1. 豊洲市場は、本当に安全なのか?
盛土問題に揺れる築地市場の豊洲移転。地下水から汚染物質が検出されるなどの問題だけではなく、「建物の構造は安全なのか」という不安まで、広がっている。
2. そんなさなかの10月25日、豊洲市場の安全性などを検証するために小池百合子知事が設置した「市場問題プロジェクトチーム」の第2回会合が開かれた。
チームの委員は大学教授や一級建築士らの有識者6人。座長は弁護士の小島敏郎・青山学院大教授だ。
この日は、豊洲市場の設計を担った日建設計の社員らが、建物の構造の安全性について説明した。
3. これまで、重機や水の重さに床が耐えられないのではないか、本来なかったはずの地下空間があるために耐震性が下がっているのではないか、などの指摘が報道されてきた。
日建設計は、守秘義務を理由に、報道や懸念の声に反論してこなかった。今回、小島座長によって冒頭で「守秘義務の解除」が宣言され、設計した当事者の証言が公になった。
5. 会合で日建設計は、3つの疑問点に関して、安全性をこのように説明した。
(1)図面上の床の厚さが耐震性を判断するための「構造計算書」よりも分厚くなっているが、本当に大丈夫なのか
→記載ミスでした、ご心配おかけし申し訳ありません。しかし、構造体は図面の厚さを見込んで設計しています。耐震強度は東京都が求める法定1.25倍より余裕がある1.34倍なので、地震の時でも安全です。
(2)水産仲卸市場の床の積載荷重は、市場が使われ始めたときに耐えられるのか
→実際の使い方で想定される荷重に対してゆとりがあります。ターレ(運搬車)や魚や氷など、築地市場の実際の使われ方を確認し、想定しています。
(3)地下ピットがあるが、5階建と計算するべきだったんじゃないか。杭は耐えられるのか
→基礎ピットは十分頑丈に設計しているため、5階建とみなす必要はありません。地震で安全性が低減するということもありません。
6. その後の議論では、委員から「地盤が軟弱で液状化の危険があるのでは」「荷重の想定はどうやってしたのか」などの質問が出た。
日建設計側からは、液状化や軟弱な地盤を想定した十分な対策をしていることや、都と打ち合わせを重ねたこと、業者からヒアリングをしたことなどが明かされた。
構造の安全性に疑問を投げかけ、報道番組でもコメントをしていた一級建築士の高野一樹氏も会合に同席。「地下空間が耐震性を下げる」などと指摘したが、日建設計はその可能性を否定した。
また、日建設計の計算方法では、正しい耐震性が算定されないとの批判も出された。この点に関しては議論が収まらなかったが、日建設計の担当者は、「法に則っていることだけは確認をしてもらいたい」と踏み込んだ。
7. 建築構造の専門家である委員は、日建設計の主張に対し、「設計の責任を負うという立場で安全性を宣言されている。私も同意します」と語り、ほかの委員からも異論は出ず、プロジェクトチーム内での総意が確認された。
小島座長は会合後、取材陣にこう語った。
「どの計算方法をするかによって大きく結果が変わってきて、建物の安全性に影響があることになるのなら、考え直さないといけない。まずは専門家のなかでその点を議論をし、報告していただきたい」
この点の結論は、次回以降に持ち越すという。ただ、BuzzFeed Newsの質問に対し、このような認識も示した。
「法令に則った安全性が確保されている点に関しては、コンセンサスが取れている」
報道で懸念されてきた建物自体について、プロジェクトチームがまず出した結論は「法的には安全」だった。建築が危険だと指摘を繰り返していたメディアや識者は、この結果にどう反応するのだろう。
地下水の汚染物質の問題など、議論はこれからも続く。