どうも、ゴトーだ。
最近は格闘技記事の反応が良いということで、今回は選手の紹介記事を書いてみることにした。
ピックアップする選手は、総合格闘技史上最大のスターとの呼び声も高いコナー・マクレガーだ。
日本ではまだまだ一般的に認知されている選手ではないが、世界を魅了するこの男はぜひ知ってもらいたいので、興味のある方は読んでいただければ幸いだ。
コナー・マクレガーについて
UFC205の記事でも取り上げたこのコナー・マクレガーという男。
現在UFCのフェザー級およびライト級の2階級王者として君臨している。
実力も凄いがもっと凄いのは圧倒的なスター性とカリスマ性だ。
それは具体的に何を示すのかというと、観客やファンが何をすれば喜び興味を持ってくれているのかを完璧に理解し、プロフェッショナルに徹するということだろう。
マクレガーの出場する大会はPPV(有料放送)が飛ぶように売れ、マクレガーの出場ボーナスとして大金が入ることになる。
PPV料金は決して安くはなく、SD画質で49.99ドル、HD画質で59.99ドルとなっているが、今年8月のネイト・ディアス戦は165万件のPPVを売り上げている。
1件あたり6000円とすると、PPV売上は1大会で約100億円というとんでもない規模になっている。
このような高い売上はUFCが恒常的に叩き出しているわけではなく、コナー・マクレガーのようなスター選手が遺恨のある試合を行った場合に跳ね上がることになる。
マクレガーは試合のファイトマネーの他に、PPVが1件売れるたびに一定のボーナスを受け取れる権利があり、2015年のジョゼ・アルド戦はわずか13秒でのKO勝利によって約13億円を稼いでいる。
いくらUFCの景気が良いと言ってもここまでもらっている選手はコナー・マクレガーただ一人だ。
それはマクレガーのスター性や言動に惹かれて、高いお金を払ってでもマクレガーの試合を見たいという人が多いことが要因になっている。
PPVとは
先程PPVという言葉を何気なく使っていたが、その言葉に聞きなれない人がいるかもしれないので説明したい。
PPVとは「Pay Per View」の略で直訳すると「見るたびに支払う」、すなわち一つの映像コンテンツに料金を支払って見ることだ。
アメリカではボクシングを含む格闘技イベントやコンサートなど、不定期に行われるイベントに対してはPPVを購入する文化があり、UFCはPPVの売上が主な収入源となっている。
コナー・マクレガーの人気
マクレガーの人気は格闘技ブームだった時代の日本の格闘家とは比較にならないものがある。
母国のアイルランドでは「最も検索されたアスリート」で第1位、「最も検索された人物」で第2位、「最も検索されたワード」で第3位となるなど、まさに英雄的な扱いを受けている
(ちなみにこの年の1位は「ラグビーワールドカップ」)
2015年には2200万ドル(23億円)を稼いでおり、自宅はラスベガスにある6つのリビングにプール付きのマック・マンションに住んでいる。
まあ冷静なツッコミをすると、年収は多いことは多いのだが、日本人アスリートでも田中将大や錦織圭の方が年収は多くて、彼らはそこまで豪遊していないのを考えると、金の使い方もまさにスターだ。
アメリカンスポーツで活躍する選手は自己破産する選手が異常に多いのもよく分かるといえば分かる。
実はマクレガーの人気が爆発したのはそれほど前のことではない。
具体的な時期で言うと2015年の7月あたりだから、この記事を書いている時まで16ヶ月しか経過していない。
それでも今や押しも押されぬUFCのスターになっているのだから、一夜にしてスターが生まれるアメリカンスポーツのロマンが感じられる。
極貧からのサクセスストーリー
そんなマクレガーだが、UFCに参戦する前は貧乏生活をしていたというのも、よりマクレガーを引き立てるエピソードだ。
2013年からUFCに参戦しているが、その前は日本で言うところの生活保護に当たる福祉手当を週188ユーロ受けながら生活していたという。
そこからたった2年でスターダムを駆け上がり、その直後にはあのマック・マンションを購入しているところが夢にあふれている。
まあ将来破産する匂いがしなくもないが、いかにもなサクセスストーリーを現代で体現しているところに魅力を感じる。
独特なファイトスタイル
現代の総合格闘技ではフットワークを使いながら金網を広く使い、打撃やタックルでポイントを奪っていくスタイルが一般的だが、マクレガーのスタイルはそれとは一線を画している。
幼少期にはキックボクシングを、12歳からボクシングに取り組んでいた経験を活かして、独特な間合いから繰り出す左のパンチと、回転系の多い蹴り技を武器とするストライカーで、極端に打撃に偏ったスタイルになっている。
打撃の間合いがとにかく広く、どこからでもパンチやキックが飛んできそうな雰囲気を持っており、あの圧力に度々相手が屈してしまう。
左のパンチの当て勘は間違いなく世界ナンバーワンで、対戦相手は警戒していて貰い、度々KOを奪ってきた。
豪腕のイメージがあるかもしれないが、むしろ力の抜けたノビのあるパンチという印象で、チャンスとなるや淀みないコンビネーションで相手を攻め立てる。
これまでUFCでは10戦して9勝、そのうち7KOと高いKO率を誇っていて、KOした試合は全てが2R以内と、名勝負製造機でもある。
名勝負をピックアップ
vs チャド・メンデス - 2015/7/11
UFC参戦当初のマクレガーはむしろその実力よりも派手な言動の方が目立っていた。
それでもド派手なKOで実力者を次々と破っていったことでタイトルマッチまでこぎつけている。
当時の王者は7度の防衛を達成していた絶対王者のジョゼ・アルド。ビッグマウスのマクレガーの真価が問われる試合になるはずだったが、試合直前の怪我によりアルドが欠場。
それによりマクレガーの当時の階級であったフェザー級のランキング1位のチャド・メンデスとの暫定王者決定戦が組まれることになった。
チャド・メンデスは前年に王者のアルドと互角の試合を演じている強豪で、メンデスに勝利すればいよいよ本物だということが照明されることになる。
またマクレガーは欠場したアルドに対して、執拗に「あいつは怖じ気付いて逃げた」とメディアを通じて煽りまくり、次に控えているであろうアルド戦を見据えて、高い注目が集まることになった。
試合は序盤からマクレガーの左のストレートが効果的に入り、メンデスを何度もグラつかせる。
メンデスも負けじと右ストレートを返すが、マクレガーは動じず危険な攻撃を繰り出してくる。
2Rに入るとレスリングに長けるメンデスがテイクダウンを奪い、グラウンドから勝機を見出すも、一瞬のスキをついてエスケープし、立ち上がり際にメンデスの顔面にパンチがクリーンヒット。
そのまま畳み掛けるとメンデスがたまらずダウン。パウンドを打ち込んでレフェリーストップを呼び込んだ。
これでマクレガーは暫定王者となり、アルドを倒すのみとなった。
vs ジョゼ・アルド - 2015/12/12
前の試合でジョゼ・アルドが肋骨の怪我で欠場した時からマクレガーが散々アルドを挑発しまくり、試合が決まってからも「またアルドは逃げ出すだろう」とその挑発は留まることを知らなかった。
アルドも負けじと挑発するも、メディアの使い方はマクレガーの方が一枚も二枚も上手でアルドはむしろこれで平静を失うことになる。
アルドは舌戦こそ負けていたものの、2005年から負け無しの18連勝で、UFCでも7度の防衛に成功していた絶対王者だ。
オッズではほぼ五分でどちらが勝つかの予想は二分されていた。
ただ結果的に見ればこの試合はそういった技術や実力を越えたような試合になってしまった。
アルドはこの試合の雰囲気に飲まれてしまったのか、試合開始直後にマクレガーの左ストレートを貰いわずか13秒でKOされている。
こうしてコナー・マクレガーは一度目のタイトルとしてフェザー級の正規王者となった。
この試合を機にアルドは引退報道が出たり、現在では離脱を示唆するような発言をするなどマクレガーの光にすっぽりを隠れる形になってしまった。
ネイト・ディアスとの2度の対戦
ところでこのハゲたジャイアンみたいな奴は、UFCを運営するズッファ社の名物社長で、ダナ・ホワイトという男だ。
記者会見や計量で対戦相手同士が乱闘寸前になるといつも割って入るが、社長自ら入るあたりUFCのエンターテイメント色の強さが分かる。
ジョゼ・アルド戦で正規のライト級王者になったマクレガーはなんと一度も防衛戦をすることなく、階級を一つ上げて、いきなりライト級のタイトルマッチを行うことになる。
相手はアンソニー・ペティスを破って王者になったハファエル・ドス・アンジョスだ。
しかしアルドのときと同じようにまたもドス・アンジョスが大会3週間前に怪我により欠場。
この時また舌戦が繰り広げられたのは言うまでもない。
代わりに用意された相手は悪童のネイト・ディアスだ。
ネイト・ディアスはニック・ディアスの弟で、兄譲りの気性の悪さで度々乱闘騒ぎになることでも知られている。
さらにこの試合は大会直前にディアスの出場が決まったことで、本来のライト級よりもさらに重いウェルター級の試合となっている。
もともとフェザー級のマクレガーにとっては12キロも重い無謀なマッチメイクだが、マクレガーはいつものように強気な姿勢を崩さずに試合を受けている。
実はこの試合は2度に渡って行われた。
1戦目は1Rにマクレガーが得意の左のパンチを度々叩き込んでネイトを大流血に追い込むが、2Rにネイトのパンチを貰うと失速し、そのまま攻め立てられてチョークでタップアウト負けをしている。
これはマクレガーのUFCキャリアにおいて唯一の負けだ。
ただしこれは本来の階級ではないウェルター級というだけあってマクレガーの評価が落ちることはなかった。
いくらでも言い訳ができる試合だが、マクレガーが次に選んだのはまたも同じウェルター級でのネイト・ディアス戦だった。
この試合でも1戦目と同様、前半はマクレガーのパンチがヒットして優勢に進める。しかし徐々にスタミナ切れをおこし、ネイトの猛攻にあって棒立ちになる場面も目立つ。
後半は、技術ではなく気力と根性の試合となり、何とかしのぎきったマクレガーが前半のリードを守って判定勝ちを収めた。
舌戦だけでなく乱闘騒ぎまで加わったこの試合はこれまでになく盛り上がり、UFC史上最高の165万件のPPV売上となった。
vs エディ・アルバレス - 2016/11/12
ネイトとの決着をつけたマクレガーの次の標的なライト級の現王者、エディ・アルバレスだ。
前に流れたドス・アンジョスはどこにいったのかというと、何か普通にアルバレスに負けてしまった。
アルバレスは日本のDREAMでも活躍した選手で、ボクシングとレスリングをミックスさせた、現代格闘技の申し子のような存在だ。
以前は激戦ファイターだったが、ここのところ賢さがついてリスクを取らずにきっちり勝つことを覚えている。
お前いつも乱闘してんな…という感じにそろそろなりつつあるが、この試合もまた乱闘騒ぎで注目を集めた。
それだけマクレガーがメディアの使い方が上手く、対戦相手はそれを聞いてフラストレーションを貯めているのだろう。
前の2試合はウェルター級での試合で、まだライト級での実績がないマクレガーだったが、この試合のオッズはマクレガー有利となっていた。
マクレガーの強さというのは単に格闘家として優れているのではなく、独特な空気を醸し出し、それを味方につけるようなところにある。
試合はマクレガーの一方的なものとなった。
序盤から得意の左ストレートが度々ヒットさせて、1Rに3度のダウンを奪うと、2Rもペースは変わることなく攻め立て、流れるような4連打のコンビネーションでアルバレスを完全KOしている。
この試合でマクレガーはライト級王者となり、史上3人目の2階級制覇、同時に保持するのは史上初の快挙となっている。
マクレガーがここに来るまでに長い年月が経ったようにも感じられるが、チャド・メンデス戦からは1年あまりしか経っていないことに驚かされる。
マクレガーの動画を紹介
おすすめ動画をピックアップ…といきたいのだが、UFCは動画の権利に非常に厳しくてYouTubeに試合映像はほとんど残っていない。
前にジョゼ・アルド戦などは公式がアップしていたのだが、今はインタビューとかしか残っていないのが残念だ。
エディ・アルバレス戦終了後のオクタゴンインタビュー
ネイト・ディアスとのペットボトルを投げ合う乱闘
ジョゼ・アルドに対する度重なる挑発
日本語で検索するとあまりヒットしないが、YouTubeで「conor mcgregor」と検索すれば関連動画がたくさん見つかるので興味があれば調べてみて欲しい。
メイウェザー戦の噂も?
ボクシング界のスーパースター、フロイド・メイウェザーとの対戦も噂されたこともある。
メイウェザーといえば49戦49勝のパーフェクトな戦績を残したまま引退し、ニックネームは「金の亡者」を意味するMoneyといういかにもな王者だ。
もちろんこれは実現しなかったが、この噂を流したのは何とメイウェザー自身で、この試合がもし組まれればパッキャオ戦を超えるような収入が得られるという参段があったのかもしれない。
アメリカでは歴史ある格闘技のボクシングに対して、新興格闘技のUFCがそれを上回る人気を得ていて、お互いを意識し合うこともよくある。
女性のロンダ・ラウジーが全米で旋風を起こした時に、総合格闘技で対戦すればロンダ・ラウジーがメイウェザーに勝つだろという世論が起こるくらいにヒートアップしたこともある。
逆にメイウェザーがこれを利用して、マクレガーとの対戦をこぎつけようとしたという経緯だ。
結果的にこれは現実味のある話にはならなかったが、マクレガーが総合格闘技の枠組みを越えたスターであることを証明したエピソードでもある。