井上亮
2016年10月30日20時55分
旅館の再生ビジネスで知られる星野リゾート。一般的なホテルでは、フロント係はフロントのみ、客室清掃は清掃のみという働き方ですが、同社は1人4役をこなす「マルチタスク」が武器です。今夏東京に旅館を開き、視線の先には旅館での海外進出があります。
10月中旬、正午過ぎ。長野県松本市の旅館の一部屋が「戦場」に変わった。
部屋の窓を開け、空気を入れかえる。敷布団や掛け布団、まくらのシーツやカバーを次々とはぎ、新しいものをかぶせる。それらを押し入れにしまい、掃除機をくまなくかける。無表情で無言。一度も止まることなく、23分で作業を終えた。
この旅館「界 松本」を運営する星野リゾートの4年目の社員、磯辺あやかさん(25)は「1部屋30分以内が目安。無心で動いています」。この日は満室。同僚と分担し、チェックインが始まる午後3時までに全26室を清掃した。
夕方、動きやすい黒のシャツとズボン姿から接客用の制服に着替え、夕食の配膳サービスについた。忙しく動いていた昼間と違い、「ゆっくり動き、話すことを意識しています」と笑った。翌朝はフロントにいた。チェックアウトした客の荷物を車まで運び、車が見えなくなるまで手を振り続けた。
フロント係はフロントだけ、清掃係は清掃だけ。そんな旅館やホテルの一般的な働き方とは違い、星野リゾートでは大半の社員が、フロント業務、客室清掃、朝夕食の調理、配膳サービスの4種目をこなす。社内で「マルチタスク」と呼ばれる取り組みだ。
かつては分業制だった。忙しい…
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