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時論公論

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「原子力大国に学ぶ 核のゴミ処分」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

原発を持つ多くの国が核のゴミの処分に行き詰る中、
フィンランド、スウェーデンに続いてフランスが処分場にメドをつけた。
日本が学ぶべき点はないのか。
フランスと日本を比較しながら水野倫之解説委員が解説。

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核のゴミは、原発の使用済みの核燃料や、それを再処理した後にでる放射性の廃液。
近寄れば10数秒で死に至る強い放射線が出ており、放射能レベルが下がるまで10万年隔離する必要があるとされ、各国は地下深くに処分目指している。

しかし安全性への懸念から処分場の確保は難航し、これまで決まったのはフィンランドとスウェーデンだけ。そこにフランスもようやくメドをつけた。
フランスはオイルショックを契機に原発への依存度を高め、58基で電力の75%をまかなう原子力大国。国民からも一定の理解。
毎年1,000t以上の使用済み燃料が発生し、すべて再処理工場で処理されて、高レベル廃棄物が専用施設の床下に貯蔵されている。

その高レベル廃棄物の最終処分場が計画されているのはドイツとの国境近くのビュール村周辺。地下400mの粘土層に研究施設があり、最終処分を行う国の機関ANDRAが技術開発。
核のゴミの処分で最も問題になるのは地下水。放射性物質が溶け出して地上に運ばれ、環境に影響を及ぼす恐れがあるから。
その点この粘土層はほとんど水を通さず、地震もないため水の通り道となる亀裂もない。長期間放射性物質を閉じ込めることが可能で、安全性は確保されるとANDRAは言う。

また廃棄物を入れる容器の両隅にはセラミックス製の突起物。
技術的な問題が発生した場合や、より安全な処分方法が開発された場合に備え、あとで取り出せるよう、滑りを良くするためのものだということ。
後戻りできる技術があれば住民の安心感が高まると言い、ANDRAでは2025年からの処分開始を目指す。

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ただフランスも最初から順調だったわけではない。
1980年代、住民の了解なく地質調査を進めようとしたため大規模な反対が起こり、調査断念。
そこでフランス政府は政策の全面見直しに。
透明性を高めるため、まず処分地選定の手続きを法律で細かく定めた。
研究の工程を示し、地下の研究施設を作ること、公聴会の開催などを明確に。

また住民の信頼を得るため、実施機関を改革。
推進機関の一部だったANDRAを独立させ、地下研究施設を運営して、技術力を高めていくことに。

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こうした改革によって複数の自治体が関心。その中から粘土層があるビュール村に地下研究施設がつくられ、雇用の場ができ、ANDRAも住民の見学会を行うなどして信頼関係を築き、最終的にビュール村周辺に決定。

水を通さない粘土層に恵まれたフランスは、手続きを明確にし、実施機関の専門性を高めて30年かけてようやく処分地選定にたどり着いた。

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これに対してフランスと同様50基を超える原発を抱えていた日本は、福島の事故まで全く進展がなかった。
政府は処分の実施機関として原子力発電環境整備機構をつくり、文献調査、ボーリングと段階的に調査を進めることを決めた。しかし根強い不安から調査を受け入れる自治体はなく問題は先送りされ続けた。
しかし福島の事故で使用済み燃料の危険性が認識されたのを受け、重い腰を上げ調査の前段階として、科学的な有望地を示す方針。
火山や活断層隆起浸食がある地域を「適性の低い地域」として外し、残りを「適正のある地域」に。さらに輸送しやすさを考え港から20キロ以内を「より適正が高い地域」とし、日本を3色に分ける。

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政府は地図を来月提示する方針。
核のゴミ問題に国民の関心が高まることが考えられ、そのこと自体は評価できるが、スタートラインに立ったに過ぎない。

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いくら政府が有望地と言っても、日本にはフランスのような水を通さない粘土層があるわけではなく、地震も多い。それでも地下処分ができるのか納得のいく説明が必要。
また有望地を提示した後、どんな手順で文献調査に進んでいくのか、その後の手順や手続きが具体的に示されていない。
そもそも有望地という言い方自体、推進サイド目線の言葉で、言われた地域では絶望感から鼻から処分場を拒否するところが出てくるかも。
フランスのように期限を区切るかどうかは別としても、政府や機構はどんな段取りで何をしていくのか、明確にできるかも焦点。

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ただ今後手続きを進めていく上でも必要となってくるのが地域との信頼関係。
フランスでは実施機関が地下施設を持って研究開発を行い、住民に見学もしてもらっていた。機構は自前の研究施設を持たない。自前の研究施設を持つことを含め、最終処分を担う機構の信頼を如何に高めていくか検討を。

(水野 倫之  解説委員)

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