車の安全性は衝突安全と予防安全という大きく2つの考え方があります。
衝突安全は、衝突事故を起こした場合に車体を変形させる、エアバックを展開する等で乗員や歩行者に伝わる衝突エネルギーを車両で吸収する仕組みのことです。
予防安全は、スバルのアイサイト等に代表される、車両に搭載されたカメラやレーダーで周辺の危険を予知し、車両制御により危険を回避する仕組みです。
この2つの考え方を念頭において、以下を読み進めていただきたいと思います。
安全性の高い車とは、衝突安全性と予防安全性の高い車です。
しかし、それら性能で基準を満たさない、もしくは評価の極端に低い車は日本市場に出回らない為、性能は同程度の(高い)評価の車ばかりという事実はご存知でしょうか?
目次
今、国産車と外国車(ドイツ)に安全性の差は存在するのか?
一般的に、ドイツ車の安全性は高いと言われます。
しかし、本当にそうでしょうか。
あまり知られていないかもしれませんが、今、国内で販売される自動車の安全性は、JNCAP(自動車故対策機構)と呼ばれる機関で客観的に評価されています。
その評価結果はスマホから誰でも閲覧することが可能です。
これ以降はJNCAPの公式データを元に説明していきます。
結論を先に述べると、衝突予防安全の観点から、ドイツ車と日本車に差は無いと言ってよいでしょう。
衝突安全についてJNCAPの「自動車アセスメント」の結果を調べると国産車とドイツ車に大差が無いことが分かります。
例えば、乗員保護性能のフルラップ衝突の評点は以下のようになっています。
| 車種 | 運転席 | 助手席 |
| トヨタ・カローラフィールダー | 4点 | 4点 |
| ホンダ・グレイス | 4点 | 5点 |
| VW・ゴルフ | 4点 | 4点 |
ボディタイプが近しい車種を選んで比較すると、その差はほとんど無い事が分かります。ドイツ車より高い評点を獲得している国産車も散見されるほどです。
予防安全に関しても同様にJNCAPの「予防安全アセスメント」にて各車種に搭載されているシステムの評価結果が公表されています。
国産車の評価結果がほとんどで輸入車は少なく、輸入車は唯一、ミニクーパーSの評価結果が公表されています(2016年1時点)。
「日本車の方が予防安全性能は高いのでは?」という印象を受けますが、後に述べる通りドイツ車と日本車で差はありません。
衝突予防安全装置は新システムが頻繁に追加される上に、採用車種も拡大されている為、JNCAPの評価は輸入車にまで追いついていない様です。
JNCAPの予防安全評価では、
- 被害軽減ブレーキ
- はみ出し警告
- 後方視界情報
の3つが評価されています。
1の説明は割愛しますが、2は不注意により車が車線を逸脱した場合にドライバーに知らせる、3は後方視界情報をカメラやセンサー等で把握しドライバーを補助するシステムを評価しています。
日本車は、その性能の評価結果を点数や動画で確認できる様になっています。スバルのインプレッサは1と2が標準、3はオプションで設定されています。
一方でドイツ車の採用状況は各社HPで確認できますが、フォルクスワーゲンゴルフは3つ全て標準設定されています。
各社で機能的には同じであり、各システムのレーダー等、キーデバイスの部品サプライヤは世界的にも数社しか無く多くのシステムが共通しているのです。
よって、システムの世代が同じであればドイツ車と日本車で性能に差は無いと考えて良いでしょう。(システムの世代間性能差は、昨年後半から販売モデルに搭載されている新世代レーダーでは、歩行者検知機能が追加になっているので性能が向上しています)
ドアの閉まり音と車体強度はイコールなのか?
ではなぜ、ドイツ車は車体強度が高く、安全という「イメージ」があるのか、車に乗り込むシーンを思い浮かべて考えてみましょう。
低く硬い印象の音を立ててドアが開き、乗り込みドアを閉めると、重厚な閉まり音と共にスーっと静かになり、高い静粛性を感じる。これがドイツ車の印象ではないでしょうか?
このドアの重厚さがクルマの頑丈さであり、開閉音が軽い日本車をかるく見る愛好家もいるようですが、実はこのドア閉まり音と、車体強度はイコールではありません。
外界とキャビン内部を分断している印象を与えることで人が守られていると安心感を持ちます。その演出によって安全性が高いと感じるのです。。
しかし、ここでポイントとなっているのはドアを閉める時に発音する部品や、遮音性能の高さです。
ドアを閉めた時、ドアロックのかみ合い音やドアシールを叩く音がします。その振動を受けてドア外板が太鼓のように音を響かせ、重いドアほど重厚な音になります。
遮音性能はガラスの厚さ、ドアに取り付けられる内装材および遮音材の量が寄与します。
一般的に、高額な車ほど厚いガラスや多くの遮音材が使われます。また、本皮巻きの内装やシートのスイッチ等、ドアに搭載される部品が多く、重いドアになる傾向があります。
しかし、衝突安全性能はこれら部品だけでは確保できません。
カタログなどによく写真が載りますが、強度部材としてドア内部に鉄パイプやアルミの押出し材を設定し性能を確保しています。
日本の軽自動車等で軽いドア閉まり音のする車両でも、衝突安全性が確保されているのはJNCAPの評価の通りです。
自動ブレーキシステムは大丈夫なのか?
ご存知の様に昨今、世界中で自動車の知能化、自動化の開発が盛んです。
Googleはハンドルやアクセルペダルの無い自動運転車を開発している事で知られていますね。
しかし自動化が進むことに不安を感じている方は少なくないと思います。
車が暴走したり、必要なときにブレーキがからなかったりするリスクが少なからず有ると思うからではないでしょうか。
高度なシステムでも、人が経験し既に分かっている環境条件下でしか性能評価しません。
想定していない環境でどう動くかは分からないのです。
旅客機には自動操縦が既に採用されていますが、操縦士が廃止できないのはそういう理由からです。
無人で運用されているゆりかもめや工場のロボットも異常が発生すると非常停止ボタンで人が止めます。
機械は人が主体的に操縦しなければなりません。
自動ブレーキの信頼性
自動運転の要素技術である自動ブレーキも同じです。
想定された条件下で(ある意味限定された条件下で)安全に停止するシステムであるため、危険回避の「補助装置」に過ぎません。
過信は禁物ですが、それでも近年は技術革新が著しく、人間が対応できない咄嗟の緊急回避も可能になるほど進化を遂げています。
例えば高速道路走行中に前のトラックの積荷が崩れ落ちた場合、速度差が60km以下で30m以上車間距離が離れていれば緊急で回避できるアルゴリズムが三菱電機によって開発されています。
参照:http://eetimes.jp/ee/articles/1602/23/news032.html
市販車では自動ブレーキシステムをいち早く採用したスバルのアイサイト(Ver.3)が、対象物との速度差50km/h以内であれば衝突回避できるとメーカーから公表されています。
参照:スバル・アイサイト
また、衝突軽減ブレーキ搭載車の追突事故発生率が未装着車の3分の1にまで低減されたことが国土交通省から発表されました。
この発表は中部地方の大型貨物自動車の調査データが根拠となりますが、一般車両よりも移動時間や距離が長い貨物車両に大きな効果が現れていることがわかります。
プロでも起こしてしまうヒューマンエラーを未然に防止する予防安全システムは、近い将来多くの一般ドライバーの第2の目として活躍してくれるはずです。
車重とブレーキの関係性
自動ブレーキシステムが作動しない場合、自分で危険を回避しなければなりません。
車両重量が重い車は止まり難いという印象をお持ちかもしれませんが、JNCAPのデータを並べてみると、そういった関係性はありません。
公表されているデータは直進で100km/hまで加速し、フルブレーキしたときの制動距離ですが、Dry路面での制動距離はアルファードとヴィッツが同じです。車両重量に対してブレーキやタイヤを選択してブレーキ性能を市場要求にあわせ込む設計をする為です。
しかし、降雨時や雪道を想定した低μ路面での制動距離は重量の影響をどうしても受けてしまいます。
Dry/Wetの制動距離差は重量の重いアルファードで大きく、この差が大きいことでドライバーは停止位置を見誤り、衝突してしまいます。
また、重心の高いミニバンでは、制動中の車両姿勢も不安定になりがちです。
制動距離と質量の関係(JNCAP評価結果から抜粋)
| モデル | Dry制動距離(m) | Wet制動距離(m) | Dry/Wet差(m) | 車両重量(kg) |
| アルファード(2008) | 41.7 | 47.1 | 8.2 | 2485 |
| ボクシー(2014) | 41.8 | 44.6 | 2.8 | 2035 |
| カローラフィールダー(2012) | 44.5 | 46.2 | 1.7 | 1485 |
| ヴィッツ(2011) | 42.3 | 44・3 | 2.0 | 1355 |
乗って安全なクルマの選び方
お子さんのいらっしゃる家庭は特に、車の安全性は気になると思います。
ここでは筆者の家庭をモデルにして安全な車を選んでみたいと思います。
家族構成
4人家族で、こどもは4歳の長男と0歳の娘。車は予算や駐車スペースの関係で一家に1台です。
使用環境
私だけではなく、妻も幼稚園の送り迎え等で運転します。4人で乗る場合には私がドライバー、助手席に長男、後席に妻、娘です。
安全を優先した車選びをするために重視したい点を3つあげました。
A)運転のしやすさ
B)衝突安全性
C)家族それぞれが使い勝手の良いキャビンである
以下に解説をします。
A)運転のしやすさ
先に述べたように、予防安全システムの性能には限界があります。
現在の予防安全はあくまで補助システムであり、安全を確認して運転する主体はドライバーである人間です。
予防安全システムが無いor無効化されていても危険な状態になりにくい、いざというときにも回避しやすい車を選びます。
ポイントは、適度なサイズ、重心が低いこと、雪道等、悪路の走行安定性です。
よって、セダン→ハッチバック→ステーションワゴンの優先順位でボディタイプを選びます。
車両サイズはC、Dセグメントの車を選ぶと、奥さまも運転のしやすいサイズの車が選べると思います。
ここは好みになるかもしれませんが、予算に余裕があれば4WDを選択します。
B)衝突安全性
先に紹介したJNCAPの結果を見ていただくと、衝突安全性はセダン→ステーションワゴン→ハッチバックの順になるかと思います。
安全基準を満たすように設計されているものの、衝突時に潰れてエネルギー吸収する部分が大きいボディという観点で選びます。
また、公開されている試験内容にも注目してください。後面衝突の試験結果は運転席と助手席で首へのダメージを評価しているに過ぎません。
ミニバン等に設定されている3列目の後面衝突性能については客観的な評価結果はありません。
C)家族みんなの事を考えた使い勝手のよさ
みんなに居心地の良い場所を与えてあげる様に、キャビンを選びます。
ドライバー(父)は子どもに運転を邪魔されない空間を、長男は前席で外の様子と父との会話で退屈させないようにします。
後席では安全に子どもの世話ができる適度な広さがあり、手を伸ばせば荷室のものを取り出せる事。4人で会話ができる様、静粛性の高い車を選びます。
上記を踏まえつつ筆者の好みも加味すると、アウディA4アヴァント、スバルレボーグ、妻が運転が難しい様でしたら静粛性は下がりますがアウディA3、インプレッサを選びます。
走行性能はどちらも折り紙付きで、予防安全性能はスバルが採用実績が長く、より安心です。
ファミリー向けのミニバンですが、私はなるべく避けます。
ミニバンは規格内で最大で設計されます。その弊害で重心が高く、滑りやすい雪山の下り坂道や高速道路のカーブでは、通常のブレーキ操作でさえ車体がふらついて怖い思いをすることがあります。
急ハンドルを切ると、条件によっては横転のリスクが高くなるので幅の狭いミニバンは出来る限り避けたほうがいいでしょう。
広い室内は、こども達が動きたがるせいでチャイルドシートにおとなしく座ってくれなくなる可能性もあります。
子どもの居住性=広さではありませんのであまり頭頂の空間が広々とした車を選ぶのは注意しなくてはいけません。
きちんとしたセダンやワゴンなら、広いトランクルームが確保されているのでベビーカーなどの積み下ろしも苦労することはありません。
まとめ
近年、死亡事故の件数そのものは減少しつつありますが、幼い子供やお年寄りなどが傷つく痛ましい事故が無くなったわけではありません。
予防安全機能が搭載されたクルマであれば防げたであろう悲しい事故も頻繁に報じられています。
メーカー各社が衝突安全ボディや自動ブレーキシステムなど、新しい安全システムを導入する中、私たちユーザーは何を選んだらよいのか?
クルマ選びは燃費や走りの性能だけではなく、緊急時のブレーキ性能やぶつかったときに搭乗者や事故相手側を保護するボディも重要な要素です。
ドライバーや家族の守ってくれる安全性の高い車の選び方のヒントにしてください。