IS、世界遺産都市シリア・パルミラを再制圧
- 2016年12月12日
過激派組織「イスラム国」(IS)は11日、シリア中部の世界遺産都市パルミラを約10カ月ぶりに制圧した。ロシアによる空爆で退却させたとみられた数時間後のことだった。
パルミラのあるホムス県のタラル・バラジ知事は、政府軍が市外で再び態勢を整え、新たな攻撃を仕掛ける準備をしていると述べた。
ISはパルミラを昨年5月から今年3月まで支配していた。
ISはシリア政府が北部のアレッポでの戦闘に注力する間隙をついて、パルミラを攻めてきたと、特派員らは指摘する。
バラジ知事は政府軍のパルミラからの撤退を認めたが、「テロリストが居座らないように軍はあらゆる手を尽くしている」と語った。
パルミラ市内の活動家たちによると、アサド大統領に忠誠を誓う勢力が残っていないか、IS戦闘員が街をしらみつぶしに調べているという。
先週攻撃を始めたISは10日に、パルミラ市街と近くの国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された遺跡に入った。
英国を本拠とする「シリア人権監視団」は11日朝、ロシア軍機による「激しい」空爆によってISがパルミラ郊外の果樹園に撤退を余儀なくされたと述べた。
ロシア国防省は、今回の作戦で64回空爆を実施し、300人以上の戦闘員を殺害したとした。
シリア軍はアレッポから一部の戦力をパルミラに、援軍として再配置したとされる。
シリア人権監視団はその後、IS戦闘員らが再び市内に攻め入り、政府軍は市の南に撤退しなくてはならなかったと伝えた。
IS戦闘員は爆発物を積んだ自動車で突っ込んだり、迫撃砲で攻撃してきたという。
パルミラの近くには油田があることから、ISにとって戦略的な価値を持つとみられる。
ISはパルミラと近くのタドムルを掌握していた10カ月間、遺跡で多くの建造物を破壊したほか、パルミラ博物館長だったハレド・アサド氏を斬首して殺害した。
2000年前に建造された2つの神殿と凱旋(がいせん)門、塔墓などが破壊された。
シリア文化省で遺跡保存を担当するマムーン・アブドルカリム氏は、パルミラ博物館の所蔵品は首都ダマスカスに移したと述べたが、遺跡が再び破壊されることへの懸念を示した。
アブドルカリム氏はAP通信に対し、「もっと復讐心に燃えているかもしれない」と語った。
ISは隣国イラクでも、イスラム教以前の遺跡をいくつか破壊している。ISはこのような遺跡を偶像崇拝にあたると考えている。
ISがパルミラに攻勢をかけるなかで、シリア軍はアレッポで反政府勢力が依然として掌握する地域の奪還に注力している。
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反政府勢力は10日、アレッポ市内でまだ抑えているいくつかの小さな地域について、政府軍の進攻を食い止めたと語った。
ある司令官は、政府軍の攻撃が弱まったのは、パルミラへの一部再配置が影響している可能性があると語った。
しかし、ロシアの支援を受けるシリア政府は、反政府勢力地域への進攻を続けており、アレッポ市内の93%を掌握済みと伝えられる。
反政府勢力の幹部はロイター通信に対し、掌握地域が縮小し続けるなか、「死ぬか降伏するか」の選択を迫られていると語った。
ジョン・ケリー米国務長官は10日に、シリア政府とロシア軍に対し、「少しは寛大な態度を示すべきだ」と訴えた。
ジュネーブで協議を続ける米ロ両国は、アレッポからの民間人と反政府勢力の撤退をめぐって交渉しているが、専門家らは合意は難しいとみている。