COLUMN:

2016年国産HIP HOP振り返り座談会(後編)

【前編はコチラ

【座談会参加者個人チャート】

伊藤雄介(Amebreak)
「VOICE」/仙人掌
「生活日和」/ZORN
「Soul Long」/IO
「PHONETIC CODE」/underslowjams
「カタルシス」/SKY-HI
「B’ronx instrumentals」/MASS-HOLE & DJ SCRATCH NICE
“Life Style”/BAD HOP
“あの頃じゃねえ”/般若
“LOVE”/C.O.S.A. x KID FRESINO
“GET LIGHT”/KANDYTOWN
(順不同)

伊藤  あくまで個人的な傾向ですが、所謂“今っぽい”“メインストリーム”なアプローチの楽曲は主にYouTubeやSoundcloudで消費して、アルバム単位では、そういう流れと関係ない、音楽/ラップ作品として優れてるモノをヘビロテしてた気がします。その中でラップ作品としての構造性、リリックのクオリティ、志の高さを感じたのはZORNの「生活日和」とSKY-HIの「カタルシス」でしたね。中でも「生活日和」はHIP HOP的なグラマー性やワードを使わないで、これだけ普遍性と強度が高いHIP HOP作品を作れたことに感動しました。前作「Downtown」の頃は、ライミングに関してトップ・クラスで、テクニカルの極みに達してたと思うんですが、今回はそういう部分を抑えて普遍性の追求に突切ったし、その動きはなかなか出来ることじゃない。スキルに溺れることなく、逆に内容にも溺れることなく、そのバランスをしっかり取りながらラップとして聴かせられたのは、ZORNの凄みだと思いますね。地味な感触の作品だけど、相当凄いことをやってますよ。サウンド的には、サンプリング寄りの作品にフィールする場合が多かったんですが、そういったサウンドを提示してたKANDYTOWN関連の中で一枚を選ぶとなると、IOの「SOUL LONG」かな。KANDYTOWNの持ってるロマンティックさやメロウな部分を一番担保してるのは彼だと思うし、それが濃縮された、タイムレス且つ新しい感触の作品でした。インスト・アルバムですが、MASS-HOLE & DJ SCRATCH NICE「B’ronx instrumentals」は、鳥肌が立つような素晴らしい作品でした。

DJ NOBU  コレは、確かに超ヤバかった。

伊藤  僕は「MASS-HOLEは日本のTHE ALCHEMISTだ」と勝手に提唱してるんですが(笑)、それこそPRODIGYがラップしててもおかしくないような、骨太のブームバップ・サウンドでしたね。この人こそ世界に出てほしいと思ってるし、IOでのプロデュース・ワークも見事だったので、個人的な今年のベスト・プロデューサーかもしれない。
 
 
荏開津広
“Gangsta Drivin’”/DUTCH MONTANA
“雨のアムステルダム”/STONEDZ
“LIVE NOW feat. B.D.”/YOUNG JUJU
“EYES feat. IO & RYKEY”/SIMON
“SHADDAN”/MONYPETZJNKMN
“SLEEP WALKING”/SKY-HI x SALU
“グラセフ feat. Lunv Loyal”/ゆるふわギャング
“NEW DANCE”/S7ICKCHICKs
“Love is Over”/chelmico
“Complex Remix feat. Jinmenusagi & NIHA-C”/電波少女
(順不同)
次点:
“Live at agnes b.”/Hi’Spec

荏開津  DUTCH MONTANAさんはずっと善と悪の問題についてラップしてきた。その中でもこれが好きです。STONEDZ の“雨のアムステルダム”は、リリカルというなら2016年ダントツか、と。B.DさんはA TRIBE CALLED QUESTのラスト・アルバムもそうで、若い子より経験を積んだ大人が真価を味わいやすいラップが出て来てる。曲としてはIta-choさん、OMSBさんとの“Iranai”と同じく好きです。電波少女は、ネットから出てきただけでなくアップデートしているのだから、当然ヒップホップとしてもっと評価されても、と。KiLLa〜YENTOWNは音源大好きだし、ライヴすごくよかった。

DJ NOBU  kiLLaのライヴ、すごい良いですよね。俺もチャートで挙げてます。

荏開津  SKY-HI x SALUは、こうやってHIP HOPを伝えてくれて・・・というか、年甲斐もなくあがります(笑)。S7ICKCHICKsは渋谷を見せてくれて、単純にかっこいい。このリストの隠れテーマは“ソウル”なんですが、chelmicoにはそれを感じるんですよね。結構元ネタを知ってるように思って。

SEX山口  それは感じますね。

荏開津  本人たちの意識なんて分りっこないけど、ソウルを聞いている人はソウルが憑依する(笑)。そういう意味ではベストに入れられませんでしたが、iriさんの“rhythm”はそれこそ20年前のUAの同名曲“リズム”を好きだった人に是非聞いてほしい。数えきれないほど聞きました。
 
 

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