仮設住宅解体現場で給湯器の盗難相次ぐ 銅やアルミ売買か

仮設住宅解体現場で給湯器の盗難相次ぐ 銅やアルミ売買か
東日本大震災の被災地で、役割を終えた仮設住宅の解体作業が進められる中、宮城県内では現場から給湯器が盗まれる被害が相次いでいます。部品に使われている銅やアルミなどが、取り外されて売り買いされていると見られ、解体作業に当たる業者は対策の強化を強いられています。
宮城、岩手、福島の3つの県では、プレハブの仮設住宅から災害公営住宅などへの転居が進められていますが、宮城県内では役割を終えた仮設住宅の解体現場などから、給湯器が盗まれる被害が相次いでいます。

このうち、仙台市宮城野区の仮設住宅では先月16日、屋外に設置してある給湯器1台を盗んだとして、市内の配管工、佐藤昭信被告(55)が警戒中の警察官に逮捕され、今月、窃盗の罪で起訴されました。警察によりますと、ほかにも仮設住宅から給湯器ばかり27台を盗んだことを認めたうえで「生活費が欲しくて業者に売り7万円を得た」と供述しているということです。

メーカーによりますと、給湯器の部品には銅やアルミなどが使用されているということで、部品が取り外されて売り買いされていると警察は見ています。

一方、これまでの調べで、宮城県内の被害は、ことし亘理町と岩沼市で合わせて270台余りに上っていることがわかり、警察はほかにも関わっている人物がいると見て調べています。県などによりますと、盗まれた給湯器はすべてリサイクルするか防災用の備蓄品にする予定だったということで、解体作業に当たる業者は、保管場所の変更や防犯カメラの設置など対策の強化を強いられています。

給湯器の部品の価値は

メーカーによりますと、給湯器には、水に熱を伝える部品などに銅が使われているほか、アルミや真ちゅうなどの金属も使用されているということです。
岩沼市にあるリサイクル業者の工場には、毎日のように廃棄された給湯器が持ち込まれています。業者によりますと、1台当たり1500円から3000円程度で買い取り、金属の部品を取り外して再利用しています。銅は1キロ当たりおよそ100円で、アルミや真ちゅうはおよそ90円で取り引きされるということです。
業者は、給湯器を買い取る際には相手の本人確認だけでなく、出どころについてもチェックしているとして「個人で持ち込む場合は運転免許証の提示を求め、数が多い場合はどこにあったのかも現地を調査して確認している」と話しています。

解体現場では対策を強化

亘理町にある仮設住宅の解体作業の現場では、ことし8月に作業を始めて以降、9月に、2度にわたって合わせて79台の給湯器を盗まれました。
解体作業を請け負う業者は、被害のあと敷地の周りに囲いを設けましたが取り外した給湯器を野積みしていたため、囲いを外され、先月にもさらに9台を盗まれました。このため、野積みするのをやめ、鍵をかけて建物の中に保管するなど対策の強化を強いられているということです。
業者の現場責任者は「防犯カメラを数か所に設置したほか夜間には照明をつけている。二度と被害にあわないよう対策を強化したい」と話していました。

仮設住宅の閉鎖や解体が増える

宮城、岩手、福島の3つの県によりますと、東日本大震災では最大で合わせて5万2879戸のプレハブの仮設住宅が整備されました。今も合わせて4万人以上がプレハブの仮設住宅で暮らしていますが、災害公営住宅などへの転居が進んだことで閉鎖や解体されるところが増えています。

最も多い2万2095戸が整備された宮城県では、ことし9月末時点での入居は7826戸で、入居率は35%となっています。
仙台市では入居している人全員の転居が決まり、今年度中にすべての仮設住宅を撤去する方針です。このうち、宮城野区鶴巻1丁目の仮設住宅では、今月1日、かつて暮らしていた人などおよそ200人が集まってお別れの会が開かれました。
集まった人たちは、仮設住宅への感謝の気持ちを込めて「家族を守ってくれてありがとう」などと書いたメッセージを風船につけて空に飛ばしました。

一方、宮城県以外の入居率は、いずれも9月末時点で最大で1万3984戸が整備された岩手県で43%、同じく1万6800戸が整備された福島県で47%となっています。