暴言と麻薬犯罪の容赦ない掃討ぶりで、日本でも注目されているフィリピンのドゥテルテ大統領は25日から日本を訪問。この訪日による日本とフィリピンの外交成果については、この原稿を書いている時点ではわからないのだが、その前に行われたドゥテルテの訪中については、すこし整理してまとめておく必要があるだろう。ドゥテルテ訪中によって、南シナ海情勢は何か変わるのか変わらないのか。
「日本より先に」「六中全会前に」
ドゥテルテは10月18日から4日の日程で北京を訪問、国家主席の習近平はじめ、李克強(首相)、張徳江(全人代常務委員=国会議長に相当)、張高麗(国家副首相)らと会談。CCTVの単独インタビューを受けて、南シナ海の共同開発に意欲的な姿勢を見せたうえに、中国フィリピン経済貿易フォーラムで講演し、演説の最後に「我々は軍事、経済上を含めて米国との関係から離脱すると謹んで宣言する」などとのたまわったものだから、米国国務省が慌てて、真意を説明せよと要請する事態も起きた。フィリピン側は「米国依存から離脱するという意味で、関係を断絶するということではない」と弁解するも、フィリピン金融市場ではペソや株価が一気に下落し、国際社会も動揺している。
このドゥテルテ訪中が決定したのは、日本訪問の日取りが25日に決まって以降。これは中国が執拗に、日本よりも先に訪中をしてほしいと促した結果である。中国としては日本に訪問して鼻薬をかがされる前に、チャイナマネーでフィリピンをからめとりたいという意向もあるが、それ以上に、六中全会前に、フィリピン外交および南シナ海問題で、政敵に見える形の勝ち星を挙げたい、という意図が見えた。
24日から始まる六中全会とは党中央委員会第六回全体会議、すなわち共産党にとって年に一度の最重要政治会議であり、ここで来年の党大会に向けた人事その他の布石が行われる。習近平としては、ここで68歳の定年制の枠を外すなど、長期独裁体制への方向性を打ち出したいところなのだろうが、党内のアンチ習近平勢力は意外に根強く、中国に圧倒的不利なハーグ裁定を許した習近平外交の脇の甘さなどを攻撃している。