イラク軍が進攻して村に入ってきたとき、アスマという女性は家族と一緒に兵士らを出迎え、過激派組織「イスラム国」(IS)の支配から解放されたことを喜んだ。だが、モスルへ向かうイラク軍が村を出て行くと、再びISの戦闘員が現れて村人らに発砲し、アスマはイラク北部のクルド人自治区に逃げなければならなかった。
避難民であふれかえるデバガのキャンプにたどり着くと、イラク政府のモスル奪還作戦の戦闘を逃れてきた数百人とともに学校に詰め込まれた。モスルはISがイラク領内で支配する最後の主要都市だ。
教室に入りきれない避難民の家族らは校庭のマットレスの上で生活し、女性たちがトイレの水道で洗濯をしようと列をなす。アスマがここにたどり着いたのは、モスル奪還作戦開始の翌18日。まったくの混乱状態で、最初の夜は10歳の息子と校舎の外のコンクリートの上で寝た。
「私たちはただ逃げてきただけではなく、屈辱的な思いをさせられた」と、アスマはフルネームを明かさずに話した。「軍から家にとどまるようにと言われ、そのとおりにしていた。軍が村を出て行くと、ISの戦闘員たちが地下トンネルから出て、おまえらは裏切り者だと言って攻撃してきた。命懸けで逃げなければならなかった」
イラクのアバディ首相は20日、モスル奪還作戦は順調に進んでいると述べた。イラク軍やクルド自治政府の治安部隊ペシュメルガなどが参加し、2年前からのIS掃討戦で最大かつ最も複雑な戦いになるとみられる。
「モスルへの進攻は考えていたよりも速く、作戦計画より先に進んでいる」と、アバディ氏は述べた。
だが、モスルまではまだ距離がある。国際支援機関は、作戦開始後1週間で避難民は約20万人に達しうるとみており、人道危機につながる恐れがあると警告するとともにイラク軍に民間人の避難路を確保するよう求めている。イラク政府は避難民への対応が最大の試練の一つとなるだろう。
ISは最盛期の2014年、イラク第2の都市モスルを越えて勢力を伸ばし、イラクのほぼ3分の1を掌握していた。
今のところ、支援機関の人員はモスル周辺の村々と東側の都市ハウィジャで待機しているだけだ。17日以降の戦闘で5500人以上の避難民が出ている。推定150万人の住民が閉じ込められているモスルにイラク軍が到達した時点で何が起こるのか、先行きは見通せないままだ。