川上さん(左)と小峰店長。2人が持ち上げている黒い布を、川上さんが手にしているハサミで裁断し、パットさんに渡したという=千葉県成田市の「パンドラハウス」で2016年10月18日、近藤浩之撮影
フェイスブックでタイから「いいね!」3万件
13日にタイのプミポン国王が死去した際、千葉県成田市内で喪章を探していたタイ人の男性パイロットを接客した手芸用品店の温かい応対が、このパイロットのフェイスブック(FB)を通じて国境を越え、タイ国内で反響を呼んでいる。
パイロットはタイ・エアアジアXのパット・パナチェットさん。パットさんのFBなどによると、13日夜、バンコクから成田に着いた際、国王の逝去を知った。会社から復路では喪章を巻くよう指示があり、14日午前、ショッピングモールで探したが見つからず、黒い布を買って喪章を自作しようと考えついた。訪れたのが、イオン成田店(同市ウイング土屋)内にある「パンドラハウス」だった。
応対した同店スタッフの川上光子さん(60)は「彼はスマートフォンに写っていた、喪章を巻いたクルーの写真を見せ『これを作りたい』と英語で言いました。何があったのかと思ったら『私はタイ人です。ニュースを見ましたか』と尋ねるので、国王のことだと分かりました」と振り返る。3人分の喪章が必要とわかり、店長の小峰茜さん(26)らと黒い布を裁断するなどした。
パットさんはその後、自身のFBでこの出来事を報告し、川上さんらへの感謝の気持ちを記した。すると3万件近くもの「いいね!」や「感動した」といった称賛のコメントなどが寄せられた。小峰さんによると、16日にはFBを見たというタイ人男性が店に訪れ、流ちょうな日本語で「店員にお礼を言いたい」。同日夜には国王のペンダントを胸に着けた年配の女性が「8人分の喪章を作りたい」と来店したという。
川上さんは「普通の接客だったのに彼は何度も『サンキュー』と言い、丁寧に頭を下げてくれた。逆に申し訳ないぐらいでした。お役に立てて良かった」と笑顔で話した。【近藤浩之】