人の修学旅行生を相手にしたこともあるとか!アジア諸国からの旅行者は「中国語での指導はない」と言うと参加を諦めてしまいがちだそうですが、難しい工程はないので、ぜひチャレンジして欲しいもの。世界でオンリーワンのお土産になります。
▲真面目に教わる子どもたち。授業でもそれくらい集中してほしい

ウニ、エビ、イクラにカイワレ、ミックスベジタブル……オプションで入れられる多彩なトッピングサンプルもあります。価格は50円から。大きなカニ足は2,000円。お誕生日の記念になど、年に数本出るのだそう。調子に乗ってなんでものせたがる息子。予算を伝えて「オーバーしたらおこづかい払いね」。
▲トッピングサンプルは、オリジナリティが出せるから大人気

完成!小学3年生の我が子たちと、2年生の姪っ子。約1時間、みんな根気よく頑張りました。
「これ、テーブルに置いとこ。絶対、くいしんぼうのパパ、食べるわ」と言う姪っ子はスタッフに「ダメですよ。ご家族やお友達が口にしないようにしてね」と釘を刺されていましたが……後日、ドッキリは大成功だったとか。
▲それぞれ大満足の仕上がり。いい思い出、おみやげになりました

自分で「焼く」「食べる」
目からウロコの新発見!

サンプルづくりで集中力を使い果たした子どもたちは、道頓堀の川沿いのグリコの看板を見てくる、と飛び出て行ってしまいました。そこで私ひとり、地下の「たこ焼道場くくる 匠」へ。ベテランスタッフの手引きで、好きな具材を選んでセルフでたこ焼きが焼けるとあって、連日、観光客で人気のコーナー。いよいよ待ちに待った「食べる」体験です。
▲地下の道場ではベテランスタッフがおもてなし

「少しコツがいるけれど、初めてでも、きちんと美味しく焼けますよ」とスタッフの言葉は頼もしい。けれど、生まれも育ちも関西の私としては、一人で焼ける自信がありました。

ところが、まずメニューを見て少しひるむ。ずらりと並んだタネ(具)の中から3種類以上選ぶスタイルですが、山芋、ウニ、チョコレートまである!? 

私は魅力的な大ダコに、味が想像できないしらす枝豆、道頓堀にちなんでグリコのキャラメルを選択しました。
そしていつもどおりにやろうとしたら、ダメ出しの連続。「目打ちは両手に1本ずつ。鉛筆握りで」「生地を流し込んでから火をつけますが、具はなるべく早めにいれなきゃ、すぐ焦げます」とのアドバイスに、びびりまくり。
▲選んだ具が並んだトレイ。なんでも入れて楽しめばいいのだと再確認
▲ど迫力の大ダコに爆笑。キャラメルを入れると、すぐに甘い香りが立ち上って…

「実は、初めてという人のほうが、きちんと聞いてくれて失敗しないんです。いつも焼いてます、と我流で焼く人が大変。銅板は熱伝導がよく、家のプレートより断然早く焼けるので、手早くしないと焦げます。お家では1本の目打ちで突き刺して返しますが、お店では刺しません。2本で挟んで転がす感じね」
▲大ダコに気を取られていたらキャラメルが焦げる……大わらわ

なにもかも、目からウロコならぬ、目からたこ焼き。初心に戻り、すべて教わりながら焼くことにしました。先が大きくはみ出る大ダコは、ひっくり返さず左右交互に優しく倒しながらゆっくり焼き上げるのがポイント。スタッフはそれを「ゆりかご焼き」と呼んでいるとか。なるほど、左右にゆらゆら。デザート焼きのキャラメルは、ネギと紅しょうがは入れないけれど、ふっくらさせるため、天かすはインすること。
▲鉛筆持ちで手際よくクルクル。それがなかなか難しいのですが、適切なご指導のもと、なんとか形に

一時は生地がまとまらず、どうなることやらと思っていたのが、お手伝いをいただき、キレイにまんまるに。最後に隠し技、風味づけに白ワインをひと振り。これは店舗でも仕上げに必ずやるそうで、確かに、ふわっと華やぐ感じで、家でも早速、真似したいものです。
ベース(1人前15個350円)に、具(1種180円~)を3つ以上申し込めばOK。自分で焼くたこ焼きは、締めて890円~。
▲悪戦苦闘の末、完成!
▲左からキャラメル、しらす枝豆、大ダコ。それぞれ個性的

さあ、私が悪戦苦闘したたこ焼きと、店頭でスゴ腕のスタッフが手際よく焼いた8個650円と、せっかくなので道頓堀リバーサイドのテーブルに座って食べ比べ。
焦げ色が食欲をそそり、外カリカリで中トロトロとやはりプロには負けましたが、キャラメルが想像以上に子ども心をつかんだか!?しらすと枝豆はさっぱりとした後口で、これまたおもしろく……。そして焼きにくいので熱心に向き合った大ダコは、足のはみ出た姿が愛おしく、親子で取り合いとなりました。
スタッフさんの焼いたたこ焼きはさすがのおいしさ。店内でも食べられますが、川沿いで食べる非日常さが楽しい。道頓堀川に面した裏側の入り口で。
▲川に目をやれば、こんな景色です

というわけで「道頓堀コナモンミュージアム」は、たこ焼きを知らない外国人はもちろん、地方からの観光客がたこ焼きの魅力をとことん知ることができる楽しい場所だと、関西人も納得です。
関西を訪れる際には、ぜひ、ここで、よく学び、よく遊び、よく食べてくださいね。そして、関西人も正しいたこ焼き文化を後世に伝えるために、一度は訪れるべきかもしれません。

※価格はすべて税込です。
中島美加

中島美加

甲子園在住のフリーランスライター。1988年、大学在学中に『月刊せんば』にてライターデビュー。卒業後は阪急電鉄の宣伝課にて沿線情報誌『TOKK』やポスターなど宣伝物を作成。1998年にフリーに。旅ネタが好きだが、現在、9歳の双子の育児でなかなか家を空けられず……地元商店街のPRや育児、高齢者向けのフリーペーパーなど新たなジャンルを開拓中。

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