在日コリアンへの差別や排除をあおるヘイトスピーチを巡り、大阪地裁(森純子裁判長)は20日、大阪市生野区でデモを主催した大阪府内の男性に対し、同区のNPO法人の事務所から半径600メートル以内でのデモを禁止する仮処分決定を出した。法人が13日に仮処分を申し立てていた。禁止圏内には、JR鶴橋駅や在日コリアンが多く暮らすコリアタウンが含まれる。
法人は民族教育などを進める「コリアNGOセンター」(生野区桃谷3)。法人によると、ヘイトスピーチ対策法が成立した今年5月以降、同種の仮処分決定は、6月の横浜地裁川崎支部に続き全国で2例目。
申立書によると、「在日特権を許さない市民の会」元幹部の男性がネット上で、今月29日に鶴橋駅周辺で「防犯パトロール」と称したヘイトスピーチデモを行うと予告した。
法人は大阪市が国内で最も多くの在日コリアンが暮らす自治体だとしたうえで、「出自を理由に差別されない権利の保護は極めて重要」と主張。デモは人格権を侵害するとして差し止めを求めた。
大阪市では7月、ヘイトスピーチをした団体などの公表を盛り込んだ全国初の条例が施行されたが、対策法と同様、事前規制や罰則の規定はない。
法人の郭辰雄代表理事は「今回の司法判断は画期的で、ヘイトスピーチ防止に大きな弾みがつく」。元幹部の男性は「今回の活動は防犯パトロール。ヘイトスピーチには当たらない」とコメントした。【原田啓之、向畑泰司】