読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

かくいう私も青二才でね

知ってるか?30まで青二才でいると魔法が使えるようになるんだぜ?

映画「SCOOP!」は面白いけど、内容がゲスくて福山じゃないと成立しない…

映画の話

SCOOP!見てきました。

映画『SCOOP!』公式サイト

 

僕はすごく好きな映画だけど…この映画を多くの人に見て欲しいとは思えない。

 

「映画の魔力」が色濃く出ている作品だから、演出や役者を重視して見る人にはオススメできるよ?

でも、ストーリーや世界観は昭和そのものだから、そういうものを見て感動したい・癒やされたいタイプの人…それも年配者が見ると、この映画は相性が悪いだろうね…。

論理的で理にかなった伏線と伏線回収、元ネタがちらつくようなオマージュなど映画のストーリーは緻密で理の通った作り。だからといって、泣ける・楽しくなるかどうかは別問題なのよね…。

あらすじ

福山雅治演じるフリーの中年パパラッチが、写真週刊誌「SCOOP!」に配属された二階堂ふみ演じる新人記者とコンビを組むことに。

f:id:TM2501:20161106212624p:plain
(画像は公式HPより) 

 

パパラッチに借金があることにつけこんで、旧友でSCOOP!の副編集長がゴリ押しして作った急増コンビだったのだが…なんと、大当たり!!

 

取材で成果をあげるごとに雑誌の売上も、本人がやる仕事も大きくなっていく。

 

「危険球」としか言いようのない大暴投の連続!!

正直、昭和臭い映画だよ。
本当にこんな生活してる人がいたり、こんな働き方を押し付けられたら「パワハラ」で「セクハラ」で「ブラック」。

 

ましてや、電通という「日本のトップ企業で若い女性が、過労と上司のパワハラと野蛮な企業文化のせいで、過労死した直後の時期に上映した映画」ではないよ!!

・粗暴でパワハラ・セクハラを言いまくる上司
・終電がすぎても働かせたり、法に触れたり暴力の危険もある仕事
・宴会のシーンになると女の子に半裸の男が迫っていく描写がある

そういう映画がウケないのは必然だ。時期もテーマも悪すぎた。

 

でも、映画のコンセプトそのものが「不謹慎上等」で作られているからこれらの批判は折り込み済だった。

 

例えば、映画の予告にもパパラッチが

じゃあ、文春にでも持ってくかな

と口にするシーンもある。

(詳しくは文春砲ってなに?2016年の文春砲を一覧にまとめてみた を参照。映画を作っているその時期はちょうど週刊文春が強気に出ていた時期)


『SCOOP!』予告

 

 加えて、映画の終盤に至っては、川崎市中学1年生生徒殺害事件をパロディした内容も含まれている。(事件について語ると映画のネタバレになっちゃうから割愛するけど、映画を作ってる時期にちょうど「これ!」という事件が起こっています。)

参照:川崎市中1男子生徒殺害事件 - Wikipedia

 

不愉快な要素でやりたい放題。 

それも、生々しく、下品に、しかも最近の人でも知っている最新のネタをえげつないほど盛り込んでくる。…見る人が見たら、ひどい映画だと思いますよ?

 

みんながプロ野球選手になれるわけじゃないが、イキザマを貫くことはできる

何でもかんでも教育的でコンプライアンスがどうのこうのと言ってるご時世の作品だとは思えない…むしろ、それを破った先に自分と、表現したい自己があるかのように、きっと批判されるであろう所へ踏み込んでいく。

 

そのことに「順調に敵を作っているなぁ〜」と思いながら、同時に思ったんだよ。

「そうそう、なりたい自分・なれる自分と言うのはみんながみんな、一流企業のサラリーマンやプロ野球選手じゃないんだよパパラッチかもしれないし、ブロガーかもしれないし…もっと世間様、親御さんに言えないような仕事でしか自分を表現できない可能性だってある。

おくりびとや、SCOOP!は生々しさを描きたい作品ではなく、【自分として生きられる世界、自己表現の場所がたまたま生々しい世界だった】というだけなんだ!」

 

…というのを、自分がろくでもない仕事や、人から悪く言われるような日陰者なジャンルで頭角を現した人間ならみんな知ってるよ?

 

でも、それを映画にしようとすると、

「何をやってもかっこいい人」

それこそ福山雅治のような人じゃないとダメなんだよ。

 

 

たとえ、ゲスでセクハラな上司でも、それが福山雅治という超絶イケメンが演じれば、その仕事やイキザマ人間がかっこ良く見えてしまう…これが「映画の魔力」だよ! 

f:id:TM2501:20161106204228p:plain
 (画像は公式HPより)

キーワードは「イキザマ」。

これを意識した上で、ラストシーンまで見てほしい。

言ってる意味がキチッと回収される作品になっているし、そこまで含めての「福山雅治」だから。

 

二階堂ふみのウザ演技/リリー・フランキーさんのクズ演技

福山雅治じゃないと演じられない役柄ではあるものの、「福山雅治ありきのアイドル映画」だと思われるのも癪だから福山雅治以外の魅力もいくつか語ってみたい。

 

二階堂ふみの演じる勘違い女は本当にうざくて、すごい!! 

f:id:TM2501:20161106230739j:plain

 FUMI NIKAIDOU Official Web Site - 二階堂ふみ

 

関連画像を二階堂ふみのホームページに探しに行ったらものすごくタイムリーな画像があったから掲載しておこう。(10月8日のプレイボーイでぶち抜き36ページの時の画像だそうです)

 

偶然にも、SCOOP!を見る前に見た「何者」という映画にも二階堂ふみが出てきていた。

 

何者では主演ではなく、むしろ主人公が嫌いな「(意識高い系っぽい)勘違い女」を演じていた。

SCOOP!でも序盤には(きゃりーぱみゅぱみゅ風)勘違い女を、終盤にはまともな役をうまく演じている。

 

僕は長い時間会社にいたことのある人間じゃないからわかんないけど…きっとアラフォー以上のおじさん、おばさんからみた若者ってあのぐらいウザいし、あのぐらい勘違いしているんだろうなぁ…という鬱陶しさをキチッと演じているところがすごかった。

 

邦画ではウザキャラは重要な役。

邦画には、一般論と異なる価値観を説く作品が多く、そういう作品にはウザいほどの一般論をいう人が必ず一人はいる。

一般論役が弱すぎると映画としてゲスくなって、一般論が強すぎると説教臭くなおかつ浅い世界しか描けなくなりがち。

 

二階堂ふみが一般論をいう鬱陶しいキャラクターを演じている時はついつい見入ってしまう良いシーンが何者でもSCOOP!でも多かった。

 

特に、SCOOP!では俗物的に芸能人をキャーキャー言う人や、芸能人に勝手な妄想を押し付けてるファンの代弁者みたいな役割も兼ねて出てくる。

そうした、過剰な押し付けに対して、福山演じるパパラッチが

「同僚と飲みに行って、発散して、仲良くなることもあると思うけどなぁ…」

という旨の発言で、若い(ことそのものがウザい種類の)女の子の夢に土足で踏み入るシーンが僕はすごく好きだった。
今思えば、この台詞からして仕事に貴賎を付けたがる一般論への反論だったのかもねぇ…。

 

リリー・フランキーさんと福山雅治の関係は映画にも投影されてます

f:id:TM2501:20161106224420p:plain
(公式HPより)

 

映画は観るくせに、芸能ニュースも週刊誌も殆ど見ない不勉強な僕は、映画を見終わってから福山雅治リリー・フランキーがプライベートでも仲良しなことを知った。

 

そのことを知った上で映画を見ると、チャラ源はサイドストーリーの主人公というか…仕事の顔とはまた別の方向からパパラッチを映し出そうとしているキャラだともっとわかりやすく理解できるだろう。

 

リリー・フランキーさん演じる情報屋の「チャラ源」はパパラッチ以上のクズ。
記者仲間から「あいつとは縁を切れ」としょっちゅう言われるけど、チャラ源とは仲良くし続ける。

 

パパラッチ本人もパパラッチの仕事を「ドブネズミやゴキブリ以下だ」と言ってるが、それをビジュアルに落とし込んだようなキャラクターとして出てくる。
けっこういいやつでもあるんだけどね…。

 

 ハゲ散らかしていて、小汚くて、オシャレとは無縁の服装…絵に描いたような「女性が生理的に受け付けない(きっと偏見の目で人間としてカウントしないであろう)」キャラ。

 

ただ、この人がいることで…「パパラッチのイキザマ」と「パパラッチという偏った仕事でしか生きられない偏ったヤツの私生活でのイキザマ」も描く事になるんだよ。

 

職業選択もさることながら、自分の友達もまた「まともな人」「キレイな人」「健全な遊び」で満足できるとは限らないんだよね…。
そうじゃないと許されないかのように世の中は変わった人間を排除したり、偏見から来る心ない言葉を浴びせるけどさ…。

 

よく、女性向けのメディアで「彼氏の趣味がこれだったら引く/別れる/やめさせるランキング」みたいなもの があって…僕もオタク趣味だからそういうものを見るたびに嫌な気分になるんだけどさ… それがもっと金のかかる・健康によくない・悪友を引き寄せるような趣味であることだってあるわけだよね。

 

でも、そういう人にもイキザマはあって、クズだと言われ続けても大事にしていることやその人を大事にしてる理由はあるわけです。

 

世の中から肯定される・されないではなく、「自分にはこういう生き方が一番だから」と言って、そう生きるイキザマの話。

公私問わず、そういうものを貫いて生きるパパラッチを、福山雅治が多少なりかっこ良く演じてくれることでどうにか見られる作品。

 

…福山がすごいから成り立つ映画だよ?

でも、福山以外のキャスティングや演技、ただの下ネタや悪趣味な遊びにしか思えぬ台詞が実はキチッと意味を持って回収される奥深さがあるからこの映画は面白いんだよ。

 

 

 

 

・関連記事(最近見た映画) 

【ネタバレあり】映画「何者」なんか、ちっとも闇が深いと思えない!! 

僕と朝井リョウは同い年。

【ネタバレ注意】君の名は。を見てきたから感想書きますヽ(´ー`)ノ

アレはミュージカルです。

シン・ゴジラ見てきたから面白くなさそうに語る

はいはい、庵野庵野