死んだ2羽のコクチョウが飼育されていたケージ=秋田市大森山動物園提供
記者会見で、感染拡大への懸念を語る大森山動物園の小松守園長=秋田県庁で2016年11月17日、池田一生撮影
秋田市大森山動物園、危機感 比内鶏など鳥132羽を殺処分
秋田市大森山動物園は17日、新たにコクチョウ1羽が死に、簡易検査でA型インフルエンザの陽性反応が出たと発表した。小松守園長は「2羽目が出たことを重大に受け止めている。感染の可能性は十分に高い」と危機感をあらわにした。同園は拡大を防ぐため、この日までに飼育していた比内鶏などの鳥132羽を殺処分した。県内の養鶏農家からは「感染は防ぎようがない」と不安の声が聞かれた。【池田一生】
同園によると、新たに死んだコクチョウは、15日に簡易検査で陽性反応が確認された1羽目のコクチョウと同じ園内の動物病院のケージで飼われていた。17日午前9時45分ごろ、獣医師が死んでいるのを見つけた。このコクチョウは血液中の酸素が欠乏してクチバシの血管などが青くなる「チアノーゼ」という感染時特有の症状が出ていた。
このコクチョウは15日にも簡易検査を行ったが、その時は陰性だった。確定検査のため、同園は1羽目と同様に北海道大へ送る。
同園では10月末現在で、37種188羽の鳥類を飼育。感染拡大の可能性が高まったとして、16、17の両日で比内鶏7羽やコクチョウ6羽、モモイロペリカン4羽、アヒル4羽、キジ3羽などを殺処分。飼育数に含めていないヒヨコ100羽も処分した。
秋田県庁に続き、秋田市役所で記者会見した小松園長は「ショックなことだが、苦渋の決断だった」と述べた。
今後、確定検査で陽性が出たり、感染が拡大したりすれば、同園は他の鳥類も処分するかどうかの判断を迫られる。同園は絶滅危惧種のニホンイヌワシ9羽を飼育している。
同園は16日から臨時休園し、期間は1羽目の確定検査の結果が出るまでとしていたが、休園期間はさらに延びる見通しという。
「防ぎようがない」頭を抱える養鶏農家
感染拡大の懸念が高まる中、秋田県内で養鶏農家を営む男性は、鳥インフルエンザの感染を防ぐため、外部からの人の出入りを制限しているほか、石灰の散布や車両の消毒などをしているという。しかし「他の病気はワクチンなどである程度対応できるが、インフルエンザは防ぎようがない。感染ルートが全く予想できず、限界がある」と頭を抱える。
県畜産振興課によると、鶏から鳥インフルエンザウイルスが検出されても、卵や肉を食べて人に感染することはないという。男性は「むやみに風評被害が広がり、秋田の鶏ブランドのイメージ低下につながらなければよいが……」と不安げに話した。【川村咲平】