埋め戻し作業が続く博多駅前の陥没現場=福岡市博多区で2016年11月9日午前9時38分、本社ヘリから津村豊和撮影
福岡市のJR博多駅前で起きた大規模な陥没事故は発生から一夜明けた9日、復旧作業が前夜から引き続き進められた。市によると同日夕方までにはたまった水の水面(地表から約3メートル)まで埋め戻す予定。また国土交通省は8日に続いて市交通局に調査に入った。一方、地下鉄七隈線延伸工事の現場一帯の岩盤に、元々亀裂や断層があるとみられていたことが市への取材で分かった。市は陥没に至る詳しい経緯を調べている。
福岡市によると、現場の博多駅周辺の地盤は過去に隆起したり、動いたりして岩盤に亀裂や断層があるとみられ、市もそれを踏まえ工事を進めていた。事故現場の工区は少しずつ掘り進めて、掘削面をコンクリートで固めていく「ナトム工法」で実施し、掘削部分の上部を鋼材で補強したという。だが、トンネル拡幅のため上部を掘削していた際に岩盤がはがれ落ちる「肌落ち」と呼ばれる現象が起き、出水。崩落し陥没した。
現場の地層は地表から約16メートルが地下水を含む砂の層で、工事はその下の岩盤の中を掘削。岩盤の上部約2メートルは粘土が固まって水を通しにくい「不透水層」となっており、そこを掘削しないように作業していたという。だが、市交通局によると、亀裂や断層があると「地下水の水圧で押し出されるようになる可能性がある」といい「劣化していた可能性がある」としている。
地下鉄七隈線建設技術専門委員会の委員を務める安福規之・九州大教授(地盤工学)によると、不透水層の位置が当初の図面からずれていたことが分かり設計が1度変更されていた。しかし「不透水層に弱部があり、そこに刺激を与え地下水が土砂と一緒に流入したと推察される」としている。【林由紀子、合田月美、山下俊輔】