社会の高齢化を背景に、高齢ドライバーの事故が相次いでいる。10月には、横浜市港南区で、87歳の男が運転する軽トラックが児童の列に突っ込み、小学1年の男児が死亡した。神奈川県警によると、男は「どうやってぶつかったか覚えていない」と話したという。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で逮捕された男について横浜地検は認知症の有無などを調べる。
75歳以上のドライバーによる死亡事故は2014年は471件起きた。10年前の04年以降、毎年400件を超えている。全体の死亡事故件数に対する割合は04年は6.2%だったが、14年は12.9%に達した。
15年末に運転免許証を保有している65歳以上の高齢者は約1710万人いる。警察庁は運転に不安を覚える高齢者に免許証の返納を促しているが、同年に自主返納した65歳以上の高齢者は約27万人にとどまる。
警察庁は認知症に重点を置いた対策も進めている。現行では、75歳以上の免許更新時に認知機能検査を行い、「認知症の恐れがある」(1分類)▽「認知機能低下の恐れがある」(2分類)▽「低下の恐れがない」(3分類)に分ける制度を実施。1分類のドライバーが交通違反をすると医師の診断を受けさせ、認知症と診断されると免許を取り消す。
しかし1分類でも交通違反がなければ免許取り消しがないうえ、2、3分類については違反をしても次の免許更新時まで認知症検査を受けることがないという点に、チェック体制の「甘さ」があると指摘されている。このため来年3月施行の改正道交法では、1分類であれば交通違反がなくても医師の診断を求め、2、3分類についても交通違反があれば診断を義務づけるという内容に制度を変えた。
警察庁幹部は「高齢者の事故防止は難しい問題だが、改正する制度のもとで安全対策の徹底を図っていきたい」と話す。【川上晃弘、鈴木一生】