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フィーライン・アイズ

「好きなものは好き」と主張するハイパーな雑記ブログ

偶然手にした「百億の昼と千億の夜」がSFの名作だった件

妙香のひとりごと

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たまたま書店でみつけた作品

 

それはいまから12年ほど前のことです。

 

製造派遣の仕事で働いていた私は、ストレス解消に書店に寄るのが趣味でした。

本だけじゃなく、CDや雑貨、ゲーム機も扱っていた賑やかなお店です。

 

家の経済状況は最悪でした。

 

でも、だからこそ何かしらの楽しみがないと、

本当に人生が詰んでしまいますよね。

 

そこでコーエーの歴史ゲーム(三国志10)をするために、

PS2を買おうと思いました。

 

派遣会社からの入社祝い金で3万円を持っていたんです。

 

意気揚々と書店に駆け込んだ私は、

入り口のコミックコーナーにある一冊の本に目が止まりました。

 

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

 

 

タイトルに惹かれて、何の先入観もなく手に取ったんですが、

実はこれ、ものすごい名作だったんですよ。

 

あらすじ(導入部)

 

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ギリシャアテナイに住む哲学者のプラトンは、

はるか古代に謎の滅亡を遂げたアトランティスに興味を持っていた。

 

彼はその手がかりとなる古文書を求めて旅に出る。

 

やがてエルカシアという町に到着するのだが、

そこは摩訶不思議なところだった。

 

ユメと名乗る少女に案内された部屋に入ると、

タウブという太陽のような灯りが輝き、

窓には透明な板のグラウスがはめこまれていた。

 

また出された食事は、高度な調味料や油を使っているのだった。

 

プラトンが驚いていると、ユメが「宗主」のもとに来てくれという。

アトランティスを知るためには必要なことだというのだ。

 

「宗主」がいる部屋は伝説の金属オリハルコンでできており、

アトランティスの遺産であるとユメは言った。

 

だが「宗主」らしき人間はいっこうに出てこなかった。

 

するとユメに姿の見えない「宗主」が乗り移り、

プラトンが過去と未来へ長い旅をすることを告げる。

 

プラトンは「宗主」にアトランティスが滅亡した理由を尋ねるが、

彼は「その問いはあなた自身で見つけることになる」と答えた。

 

気を失って目覚めたプラトンは、

自分自身がアトランティスの司政官のオリオナエだと気づく。

 

アトランティスは繁栄の頂点にあった。

 

ところが王であるポセイドンは、

神の地である「アトランタ」に都市をまるごと移動させようとしていた。

 

それは『惑星開発委員会』の計画に基づくものだという。

 

オリオナエらは市民の意を受けてそれに反対するのだが、

ポセイドンが強制的に移動しようとしたため、

激怒した市民が暴動を起こし、最悪の事態となった。

 

こうしてアトランティスは滅亡し、

オリオナエのプラトンはエルカシアで目を覚ました。

 

彼はある人物を探すため西北の地に向かう。

これが時空を超えたはるかな旅のはじまりとなった。


同じ頃、シッタータは釈迦国の太子であったが、

世の無常を感じて出家し、トバツ市にて梵天王から宇宙の破滅について聞く。

 

その話に疑問を抱いた彼は、

梵天王が敵だと言っていた阿修羅王に会うことを決意した。


一方、ナザレのイエスはゴルゴダの奇蹟のあと、

大天使ミカエルにより、地球の惑星管理員に任命されるのだった-。

 

宇宙をめぐる神々の戦いがすごい

 

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百億の昼と千億の夜」で、

とにかく衝撃的だったのは登場人物の面々です。

 

阿修羅王(主人公・仏教の神)

シッタータ(主人公の仲間・釈迦)

プラトン(主人公の仲間・ギリシャの哲学者)

 

梵天王(トバツ市の支配者・仏教の神)

帝釈天(主人公のライバル・仏教の神)

 

ナザレのイエス惑星開発委員会の職員・キリスト)

イスカリオテのユダ(ゼンゼンシティの首相・キリストの弟子)

 

弥勒(救世主と言われる・仏教の菩薩)

 

歴史上の人物を飛び越して、神とか仏なんですよ。

だから最初に読んだ時は、宗教界から反発を受けなかったのかなと思いました。

 

とくにキリストは主人公の敵として描かれてますからね。

 

でも、ストーリーは割とわかりやすくて、

世界を破滅させようとする【シ(=死)】や、

彼(?)が支配する『惑星開発委員会』と戦う物語なんですよ。

 

地球ができた経緯というのも面白かったです。

 

『新星雲紀双太陽 青93より黄17の夏

アスタータにおける惑星開発委員会は「シ」の命を受け、

アイ星域第三惑星にヘリオ・セス・ベータ型の開発を試みることになった』

 

このヘリオ・セス・ベータ型の開発というのは、

小さな目に見えない粒子から生命体を進化させるというもので、

惑星開発委員会』はそういった様々な実験を宇宙の各地で行っていたんです。

 

でも、それが上手く行かないと、

生命が存在しているにも関わらず、宇宙や惑星を滅ぼしてしまうんですよね。

 

なんという身勝手で非情な仕打ちなんでしょうか。

 

しかし、スケールがたいへん大きいため、ただの勧善懲悪モノに留まらず、

「生命とは何か」というテーマについて考えることができる作品です。

 

主人公の阿修羅王は戦いの神ですが、

中性的な少女として描かれているのもいいですね。

 

彼女の仲間のシッタータはなんとお釈迦様で、

この作品一のイケメンになっています。

 

銀河英雄伝説キルヒアイスに似ていると思うのは、私だけでしょうか?

 

彼らは惑星開発委員会に属するイエスらと戦いますが、

その随所にSF用語が出てきて興味深いです。

 

テーマと登場人物が重厚なため、

大団円となるハッピーエンドにはならないんですが、

誰も予想できない意外な結末に驚きますよ。

 

妙香のまとめ

 

シッタータ「神と戦うのか?」

 

阿修羅王「おお、そうとも。わたしは相手がなに者であろうと戦ってやる。

このわたしの住む世界を滅ぼそうとする者があるのなら、

それが神であろうと戦ってやる」

 

いまですら破滅は進んでいる

末世へと限りない週末へと

いまわれわれは目覚めた

間に合うか!?

 

自分の住む世界を理不尽な理由で滅ぼされるとしたら、

誰もがそれを守るために戦うんじゃないでしょうか。

 

これは「神」に限らず、

日常の些細なことや世界情勢でも同じことが言えるでしょう。

 

和解や共存というのはなかなか難しいことではありますが、

それができる世界が安穏で理想なんじゃないかと思いますね。

 

少し難しい内容のコミックですが、ぜひ一読することをおすすめします。

小説版の原作は光瀬龍先生です。

 

12年前から私の大事なバイブルになっています。

 

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

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