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「特養カット」はイヤ!…介護施設に赴く訪問理美容、高齢化で市場広がる

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「特養カット」はイヤ!…介護施設に赴く訪問理美容、高齢化で市場広がる
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有料老人ホームで、お年寄りの髪を切る美容師(大阪市港区で)

 急速な高齢化を背景に、お年寄りの暮らす自宅や介護施設に赴いて髪を切る「訪問理美容」の市場が拡大している。理美容師は予約が入った時だけ出張するため、美容室などで毎日フルタイムで働く必要がない。結婚や出産で退職した女性美容師らの復職の受け皿としても注目されている。

 「根もとの白髪が目立たないように」。大阪市港区の有料老人ホームで、入居女性(91)が注文を付けた。

 相手はトミーズ・スター社(東京)が週2回派遣している訪問理美容の美容師、中村勇貴さん(27)だ。中村さんは「笑顔になってもらえるのでやりがいを感じる」と語る。ホームを運営するオリックス・リビングは「入所前の生活と同じように好きな髪形で生活してもらいたい」との考えから、プロの美容師を招いている。

 福祉施設では従来、ボランティアが高齢者の散髪をすることが多く、定番の短い髪形は“特養カット”と呼ばれた。しかし、高度成長期やバブル期を経験した世代は、生活の質を重視する考え方が強い。お金を払ってでも美容師にカットしてほしい人が多いという。

 近畿2府4県などで訪問理美容を手がける「ジェイアンドシー」(大阪市福島区)の吉末栄子取締役は「ここ5年で訪問理美容の需要が確実に拡大している」と指摘する。2012年に参入した日本介護システム(同市中央区)の大友俊雄社長も「売り上げは毎年5割増のペース」と話す。

 調査会社の矢野経済研究所によると、15年度の理美容市場は前年度比0・5%減の2兆1658億円だった。16年度も縮小し、5年前と比べ3・8%減の見通しだ。そんな中、訪問理美容は貴重な成長分野で、市場規模が100億円に達したとの見方もある。

 訪問理美容は働きやすい職場としても関心を集めている。美容室では1日に十数時間働くことも珍しくないが、店舗で待機する必要がない。結婚や出産を機に離職した美容師や理容師も仕事と家庭を両立しやすく、復職のハードルが低い。

 リクルートジョブズ・ジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子氏は「きれいになりたいお年寄りの要望をかなえる訪問理美容は、美容師に大きな『やりがい』を提供している。予約がある時だけ働くことも可能で、理容師や美容師を確保しやすく、今後も市場が拡大するだろう」と話している。(栗原守)

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