勤勉の美徳をなげうってカジノ資本主義に走るのか
自民党が何が何でも今国会でカジノ法案を成立させようと、なりふり構わず突き進んでいるのは、TPPが潰れ、北方領土交渉も行き詰まるなど、安倍外交が八方ふさがりで、何かに夢中になっていないと居ても立ってもいられないという強迫観念のなせる業であるということは、理解できる。
しかしこの件は、拙速に扱うにはあまりにも重大ないくつもの問題をはらんでいる。第1は文明論の次元で、米国式の電子的金融資本主義のふしだらがリーマン・ショックで破裂して、「資本主義の終焉」(水野和夫著)が宣告される一方、額に汗して働く者が報われるようなルールづくりに希望を見いだそうとする「資本主義を救え」論(ロバート・ライシュ、邦訳著書名は「最後の資本主義」)の真剣な模索もある。その中で、誰よりも勤勉に、丹精込めてモノをつくることに長けていると尊敬を集めてきたこの国は、その評判をなげうって「カジノ資本主義」の道を進むと宣言するのだろうか。