それから二週間も立った時のことであろうか?国語の時間に読書感想文の話題となった。
先生曰く、「今年のこのクラスで一人とても感心する感想文を出した人がいる。名前を呼ぶからぜひここで朗読してほしい。」
そして呼ばれたのはぼくが感想文の書き方を指南したあいつである。
「まさか?」と言うぼくの思いをよそに、あいつは渋々教壇の前に立って、自分の感想文を朗読し始めた。
題:「漱石の文学」
「漱石の文学は彼が明治の頃、英国留学から失意のうちに帰朝し、精神を患った頃に始まったものであるが・・・。」
ぼくは「あいつ、まさか??」と思っていたら、
「ここに漱石直筆の原稿があるので見てみよう。場面は赤シャツとのだと一緒に釣りへ出かける場面である。」
「赤シャツのおかげで、甚だゆかひだ。・・・(旧仮名遣い)」
これを見ると漱石が実に軽快に筆を進めていることがわかる・・・。
そう、やつはぼくが「あとがきを参考にして書けばいい。」と言ったのを、何をトチ狂ったのか、あとがきを丸写しにしたのだ。その数、原稿用紙で数十枚!
ぼくは、「バカもここまで来たら国宝ものだ。」と思った。
だいたいどこの中学生が漱石直筆の原稿を持っているのだろう?そんな奴がいるなら会ってみたい。お前どこの貴族さま、あるいは学者さまの御曹司だ?
そいつは原稿用紙10枚、漢字練習の宿題を仰せつかった。また、ぼくも入れ知恵した罰として、同じ刑罰に処せられることとなった。
バカモーーーーン!(磯野波平さんの声で)