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ボブ・ディランに言いたいこと

言いたいことを、悔いを残さず言うためには

2016年11月11日(金)

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会議で自分の意見をうまく言えません。その場の流れと異なるほどに、言い出す勇気は出ず…。様々な意見で議論を深めることの意義は分かっているつもりですが、いざ「異論」を発するとなると、なかなか…。仕事の経験を積めばできるようになるのではとも思っていましたが、そういうわけでもなさそうで…。(30代男性)

遙から

(写真=AP/アフロ)

 その場に流されず、本当の自分の意見を言うというのは実に難しいものだ。喋ることを本業としている私自身もいまだに反省することは少なくない。会議で「それって、おかしいですよね」と切り出すだけでも度胸が要るのに、そのうえ、論理立てた異論で他人を説得できる話術、となるとそうそうできるものではない。意を決して「おかしいのでは?」と言葉を発しても、その後の話があやふやであれば「いったい何が言いたいんだ」と一蹴されて撃沈。そんなものではないか。

苦い思い

 先日、私はそれで苦い思いをした。いや正直に書く。いまだにその思いが続いているので、書くことで、なぜ自分がその本音をあの時、あの瞬間、言えなかったのかを解明し、それが私のみならず、「意見を言いたい」人のヒントになればと願う。

 ある番組で、「ボブ・ディランが2週間後になってノーベル賞受賞について喜びのコメントを出した」ことをテーマとしたトークだった。受賞発表後、沈黙を守る彼に対し、人々がその解釈に首を傾げ続けていた。それが忘れた頃に「信じられない。嬉しい」といったようなコメントが出た。皆、キョトンとした。

 私はこのノーベル賞というものが、受賞者に断る選択肢がない一方的な受賞だということをそれまで知らなかった。芥川賞とか直木賞なら「決定しましたがお受けになられますか?」という儀礼的な問いかけがあり、受賞が決まる。が、ノーベル賞は「決まりました」となれば承諾の有無なく名前が刻まれるという。

 受賞者に受けるか否かの選択肢がないことに非常に違和感を覚え、途端にボブ・ディランの気持ちが理解できた気がした。

 フォークであれロックであれ、権力や権威的なものに対し、反発する潮流が原点に流れていると私は理解してきた。ボブ・ディランがその神様のような人物なら、ひとつの世界的権威になっている賞に対し、そこでの評価を“一方的に”あてがわれ、そこにノーを言ったところで「選ばれた人」として名を刻まれてしまうのであれば、もはや、ノーを言う意味もない。イエスといえば権威に追随したことになる。やれやれ、やっかいなことに巻き込まれるのはゴメンだ。なら、無視――。

「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」のバックナンバー

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「ボブ・ディランに言いたいこと」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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